■18節終了時で19失点を喫していた山形

シーズン序盤は堅守型のイメージが先行していた首位のモンテディオ山形だが、気がつくと失点数は、試合前まで二位だった京都サンガF.C.との直接対決となった6月9日のJ2第18節終了時で、19失点とリーグ10位。反面、得点が30と多くこれはリーグ3位タイである。

守護神の清水健太も、1試合平均失点が1点台であることには「ちょっと多いかなとは思います。だいたいJ1に昇格しているチームは0点台だと思うので」と言いつつ「でもそのぶん点は獲れているので、あまりに気にする必要はないと思うんですけれども、減らせるものなら減らしたい」と、必ずしも失点の多さが内容の悪さを意味しない、得失点のバランスに言及していた。
データを見れば、この首位攻防戦で京都サンガF.C.に先制されて同点に追いつく展開もありうる範囲内ではあった。

9日の西京極は、前半の9分に失点して45分に追いつき、後半の11分に失点して43分に追いついた。二本のハーフで同じ展開を二度繰り返したのが、この日の山形だった。

前半に失点するまでは京都の巧さに翻弄され、畏れすらうかがわせた山形。しかしビハインドで吹っ切れたのか、それとも京都が若干引き気味になったせいか、スプリント力とスタミナを活かした持ち前の前線からの圧力、ピッチを広く使った揺さぶりでペースを奪い、1-1の同点に持ち込んだ。

■中盤に君臨する、新人の宮坂政樹

FCバルセロナがシャビ、イニエスタ、セスク・ファブレガス、フランス代表がナスリ、リベリ、日本代表が本田圭佑、香川真司と遠藤保仁で成り立っているように、モンテディオ山形は宮坂政樹、秋葉勝と船山祐二の中盤がすばらしい。この9日の第18節で得点ランキングトップに立った中島裕希、そして萬代宏樹と山崎雅人の3トップも非常に好調(1-1に追いついた中島のゴールは萬代のスルーパス、山崎の飛び出しと潰れる動き、中島の二次攻撃によるもの)だが、やはり山形のサッカーを牽引しているのは、戦術眼とたくましさ、判断力と技術に優れた中盤だと言ってよい。

新人ながら将軍として君臨する宮阪は、失点後、中長距離のパスを駆使し、ぐい、と流れを引き寄せていた。失点後に心がけたプレーは何かと訊くと、彼は次のように答えた。
「相手が一発で獲りにくる傾向があったので、ボールを持ってからしっかりからだを入れる、ひとつタメをつくるということは意識していたんですけど。そこでしっかりとつなげることが多かった。
持ちながら、誰かが走りだしてそこに落とし込み、そこでもからだを張ってタメてから全体を押し上げる。最初はパスが合ってなかったですし、雨の影響もあって収まるところがあまりなかったので、それでちょっと苦しいところはあったんですけど。途中からうまくいったんじゃないかな、とは思います」

激しい球際の攻防でボールを奪うと、ピッチをワイドに使い、正確につないですばやく攻めるダイナミックな山形に、今度は京都が押し込まれていた。ショートパスを廻されているという感覚ではなく、廻させているという自分たち主体の感覚を取り戻した山形は、自分たちのプレーを堂々と表現できるようになっていたのだ。

■山形の看板でありつづける石川竜也

右足でフリーキックを蹴る宮阪とともに、左足でのキッカーとして山形の看板でありつづけている99年ワールドユース銀メダル戦士の石川竜也は、得点した側の心理を読んでいた。
「先手を取られたあと、向こうが引い守りに来るのか否か、相手の出方を考えながらプレーをしていました。1点獲って向こうが少し引いたようなかたちになり、ウチが前目に行けるようになったので、前半にうまく獲れた。試合の流れを考えながらやれるようになってきている」(石川)