9日、ブラジルW杯アジア最終予選の組み合わせ抽選発表が行なわれ、日本はオーストラリア、オマーン、ヨルダン、イラクと同グループという顔合わせとなった。サッカージャーナル編集部では、急きょ有識者に組み合わせについてコメントをいただいた。

●宇都宮徹壱(ノンフィクションライター/写真家 twitter

正直、微妙な組み合わせではある。個人的には韓国との同組を、ある種の希望をもって予想していたからだ。韓国とはザッケローニ体制になって3回戦い、1勝2分け0敗(アジアカップのPK勝利は引き分けにカウント)。しかも昨年8月の札幌での対戦は、3−0で大勝している。日韓戦にプレッシャーを感じるのは、きっと韓国のほうだろう。そんなわけで、今大会も日韓対決が最終戦で実現しなかったのは返す返すも残念である。

 もちろん、決して悪い組み合わせではない。現在、FIFAランキングではアジア1位のオーストラリア、そしてジーコ率いるイラクは、確かに侮り難い相手ではある。とはいえ、先にホーム2連戦でオマーン、ヨルダンと対戦できるのは有利だ。そして3戦目にアウエーで対戦するオーストラリアは、前節はアウェーだからコンディション的に圧倒的に有利というわけにはいかないだろう。初戦のプレッシャーに打ち勝つことができれば、日本は今後の戦いをかなり優位に進めることができるはずだ。無論、楽観は禁物だが。


●小澤一郎(サッカージャーナリスト twitter

 アジア最終予選ともなれば簡単な相手などありませんが、A組との比較から「いい組に入った」という表現が最も適切でしょう。オマーン、ヨルダンとホームでの2連戦からスタートできるのはアドバンテージですが、そこで勝ち点6を獲っておかないと苦しくなるというより過度のプレッシャーがかかると思うのでまずはどういう入り方をするのか。続いてアウエーでのオーストラリア戦もあるので、6月の3試合に向けた準備がアジア最終予選における最重要課題でしょう。ある意味、対戦相手や組み合わせより、6月に向けてどう準備し、どう乗り切るかがアジア最終予選の鍵だと思います。


●清水英斗(サッカークリエイター twitter

全体的な雑感としては「悪くない」という印象です。最近、苦手意識が付き始めていたウズベキスタンと別組になったことは好材 料。しかし、同じく別組になった韓国は3次予選の最中に監督が解任されるなど、チーム状態が不安定なのでオーストラリアよりも与し易いと 思っていたので、分かれたのは残念ですが、総じて見ると「悪くない」という印象です。

 おそらく、グループBはヨルダンが鍵を握っているのではないでしょうか。アジアカップで日本が苦戦し、1−1で辛うじて引き分 けた相手として記憶に新しいですが、ヨルダンは3次予選を4連勝で早々と突破を決め、その4試合で失点はわずかに1。爆発的な得点力こそ ありませんが、組織的なディフェンスを武器に、近年、目覚しい成長を遂げているサッカー新興国です。

 ジーコ監督率いるイラクも不気味な存在ですが、イラクはユニス・マフムードやナシャト・アクラムなど個人の能力を前面に押し出 すスタイルなので、シンプルにボールをつなぐ組織サッカーの日本としてはすきを突きやすいのではないか。逆にヨルダンのような組織守備の 固いタイプのほうが、神経質な試合展開を強いられる恐れがあります。

 最後の3戦が厳しい試合ということを踏まえても、第2戦までにオマーンとヨルダンから勝ち点6をゲットして先行逃げ切り態勢に入れるかどうか。そこが重要になるでしょう。


●川端暁彦(サッカー専門新聞エルゴラッソ編集長)

 ポッド分けが実力相応になっていたため、抽選自体の有利不利はあまりないと思っていました。あえて言えば、苦手意識が芽生えている可能性のあるウズベキスタンを避けられたのはポジティブな材料ではないでしょうか。

「中東勢が多くて移動などの負担が大きい」というのが普通の見方かもしれませんが、現在の日本代表の主軸は、善くも悪くも欧州組。彼らの移動にかかる負荷は中東でのアウェイ戦のほうがむしろ軽くなります。欧州のシーズン中に行われる11月と3月の中東アウェイ戦(オマーン、ヨルダン)は勝負どころと思われますが、欧州組にとってそれほど負荷の大きくない移動となるのは“地味に大きい”と思います。

