どんな値がつくのか、注目が集まる

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「gumiショック」が収まらない。

 昨年12月、東証一部にいきなり上場したスマホゲームの雄「gumi」が、上場からわずか80日足らずで決算見通しを下方修正、営業収益が13億2900万円の黒字から、4億円の赤字と発表。続いて韓国子会社での横領発覚、希望退職者の募集など、株価を下げる要因ばかりが続き、「gumi(グミ)ではなくゴミだ」といった悪評が聞こえる。

 それまで、ネットベンチャー系への投資は明らかなバブル。アイデア一発勝負のゲームソフトの会社にも資金が流れ込んでいたが、「gumiショック」でベンチャーキャピタルも目が覚めたのか、投資を手控え、企業評価をシビアにするところが増えたという。

運命の株式公開は4月28日

 gumiは、「ディズニーを超える世界一のエンタメ企業になりたい」と、公言する國光宏尚社長の強気の人柄もあって注目を集めただけに、証券市場だけでなく、一般にもスマホアプリ業界に懐疑の目を向けさせる契機となり、写真週刊誌『FRIDAY』(5月1日号)が、「疑惑有り」と報じた。

 その「gumiショック」を、さらに倍化させるのか、それとも鎮めるのか、と注目されているのが、4月28日、東証マザーズに上場するグノシーである。

「下手をするとgumiの二の舞いになりかねない」と、市場関係者が心配するのは、いくつかの類似性のゆえだ。同じアプリ運営会社で幹事が同じ野村證券。4月17日に決定した発行価格が1520円で、売上高約30億円、経常利益500万円の会社なので、予想PERは5241倍と異次元の高評価。このあたりも期待の高かったgumiと同じだ。

「堅実性は全然違う」との評価も

 ただ、証券アナリストは、gumiがゲームアプリであるのに対しグノシーはニュースアプリ。「堅実性が全然、違います」と、次のように説明する。

「ゲームアプリ事業は、映画のようなもので当たると化けます。SNSのミクシィを救ったのはモンスターストライクというひとつのゲームでガンホー(オンラインエンターテインメント)を時価総額1兆円にしたのもパズドラという単一のアプリでした。

 それに対してグノシーの提供するのは、ニュースアプリでゲームのように一過性ではなく、歯磨きのように習慣化します。ユーザーがしだいに積み重なっていくわけで、今月、獲得したユーザーが、半年後、1年後にどれだけの収益をもたらすか計算しやすい。予見能力の高い事業モデルなんです」

 gumiショックで、ベンチャー業界が引き締まり、投資家の目が厳しくなったのは、証券市場にとってむしろ好材料。その監視のなかで上場するグノシーには、gumiにあった「上場ゴール」のような甘さを排除した経営を期待したい。

伊藤博敏ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。近著に『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』(小学館)がある