プロ野球はシーズンオフに入って久しいが、今年は例年になく新外国人選手の獲得に熱心だ。
 注目は、福岡ソフトバンクホークスブライアン・ラヘアと、東北楽天ゴールデンイーグルスアンドリュー・ジョーンズ。ラヘアは、2008年からシアトル・マリナーズシカゴ・カブスでプレーし、3年間で打率.26021本塁打を記録。今季は130試合に出場するなど、カブスのレギュラーとして活躍した。 
 ジョーンズは1996年からアトランタ・ブレーブスロサンゼルス・ドジャーステキサス・レンジャーズなどでプレー。1998〜2007年には10年連続でゴールドグラブ賞を受賞し、2005年から2年連続40本塁打125打点を記録している。

 ホークス、ゴールデンイーグルスを含め各球団とも例年になく新外国人の補強に熱心なのは、1つに昨今の円高の進行があるのだろう。ここ数年間、米ドルに対し円高が進行しているのは、既知のとおり。円高が進めば、ドル契約の場合、これまでよりも安く外国人選手と契約できる。

 われわれファンには、新外国人選手、特にメジャーリーグで実績を残した選手を見られるのは嬉しい限りだが、彼らが前評判どおりの活躍をするとは限らない。
 最近では、ブラッド・ペニーが記憶に新しい。2006年に最多勝を獲得した右腕は昨年、ホークスに入団。注目と期待が集まったが、わずか1試合に登板しただけで、帰国してしまった。

 帰国は、わが国の環境に馴染めなかったためとされている。実際、わが国に来る外国人選手の多くが、文化や習慣の理由に帰国の途についている。

 一方で、わが国古来の文化に馴染みすぎたために、現代の日本人選手との距離が開いてしまったのが、1977年に中日ドラゴンズでプレーしたウィリー・デービスだ。
 日蓮正宗の熱心な信者だったデービスの日課は、そのお題目を唱えること。朝から晩まで、宿舎の部屋や球場の風呂場、ロッカールームなどで「南無妙法蓮華経」を繰り返した。
 本人には、リラックスするための儀式のようなものだったが、それを聞かされるチームメイトにはたまったものではない。「うるさい」「眠れない」「落ち着かない」などの文句の声が挙がった。
 当時の与那嶺要(ウォーリー与那嶺)ドラゴンズ監督も、「いいプレーができるように、チームが勝つように、怪我人が出ないようにと祈ってくれるのはいいんだけど、他の選手はみな、葬式に出ているような気になってしまうんだ」と、苦笑するばかりだった。

 1946〜1968年に南海ホークスの監督を勤めた故鶴岡一人氏は外国人選手の操縦術について、「抱いてやればいい」と言っている。文面どおりなら誤解を招きかねない発言だが、要は彼らの気持ちを汲むことが大事なのだ。

 だが、言うのは簡単だが、毎年多くの外国人選手が母国と日本の文化の違いで、日本球界を去っている。
 今オフに補強した外国人選手は、いかに?