22日、都内で会見を行う清水・LDFH社長(左)とフォルソム・AP共同代表(撮影:吉川忠行)

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「ライブドア(LD)の持っていた良さを忘れずに、独立した金融機関として立派なものにしていきたい」――。80席のうち半分も埋まらない記者席を前に、ライブドアフィナンシャルホールディングス(LDFH)の清水幸裕社長は、読み上げるように同社の将来像をこう語った。LDは22日、LDFHの全株式を独立系投資会社アドバンテッジパートナーズ(AP)(東京都千代田区)に譲渡すると正式に発表した。同日、東京都目黒区のウェスティン東京で開かれた記者会見での、清水・LDFH社長とリチャード・フォルソム・AP共同代表の一問一答は以下の通り。

―― 買収先をAPに決めた理由は。

清水 LDFHは売られる立場なので、買収のプロセスについては詳細は把握していない。ただ、LDの方で企業群をバラバラに売ることや、一括して売ることなど相当な数の会社と話して総合的に判断し、最も評価の高いところがAPだったと聞いている。

―― 買収によってLDに現金が入ってくるが、どのように扱うか。

清水 現状では、信託などに一部入れることを考えている。損害賠償請求がどうなるかは裁判の行方を見ないと分からないが、IR(投資家向け広報)としての信頼を取り戻すためには、ある程度のお金をそういうふうにプールしていくべきではないかと思っているので、検討している。

―― APは今後はどういう形で事業を進めていくか。

フォルソム LDFHは一連の事件の影響で厳しい状況にあるが、LDから離れればより一層の事業の拡大が見込めると判断しており、成長性を感じている。事業展開を通して総合的に企業価値を高めていくつもりだ。最終的に独立した金融グループとして株式上場を目指す。

―― 今後、事業・業務面でのLDとの関係は。

清水 LD傘下では、外の会社と何かをすることが少なかった。私の考えでは、ここから外に出る限りは、ヤフーでもドコモでもシナジーがあるところであれば提携を考えていく。その中のひとつとしてLDがある。

―― 会見になぜLDの出席者がいないのか。

清水 今回の記者会見の趣旨は、投資家であるAPと売却されたLDFHとの共同記者会見であってLDの記者会見ではない。

―― LDの大半の収益を占めている金融部門が独立することに対して、株主への責任はどう考えているか。

清水 事件前の決算ではそういう状況が顕著だったが、現状は、収益構造が変わってきており、利益ベースではそこまで貢献できていない。

―― 清水社長はLDFH社長として留任するのか。LD本体の副社長だが、その職はどうするのか。

清水 引き続きLDFHの社長としてやっていきたい。LD副社長は、しかるべき時期に辞任したいと思っている。

―― LDFH従業員の雇用や社名はどうするのか。

清水 約400名の雇用は維持するし、社名は変えようと思っている。可能な限り早い時期に変えて、新しい会社ということを知らせていきたい。

―― 事件発覚後、LDFHは収益が上がらない状況だったが、買収金額の根拠は。

フォルソム 分析していく中で、4月以降は顧客は拡大しており市場におけるシェアは維持できている。LDから離れることで、ある程度信用を回復し、成長の可能性が見えてくると思う。今後の成長の可能性を見た上で提案した。

―― 今後LDはポータルサイトを中心にやっていくことになるが、LD副社長としての見通しは。また、USENとの提携については。

清水 順調に回復していると思っている。6月以降新しい体制になって、広告では一流企業のクライアントも増えている。現状、単月では赤字だが、来年の第4四半期には単月黒字を実現できると思っている。USENとは今も業務提携は進んでいる。これからも相談しながらやっていきたい。

―― 投資期間、回収のめどについて。

フォルソム ファンドとしての保有期間は原則として3〜5年になると思う。独立した金融事業としての上場を目指せると思う。株式公開なのか提携なのかは両方にらみながらやっていきたい。

―― LDにLDFH株を一部残す選択肢があったはずだが。

清水 売却の課程で「全額」という方もいたと思うし、いろいろあったが、それぞれの状態を判断して決めた。【了】

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