1人乗り電気自動車「i-swing」を自ら“着て”紹介するトヨタの渡辺捷昭社長=19日、千葉市の幕張メッセで開かれた「第39回東京モーターショー」プレスデーで(撮影:吉川忠行)

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「まだ花が開いたとまではいかないが、そのつぼみのいくつかを紹介する」─。19日の記者発表会で、白を基調としたトヨタ自動車のステージの周りには、最大規模の展示ブースからあふれるほどのメディア関係者の“人垣”ができ、会場の注目を独り占め。渡辺捷昭社長が、ロボットを“装着”したような最新鋭の1人乗り電気自動車「i-swing(アイ・スイング)」に乗って登場すると、場内の熱気は最高潮に達した。

 「i-swing」(全長0.985‐1.25メートル、全幅0.8メートル、全高1.71-1.8メートル、定員1人)は、同社のロボット開発の技術を応用して、「移動手段としての車」という概念を超えた「着る車」を提案したもので、愛・地球博(愛知万博)で人気を集めた「i-unit(アイ・ユニット)」をさらに人間に近いコンパクトさを追及した進化系。車体は、衝撃を吸収する柔らかい素材の低反発ウレタンを採用、外表面には個性的なデザインの布素材を好みに応じて脱着・交換ができ、時と場合に合わせて“着こなし”ができる。

 操作は、手元のスティックを使って、動きたい方向に倒すだけで舵取りができる方法と、歩くときのように体の重心をペダル上で進行方向に傾ける方法があり、人工知能機能で「乗れば乗るほど人の意思を学習して、思うがままに走れるようになる」(渡辺社長)。車輪はモーターで駆動、人の目線の高さで会話をしながら“歩ける”2輪走行、乗用車と並んで路上で移動する3輪走行と、速度に応じて変形して、走りを楽しめる。

 「環境保全という社会的な課題への対応が不可欠」と強調した渡辺社長は、同社が誇る最先端の燃料電池とモーターを搭載したハイブリッド車「Fine-X(ファイン・エックス)」(全長3.86メートル、全幅1.75メートル、全高1.55メートル、定員4人)も披露(ひろう)。タンクに貯蔵された約700気圧の水素と空気中の酸素を化学反応させて発電、バッテリーからの電力と組み合わせて走行するので、「排出するのは水蒸気だけでいくら走っても空気を汚すことがない」(渡辺社長)という。壁面や座席、カーペットからダッシュボードに至る内装の大部分に、ケナフ・麻などの植物性素材やサトウキビから作るポリ乳酸を採用。製造から廃棄にまで、地球温暖化の原因である二酸化炭素を増やさないことを追求している。

 ハイブリッドシステムを構成する水素タンクや燃料電池、バッテリーは小型化を実現し、いずれも床下に配置。このため低重心化を進めた上、同社の小型車「イスト」車体でありながら、中型セダン「カムリ」と同等の広い室内空間を確保できた。左右に1つずつあるドアは翼のように大きく広がって開閉する構造で、座席が横向きに回転して乗員を迎えるなど、サプライズ(驚き)機能も満載。4つの車輪それぞれにモーターが搭載、転換したい方向に応じて独立して回転する(切角最大77度)。四方へ自在に舵を取れるので、狭い道での走行や袋小路での方向転換、縦列駐車など、ドライバー泣かせの環境にも便利な機能を備えている。

 トヨタの今回のテーマは『エコ×エモーション:環境と感動』。環境への配慮と、車で走る喜び、使う楽しさというエモーショナルな魅力を共に追求した車づくりの取り組みを強調して、コンセプトカー7車種と市販乗用車16台を出展した。ここに紹介した2台のコンセプトカーのほかにも、最新ハイブリッドシステムに電気式4WDを組み合わせ、専用の新車台を採用した人気ミニバン「エスティマ」の次世代モデル(全長4.82メートル、全幅1.8メートル、全高1.76m、定員7人)、目的に応じて座席が前後に移動し、ワゴン、ミニバン、ワゴンの3モードが楽しめる「FSC」(全長4.67メートル、全幅1.8メートル、全高1.52メートル、定員6人)などにも注目が集まる。

 この企画では、21日に開幕する「第39回東京モーターショー」の開催中、モータショー見物は小学校以来という、間もなく入社1年を迎える新人記者が、出展する国内主要メーカーごとに、社長一押しのコンセプトカーを紹介します。【了】

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