ドコモのiPhone投入が取り沙汰されるなか、系列会社がひと足早く売り出した格好。端末自体は海外から調達するSIMフリー機だ

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NTTグループのNTTレゾナント(以下、レ社)が、7月下旬から自社運営のネットショップ「goo SimSeller」でiPhoneの販売を始めた。

系列会社であるNTTコミュニケーションズのSIMカードとのセット購入が条件だが、SIMフリーの香港版のiPhoneが手に入るのである。

ただし、レ社扱いのこのiPhone、NTTドコモの回線が使えるものの、通話はできないし、データ通信量も一日30MBまでという制限がある。しかも、端末の取り扱い数が少なく、入荷次第すぐ売り切れてしまう。

とまあ、いろいろ不便さはあるのだが、レ社がiPhoneの取り扱いを始めたという事実は、ある大きな予感を抱かせる。

つまり、ドコモによるiPhone導入への布石ではないのか?

そのように推理できる理由を説明しよう。

まず、NTTグループの中核のひとつであるドコモは、現在、販売ノルマや特許の開放など厳しい条件を突きつけてくるアップルとの間で、iPhone導入をめぐってタフな交渉を続けている真っ最中。そんなドコモおよびNTTグループが、レ社の“抜け駆け”を許すとは考えづらい。

さらに、レ社からiPhoneを購入する際、顧客が「現在の携帯キャリア」「新規購入か、買い替えか」「購入の最大の決め手は」などのアンケートに答えると、送料無料になる。しかも顧客はドコモ回線を利用するから、iPhoneを使った通信との親和性を確かめる格好のモニターとなるわけだ。

とすれば、ドコモでのiPhone取り扱いはもはや既定路線であり、きたるべきXデーに向け、レ社経由で事前調査をしていると読める。


ジャーナリストの石川温(つつむ)氏は、そうした解釈を「肯定と否定、どちらもできる」という。

「レ社の商売とすれば、iPhoneの新型機発表が9月に控えているこのタイミングで、仕入れ値が高い香港版のiPhoneをわずかな数量売り出しても、うまみは少ない。逆にレ社が販売時に行なう顧客アンケートの結果は、iPhone導入にまだ色気があるドコモにとって、価値の高いマーケティング情報です」(石川氏)

要するに、Android機でソニー&サムスンの“ツートップ戦略”を打ち出しているドコモとしては、対外的なプライドがある。だから、レ社を先兵として使い、iPhone導入への下準備をしている可能性があると。

だが、その一方、今回のレ社の動きとドコモはまったくの無関係とも考えられる部分も……。

「ドコモって実は、ほかの系列会社とあまり仲が良くない部分もある。レ社とそこまでの密約を交わすかどうか……。それに導入がほぼ決まっているのなら、自社スタッフを大量動員してモニター用のiPhoneを持たせ、データを集めればいいだけのこと。通話もできない端末を数少ないユーザーに売ったところで、できることは限られています」(石川氏)

何より決定的なのは、ドコモ幹部陣が今もアップルとの交渉に進展がないことを明言している点。

「合意が近づいているのなら、守秘義務があるのでノーコメントを貫くはず。なのに、相変わらず、『ドコモのビジネスモデルとiPhoneは相いれない』なんて言っている。少なくとも、9月の新型機の発表と同時に導入という線はないでしょうね」(石川氏)

確かに、今年のドコモ冬商戦の主役はソニー、シャープ、富士通の“スリートップ”だとする報道が、すでにそこかしこから出ている。

“ドコモでiPhone”は、まだまだ先の話なのか……。