予算縮小、財政黒字化を自慢する橋下氏だが、その言と矛盾するムダ行政に批判が集中した事実もある。他でもない、府庁舎の移転騒動である。

 橋下氏は大阪湾の埋め立て地にある第三セクターだった旧大阪ワールドトレードセンター(WTC)ビル(55階建)を買い取り、老朽化した府庁舎の移転を、08年8月から画策した。小松氏が解説する。

「府議会で2回否決されても、橋下さんはさらに移転を主張した。大阪維新の会結成も、WTC問題がきっかけでした。確かに執務環境はいいでしょうが、庁舎が二分されては不便です」

 橋下氏は府の部局を順次、WTCに移していったが、知事室と議会の移転について3分の2の賛成を得られず、敗北。部局を半分移した時点で諦めるという中途半端な形となった。

「あの土地は地盤が緩く、東日本大震災の影響で、揺れすぎてビル300カ所に亀裂が走りました。関西圏でこんな被害があったのはここだけです」(小松氏)

 府庁舎が2つあるという、府民にとっては不便極まりない状況を作って辞任した橋下氏。森氏も、

「完全な失政。橋下氏はWTCを防災センターにして、周辺地域を活性化し、税収を上げる狙いを持っていました。しかしあんな地盤のところに防災センターなんて、耐震性に問題があることは最初からわかっていたはずなのに。その失政の責任を取っていないですよ」

 ムダな買い物をしたうえに、今後は庁舎2つを運営せざるをえないため、コストが上がるのは明白。

「財政構造を悪化させる政策ミスを犯したわけですから、財政的には素人と言わざるをえません」(木村氏)

 ところで橋下氏が大々的にブチ上げた目玉政策「大阪都構想」には、大阪府と大阪市の二重行政を解消する目的があったとされる。橋下氏の出身である大阪・北野高校の同級生で、前衆院議員の川条志嘉氏が言う。

「わかりにくかった府政と市政をわかりやすく説明してくれました。例えば、水道行政とか。二重でないところはどこなのか、市民が探すきっかけを作った。それは功績だと思います」

 その一方で、大阪市と堺市をくっつけて新たな区に分け、さらに周辺の9市も都区に替えてそれぞれに公選制の区長を置く、などとする案にも大ブーイングが巻き起こった。