その問題の作品は『ギプス』(塩田明彦監督、配給シネロケット)という映画で、公開は'01年2月、11年前のちょうど今頃の季節である。
 非メジャー系作品ゆえに、都内のミニシアターでひっそり公開されたので知名度は低いが、当時はマニアックなファンの間で話題になったものだ。おそらく今回、尾野真千子人気にあやかってがぜん再評価されるのは必至。
 「当時『エコエコアザラク』などのホラー作品で、人気だった美少女女優の佐伯日菜子(35)と共同主演という形で、まだ無名に近い尾野は熱演しています。公開時19歳、撮影時はおそらく18歳のはずの尾野の凛とした美少女ぶりは一見の価値ありですよ。おまけに作品の内容もかなりアブナイので見逃せません」(アイドル評論家)

 内容は確かにアブナイ。若い女性・和子(尾野)が、街で出会った松葉杖にギプスをはめた同世代の女性・環(佐伯)の不思議な魅力にとり憑かれ、彼女を追い求めるようになり、翻弄されていく。やがて“ある事件”を契機に2人の力関係は揺らぎ、和子もまた“ギプス”をはめ、2人だけの危険な暗黙のゲームにのめり込んでいく…。
 女性同士の憧れ、献身、嫉妬、挑発、そして孤独感といった感情をモチーフにしたその禁断の関係はレズビアンを妄想し、その主従・隷属関係はSMを連想させる。おまけに全編に登場する尾野、佐伯の美少女2人の松葉杖、ギプス、包帯、車椅子の姿が痛々しくもマニアックなAVのようにソソられるのだ。
 「尾野は奈良県出身で、中学時代に『萌の朱雀』という映画のロケ地となった現地で河瀬直美監督に抜擢され、高校卒業後に女優を目指して上京した逸材です。今でいえば、檀れいタイプのキリッとした美ぼうは当時から目立っていました」(映画記者)

 前出の秋本氏もこの『ギプス』を公開当時にしっかり観ていて、尾野を惜しみなく称賛する。
 「主演2人のヌードや濡れ場こそありませんが、それを埋めてあまりあるほど、倒錯的エロスが充満していました。いわゆる、ギプスフェチ、包帯フェチの人にはたまらない“お宝映像”じゃないですか。特に、首が動かない形での包帯姿の佐伯に車椅子を押される尾野の両足と右手にギプス、左目と頭部を覆う包帯だらけの満身創痍ぶり。それが逆に尾野のルックスとのコントラストを一層浮き彫りにして、その凄絶な美しさは息を呑むほどでした」

 すでにDVDが劇場公開の翌年に発売されている。これまではレンタルショップの隅っこに置かれていただろうが、今回の“尾野人気”で、その“お宝映像”性から『真幸くあらば』同様、一気に脚光を浴びるかもしれない。
 ファンならずとも、朝ドラで好演する彼女と同時平行して“ギプス・包帯姿のアブナイ尾野真千子”を、こっそり楽しみたいほどの貴重品ではないか。