 ただ、日本はコンフェデ杯の関係で最終節が「試合なし」となっているので、最後の駆け引きが効きません。勝ち点のバランスによっては“談合試合”が出てくる恐れもあるので、最終節が消化される前に出場を決めておく必要があります。その点は、少し不利かもしれません。


●フモフモ編集長(フモフモコラム管理人 twitter

最終予選の組み合わせに期待するのは「燃える」シチュエーション。強い相手歓迎。因縁の相手歓迎。そしてお友達歓迎。その意味でもっとも期待していたのはジーコ監督率いるイラクとの対戦。さらに、日本がポット2に入ったことでオーストラリア・韓国のいずれかと当たることが決まっていましたが、もしジーコイラクが来るならオーストラリアに来てほしいと思っていたところ。

今回の抽選は「日本とジーコの再会」「2006年の因縁あるオーストラリア」「豪州を倒して共にブラジルへ」…夢の展開が実現できる願ったり叶ったりの組み合わせとなりました。日程的にも、オーストラリア→イラクの順で当たることになったので、きっちりオーストラリアを凹ましてから、ジーコイラクとの対戦を和気あいあい楽しめそう。さぁ、カシマスタジアムをおさえに行きますか!


●篠 幸彦(サッカーライター twitter

ここまで来たら楽な試合は一つもないし、どの国も油断ならないことは大前提として、最大の難敵が豪州であることに異論は無いだろう。5勝1敗という成績で危なげなく3次予選を通過したジーコ率いるイラクも強敵だ。実質、日本を含めたこの3カ国が上位2位を争うというのが大方の予想だろう。アジア杯で苦戦したヨルダンは、3次予選でイラク相手にアウェイで2−0という勝利を収めている。埼スタでの第2戦は要注意だ。3次予選をたった3得点という攻撃力で通過したオマーンがグループ最弱だろう。しかし、豪州が3次予選で唯一負けているのがアウェイでのオマーン戦だ。南米とのプレーオフを避けるためにはこういう取りこぼしはしたくない。

日程で言えば6月の連戦の最初の2試合をホームで戦えるのはかなり有利だ。いずれにせよ、冒頭の前提をふまえたとしても、アジア王者の日本には1位でブラジル行の切符を手にしてもらいたい。


●北健一郎(サッカーライター twitter/ブログ

「悪くない組み合わせ」だと思いたくなるが、ザックジャパンが苦手とする中東の3チームと、李のボレーで勝ったものの全体的には押されていたオーストラリアと同じ組ということで、「良くはない組み合わせ」というのが正直な感想だ。個人的に提案したいのがFWの人選だ。ここまでは前田、李、マイクの3人を起用してきたが、どの選手も絶対的なエースにはなっていない。となれば、軸を確立しようとするよりも、相手の特徴に合わせて最も適した選手を起用するべきだろう。オーストラリアのような高さのある相手に李、組織的に守ってくるヨルダンにはマイクの高さを生かすといった具合に。「誰が出て来るかわからない」不気味さは相手にとって間違いなく嫌なはずだ。


●河治良幸(フリーライター)

最新のFIFAランキングに準じて2つの国を振り分けるため、楽な組み分けにならないことは分かっていたが、想定される中では理想的な結果だ。特に先日敗れたウズベキスタンを避けられたのは大きいのではないか。もちろん、ジーコ監督率いるイラクも難敵でフィジカルを活かしたサイド攻撃は要注意だが、現状だと最終戦に組み込まれる「アウェー」がカタールのドーハあたりで代行、つまり「半アウェー」となる可能性が高いことも小さくないメリットだ。韓国とオーストラリアはともに“同格以上”の相手だが、状況に関係なく本気モードで来る韓国と比べれば、オーストラリアはお互いの順位や勝ち点をにらみながらの試合になるはずだ。

