オープン戦をしばらく見ていると、またもや中島裕之選手が進化しつつあることに気付かされる。オフはポスティングによるメジャー移籍を目指したが交渉が不調に終わり、少なからず調整の遅れはあったはずだった。本来であれば休みたい時期であっても休めず、疲れを抜き切ることも難しかったと思う。しかしそれでも中島選手は進化を見せている。その姿を見ると、やはり中島選手には今季からメジャーに挑戦させてあげたかったという、ファンとしての思いが募ってしまう。

本題は打撃についてなのだが、まずは守備について。やはり奈良原コーチの加入は大きかった。春季キャンプでは中島選手と中村剛也選手が連日の特守を受けていたようだが、2人とも昨季までと比べると守備力は目に見えて向上していると思う。球際に強くなったという言葉がピッタリだろう。イレギュラーをしても、バウンドにタイミングを合わせ切れなくても、捕球体勢に余裕を持てている分、しっかりと反応出来ているように見える。

イレギュラーバウンドに関しては、人工芝がほとんどの日本の球場よりも、天然芝がほとんどとなるメジャーの球場の方が断然多くなる。その打球に対する対応力を身に付けられたということを見ても、今年からメジャーリーグに行かせてあげたかったが、1年待つ甲斐は十分にあったのだろう。守備のスペシャリストの中のスペシャリストである奈良原コーチの指導を受けることで、中島選手、中村選手共に守備力は向上している。2人は比較的送球ミスも多いのだが、今のように余裕を持って捕球できていれば、今季はその送球ミスも激減するのではないかと考えられる。

さて、ここで話題を本題に移していきたい。中島選手の打撃フォームだが、今季はややオープンスタンスになっている。中島選手自身がどのような意図でオープンスタンスに変えたのかは分からないが、オープンスタンスにするメリットは、投球が見やすくなるという点だ。中村選手もやはり投球を見やすくするためにオープンスタンスを採用している。

過去の中島選手は、どちらかと言うと背中を投手に向け、左肩口から投球を見るフォームを採用していた。これは“ぶった斬り打法”とも呼ばれていたものだ。このぶった斬り打法そのものに大きな変化はないのだが、オープンスタンスから踏み込んでいくことで、内角球を今まで以上に上手く捌いている。アウトになっている打席を含めて見ても、内角球を打った時の打球の強さは、あくまでも筆者の印象であるのだが、昨季以上に強くなっているように感じる。

上体を閉じて構えるのがこれまでの中島選手のスタイルだったが、この場合、内角球を打つ際多少窮屈になってしまう。具体的には、左腕の動きに制限が出てしまうのだ。しかし多少オープン気味に構えて、余裕を持たせた左腕を動から動で利用することで、よりスムーズに左腕を使っていくことが可能になる。

中島選手はトップハンドトルクという打撃メカニズムを採用しているのだが、トップハンドトルクの場合、左腕はバットのコントロール役となる。つまり左腕の動作に余裕が生まれることで、よりバットをコントロールしやすくなるという理屈が成り立つ。

そしてもう一点、今季の中島選手は軸脚への重心の比重を、昨季以上に大きくしているように筆者には見える。これまでも中島選手は軸脚への重心の比重が大きかったのだが、さらに大きくなっている。これは簡単に説明をするなら、打球に飛距離が出やすくなるという影響が考えられる。昨季までの中島選手は、軽打をして明らかに短打を狙っていく場面が多々見られたが、今季はもしかしたらホームラン数にもこだわりを持っているのかもしれない。

土井ヘッドコーチは、今季こそ中島選手にはトリプルスリーを達成してもらいたいと強く願っている。筆者も本ブログにて過去、幾度か中島選手のトリプルスリーの可能性について書いてきたが、今季はここ数年の中では、最もそこに近づける可能性が高いのではないだろうか。もちろん4番中村選手の前で30盗塁をすることは非常に難しいとは思うが、しかし30本塁打に関しては、今季の打ち方を見る限りでは、かなり可能性は高まってくると筆者は考えている。

今季はさすがに、統一球の影響はもうないだろう。それを考えれば、中島選手が3割を打てる可能性は非常に高い。そして中村選手の活躍により、統一球でもホームランを打てることが分かった。今オフにはメジャー移籍が確実の中島選手だ。今季こそは日本一、そしてトリプルスリーを達成し、胸を張って堂々と海外FA宣言をしてもらいたい。そして進化した中島選手には、他の追随を許さない活躍を見せ、最もメジャーリーグ向きの技術を持つ日本人打者として、正当な評価を得てメジャーリーガーになって欲しいと筆者は願っている。