東村山市本町地区のプロジェクト現場(11月24日撮影)。(写真提供:東京都)

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広くて良質な家を低価格で提供できるはず──。こんな石原慎太郎都知事の声を受けて04年3月にスタートを切った東京都の戸建て住宅供給の実証実験「東村山市本町地区プロジェクト」が順調に進展している。「むさしのi(アイ)タウン・四季の街」と名づけられた同プロジェクトは、9日に第1期販売概要の説明会を終え、07年2月中旬には同期の申し込み受け付けが始まる。今回同実験で採用された住宅工法は来年度に公表され、良質で低価格の戸建て住宅の販売のキッカケにしたいと期待する。

 都の北西部、荒川から多摩川に広がる武蔵野台地のほぼ中央に位置する東村山市は、新宿まで電車で約30分というアクセスの良さから、都心通勤者のベッドタウンとして発展。同市の本町地区にある都営住宅の跡地、10ヘクタールの一部を有効活用して都が取り組むこのプロジェクトは、280戸のうち100戸を実証実験住宅とし、そのうち15戸が第1期販売分の予定だ。標準として敷地面積約50坪のうち住宅の延べ面積が約40坪で、建物本体売価格は2000万円前後。分譲価格は造成費を含む権利金などが加わる。

 このプロジェクトでは、都市住宅・市街地開発のノウハウを有する民間グループから住宅建築や街づくりを公募し、選ばれた5つの企業グループが共同して特別目的会社・東京工務店(東京都千代田区、作間秀樹社長)を設立した。同社が都から70年間の定期借地権を得て事業用地全体を借り受け、宅地造成後、転借地権付きの戸建て住宅を分譲する。この長期の定期借地権が、一般の所有権付き分譲住宅に比べ、はるかに安い価格を実現させたという。

 この実証実験における住宅のタイプは4つ。「木の香る家」は伝統的な仕口・継手による木組みの工法で、無垢(むく)の木材を多く利用するが、製材加工所との連携によって低コストを実現した。「木造ドミノ」は、太陽エネルギーのソーラーシステムで冷暖房を賄う省エネ性能の高い住宅で、内部仕切りの移動が可能。「100年健康住宅」は、廃棄の容易な高気密・高断熱の建材の利用とオール電化システムを導入。さらに、「新世代住宅」は、上記三つの型と比べて最も低価格でありながらも、耐震性など基本性能を高く維持しながら、バランスよくまとめ上げているという。

 「まちづくり」の面では、片側の隣家の外壁の手前まで庭として利用できる「ゼロロットライン」、電柱・電線の地中化、地域と各戸の防犯システムの完備、1日約4800人分の飲料水が生成できる非常用飲料水生成システムの設置などがされている。ケヤキやカエデ、桜などの街路樹を植え、公園のような広い緑地を配備するなど、うるおいあふれる四季折々の街の中で、長く安心して暮らせる街をイメージした。【了】