岩隈久志のシアトル・マリナーズ=SEA入りが秒読みと報道されている。一昨年は28試合に先発して201回を投げ10勝9敗、今年は14試合に先発して119回6勝7敗、DIPSは3.01から2.67と上昇したが、統一球の影響も考慮すれば評価はかなり下落したはずだ。
補強が進む現在のSEAの投手陣に岩隈を当てはめてみる。

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SEAの所属するアリーグ西地区は、大補強をしたロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム=LAAと、ダルビッシュが入る見込みのテキサス・レンジャーズ=TEXが突出し、チーム解体中のオークランド・アスレチックス=OAK、SEAとの差が大きく開いた。二強二弱になると予想される。

しかしSEAは今のところ、本格的な補強は、アトランタ・ブレーブス=ATLからジョージ・シェリルを獲得した程度。あとはAAAの新人と、昨年MLBで実績のないベテランをテストしようとしている。ロースターはスプリングトレーニングまでに大きく変わるはずだ。

しかし、SEAの補強の最重要ポイントは投手ではない。歴史的と言われるまでに弱体化した打線にある。プリンス・フィルダーに執心だったのもそのためだ。

投手陣には、一昨年のサイ・ヤング投手フェリックス・ヘルナンデス、バーガス、昨年売り出したピネダ、べヴァンという若手もいる。もう1枚先発がほしいところではあるが、それほど差し迫っているわけではない。彼は平均年齢26.5歳という投手陣で今のところ最年長になる。

岩隈は一昨年、ポスティングで独占交渉権を得たOAKとの交渉が決裂し、楽天でもう1年投げた。しかし右肩の不調で約2か月を欠場した。今季の年俸は3億円だったが、おそらくSEAは150万ドルくらいしか払わないのではないか。今季は、それでも岩隈は契約するだろう(今年の中島裕之もニューヨークヤンキース=NYYとの交渉が決裂する可能性は高いようだ)。

昨年の建山もそうだったが、つまらないスキャンダルに塗れてしまったために、岩隈の評判は地に落ちてしまった。一昨年末のOAKとの交渉の経緯もあって、彼を喜んで送り出す雰囲気はなくなってしまった。

それでもイチロー、川崎とともにペナントレースを戦う岩隈は見てみたい。岩隈の持ち味は、はやる打者の打ち気をそらす巧みな投球術にある。2009年3/18WBCキューバ戦で岩隈は6回を無失点に抑えた。このときのコントロールの精度の良さ、変化球の鋭さは芸術的だった。キューバの選手たちが「あいつが一番嫌だった」と言っていたのを思い出す。

問題はシーズンを通して戦うことができるかどうかだ。最近、日本人MLB投手には明るい話題が少ないだけに、SEAで投げるのであれば応援したい。