公式戦を組めずに6月2日のオマーン戦を迎え、そのままヨルダンとの2戦目になるが、ここで是が非でも勝ち点6を積み上げたい。最初のアウェーは12日のオーストラリア戦だが、時差がほとんど無く、南半球はちょうど冬だがプレー環境は悪くない。前回W杯予選で一度経験していることも大きい。アジアカップの決勝で壮絶な試合を演じた同組最大のライバルだが、主力の高齢化が進み、若手も順調に育っていない。勝ち点1以上を狙っていきたい。最終予選で今年最後の試合となる、11月のオマーンとのアウェー戦で取りこぼしたくはない。今回の組ではもっとも引いた守備からロングボールを多用してくる相手になりそうだが、しっかり日本のスタイルで挑みながらリスク管理を徹底させて勝ち点3を奪いたい。4カ月を空けてヨルダンとのアウェー戦となるが、ここが最大のポイントになるのではないか。ヨルダンでの試合を経験している「U23世代」が五輪の本大会を経て、どこまで成長しているかも注目点だ。5チームで本大会に自動的に進めるのは2枠しかないので、アウェーでも基本的には勝ち点3を狙って行く必要があるが、欧州組が主力になり、五輪の本大会も挟む中で、1つ1つの試合に向けてコンディションとチームの一体感を高いレベルに持って行けるかがカギを握りそうだ。


●岡田康宏(サポティスタ管理人 twitter

本大会出場はよっぽどのことがない限り問題なさそうですよね。あとはオーストラリアに勝てるかどうか。本大会で勝つチーム作りを考えるならば、韓国よりオーストラリアの方が良い相手だと思うので組み合わせには恵まれたと思います。W杯本大会決勝トーナメントで1勝をできるチームを、またはその下地を、この最終予選でしっかり作れるかどうかが注目です。


●いとうやまね(ライター・ユニット twitter/ Facebook

「良い組分け」というのが第一印象。韓国と当たらなかったのは、ラッキーだろう。今のオーストラリアには、以前ほどの圧力が感じられない。韓国よりもオージーの方が、与しやすい。

最終的に、予選突破をイラクと争うことになりそうだ。そこには、ああお懐かしや、ジーコ御大の姿が。監督力では圧勝か。得体の知れない「ジーコ力」を除けば…。

 日程的にも、日本は悪くないのではないか。出だしの3連戦を、ホーム→ホーム→アウェーの順でやれるのは、ありがたい。気がかりは、最後の日程が抜け番になること。先行逃げ切りが必須だ。トップでの通過を期待したい。


●江藤高志(サッカーライター twitter / ブログ

 正直な話、韓国と同組になることを期待していた。97年以来韓国とはワールドカップ予選を戦っておらず、あのしびれるような感覚を求める自分がいたからである。そして韓国と同組になることで、「ワールドカップに出て当たり前」という98年大会以来多くのサッカーファンが共有する風潮に大いなる危機感をもたらしてくれることを期待していたのである。ワールドカップとは、本来そう簡単に出られる大会ではないからだ。

 そういう点で、韓国との対戦がない今回の組み分けは若干残念に思う。しかしその一方で、日本代表選手がケガのリスクを低減できたという点ではよかった。

 また韓国と同様に、ピッチ外でなりふり構わず試合結果をどうにかしそうな印象のあるカタールとも別組となり、この点でも日本には悪くない組み分けだったと言える。ワールドカップは出場するのが難しい大会ではあるが、サッカーの盛り上がりを考えれば、どうしても出るべき大会であるのは間違いないからだ。いずれにしても、本大会出場を見据えれば組み分けは良かったと考える。この組であれば本大会出場の可能性はかなり高いと考える。日本は組み分けに恵まれている。


●田中滋(サッカーライター twitter

オーストラリアと同組になったことで緊張感のある最終予選となりそうだ。だが、肝となる6月の3連戦を、3次予選でわずかに3得点しかしていないオマーンとの試合からスタートできるのは嬉しい。オマーンとヨルダンに連勝し、オーストラリアへと乗り込みたい。


●中山記男(エアロプレイン/合同会社オラニエ代表 twitter

【抽選前のコメント】今回の組み合わせ、ランキングの妙にてイランと戦わなくて済んだことをポジティブに捉えたい。ランキングの順位で見がちだが、いままでの対戦を考えると、イランアウェーがないだけでどれだけ心が穏やかなことか(笑)。究極な話、この3国とであれば、どことあたっても同じでしょう。