水木しげる先生の亡くなった2015年11月30日の天神通り。編集部撮影(以下同じ)

水木しげる先生が貸本作家時代の1959年から、93歳でこの世を去るまで過ごした町が、東京の郊外にある町・調布市だ。

水木ファンの聖地としては、故郷である鳥取県境港市が有名だが、いわば第二の故郷というべきこの調布にも、先生ゆかりのスポットがいくつもある。

2015年11月30日、訃報を知った編集部は、すぐに現地へ向かった。

鬼太郎キャラと会える商店街

新宿から京王線に揺られること、30分あまり。

調布駅を降りてすぐのところにあるのが、鬼太郎キャラたちと会える商店街・天神通りだ。



看板の上にいる鬼太郎

神社への参道でもある、ほとんど路地のようなこの小さな商店街には、鬼太郎やねずみ男たちのマスコットが、いたるところにちょこんと鎮座している。


水木作品の「顔」、ねずみ男
いかにも顔立ちが小ずるそう
猫娘と一反木綿
なんだかかわいらしいぬりかべ

お店の中には、鬼太郎まんじゅうなどのグッズを売っているところも。


一つ買いたかったが、ちょうどテレビの取材が入っていたので遠慮した。残念無念

死去当日とあって、小さな商店街とその周辺には、テレビクルーの一団がうようよ。近所の住民を捕まえては、訃報への感想を聞いて回っている。まあ、写真を撮って回る編集部も同じ穴の狢なのだけど......。

通りすがる人も、「なかなかない光景よねえ」「インタビューされた?」などと、急に湧き出た取材陣をネタにあれこれ噂の真っ最中だ。


商店街入り口で、鬼太郎のモニュメントにカメラを向ける取材陣

商店街の出入り口では、そんな人間たちをポールの上に座る鬼太郎が見下ろしている。


通りの神社側にも鬼太郎

通りを抜けた先にある布多(ふだ)天神社は、古くからこの地に祀られてきた由緒あるお社だ。ここまではさすがにテレビも興味がないのか、取材陣の姿はすっかり消えているが、初期作品での鬼太郎は、この神社の裏に暮らしていたこともある。立派なゆかりの地だ。ちなみに、お隣は墓地。ここも「運動会」の会場だったのかも。


境内は撮影NGだったので、外から。雰囲気のいい神社だ

妖怪ポストに鬼太郎バスも

天神通りからは少しはずれるが、駅前に最近できたのが、駐輪場前に設置された「妖怪ポスト」だ。


色遣いがそれっぽい「妖怪ポスト」
駐輪場にも鬼太郎のイラストが

残念ながら、ここに投函したからといって鬼太郎のところに手紙が届く訳ではない。

駅前を歩いていると、「鬼太郎バス」が向こうからやってきた。


イラストにもいくつか種類が

地元の足として使われているコミュニティバスで、車体には鬼太郎たちのイラストが描かれている。


こちらはピンク色

せっかくなので乗り込んでみると、乗客の多くは近所に住んでいるらしいおじいちゃん、おばあちゃんたちだ。のどかな街並みを、ぐるぐるとバスは走る。特に水木さんの死が話題になっている様子もなく、鬼太郎がすっかり町に馴染みきった様子がかえって伝わってくる。

鬼太郎茶屋、そして「ゲゲゲの女房」ロケ地のお寺へ

さて、鬼太郎バスを適当なところで降りて、別のバスに乗り込み、もう1カ所の目的地である「深大寺」を目指す。


深大寺境内。実際にこの場所で「ゲゲゲの女房」のロケも行われた
風情ある門前通り

東京屈指の古刹であるこの深大寺は、水木夫妻が結婚後、初めての「デート」に出かけた場所として、朝ドラ「ゲゲゲの女房」に登場する場所だ。辺りには落ち着いた雰囲気の蕎麦屋や茶店などが立ち並び、縁台で観光客が一息つくなど、紅葉に彩られて華やかに秋の風情を漂わせている。


こちらが鬼太郎茶屋

すぐそばに、先生ゆかりのお店「鬼太郎茶屋」がある。2003年、鬼太郎の世界観をモチーフにオープンしたお店で、各種の妖怪グッズを買える売店や、「一反もめんの茶屋サンデー」「目玉おやじの栗ぜんざい」など鬼太郎のキャラをイメージしたメニューが出るカフェなどが入っている。9月には、水木先生も夫婦そろって訪れ、新メニューに舌鼓を打った。

もっとも、こちらの鬼太郎茶屋にもマスコミが殺到していて、残念ながらカフェに入れる状態ではなかった。名物の「目玉のおやじ」スイーツを楽しみにしていたのだが......。


関係者に集まる取材陣

こんな商品が普段は売っている(楊阿翰さん撮影、Flickrより)


こちらでも、樹上の家から鬼太郎が悠々と私たちを見下ろしている。取材だ、撮影だ、と大騒ぎする私たちをなんとなく見透かされているようで――帰り道を急いだ。


また、騒ぎが落ち着いたころに遊びに行きたい