西日本のお好み焼きに対して、東日本を代表する粉ものといえば「もんじゃ焼き」だろう。東京・月島が本場といわれ、群馬や埼玉など関東を中心に愛される下町の味だ。

そんなもんじゃの焼き方には、大人でも首をかしげる1つの「謎」がある。それは、鉄板の上でキャベツや豚肉などの具材を炒めた後、ドーナツ状の「土手」を作る部分だ。

もんじゃ焼きで土手を作る理由を調査。画像はイメージです(t-mizoさん撮影、flickrより)

水気の多い生地を流し込むためのスペースだというのは理解できる。しかし、結局のところすぐに土手を崩し、具材と生地を混ぜ合わせてしまうではないか。

そうなると、「どうせすぐ崩すのなら、土手を作る必要なんてないのでは?」という疑問が出てくるのも、ある意味で当然のことだろう。そんな素朴な疑問を明らかにするため、今回のJタウンネットが「もんじゃの土手」問題を調査した。

土手のルーツは、鉄板の××にあった?

オタフクソースやブルドッグソースなど、「もんじゃ焼きの素」を販売しているメーカーの公式サイトにも、しっかりと「土手作るべし」の旨が記載されている。美味しいもんじゃ焼きを作るためには、やっぱり土手が欠かせないのだろうか。

だが、生地を入れた途端に土手が崩壊してしまうこともままあるケース。そういった場合でも、別にいつも通りの味に仕上がるような気がするのは――、筆者だけだろうか。

実際のところ、荒川区や足立区などでは土手を作らない焼き方が一般的なのだという。

これもよくあるケース。画像はイメージです(Tatsuhiko Miyagawaさん撮影、flickrより)

もちろん、土手を作らなければ、水気の多い生地が鉄板全体に広がってしまうことは分かる。だが、別に生地が広がってもさほど問題がないケースであっても、土手を作るのが「ルール」となっている気がする。

月島の職人に聞いてみた

詳しい事情を、本場・月島のもんじゃ焼き店主らが設立した「月島もんじゃ振興会協同組合」に聞いてみた。同組合で広報を担当している「海鮮もんじゃ けい」の店主に「土手を作る理由」を尋ねてみると――、思わぬ答えが帰ってきた。

「もんじゃの土手を作るのに、とくに意味はないんですよ」

な、なるほど。しかし、「意味がない」とは一体どういうことなのか。その理由を聞いてみると、

「土手を作るのは、昔の名残ですから。かつては鉄板にフチがなく、テーブルとの間にスキマがあったんですよ。だから、土手を作らないと大変なことになったんですよ。だから、フチのある今の鉄板でしたら、べつに土手を作る必要はありません」

という。

そもそも、生地が床にこぼれないための「工夫」として生まれたのが、ドーナツ状の土手だという。そのため、土手の有無で「味」が変わることはほとんどないそうだ。

しかし、作る意味がないからといって、簡単に無くしてしまえばいいものではない。長年月島でもんじゃを作り続けているという店主は、以下のように言い添えた。

「生地が土手からこぼれてしまい大騒ぎしているお客さんの声を聞いていると、こちらとしても楽しい気持ちになります。そういう下町ならではの『遊び心』として、やっぱり土手は欠かせないものだと感じますよ」

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