東電、国有化の可能性も 巨額補償にどう対応
福島第一原子力発電所の事故対応に追われている東京電力が、国有化される可能性が指摘されはじめた。
東北関東大震災に伴う原発事故によって、放射能漏れの被害が拡大したことなど、東電に課せられる損害賠償が巨額になるのは明らか。すでに、地元の福島県や茨城県、栃木県、群馬県には、国からの指示でホウレンソウや牛乳に出荷制限がかかっていて、農家は風評被害を含めた損害の補償を求めている。
その額は、一部で国の賠償総額が1兆円超になるとも報じられているが、「まだ予測がつかない」のが実情だ。東電がすべての賠償責任を負えるはずもないほど甚大で、国が肩代わりすることになるのは必至とみられている。
国による「肩代わり」国会審議の必要も
茨城県は、2011年3月19日からホウレンソウの出荷を自粛。橋本昌県知事は「東京電力に補償する力がなければ、国としてやっていただきたい」と、21日の記者会見で述べた。
一方、放射能漏れによる農家への補償について、枝野幸男官房長官は21日の記者会見で「一義的には原子力災害に起因するものなので、当然、まず東京電力が責任をもっていただく」と突っぱねた。しかし、「それがもし十分に補償できない場合には、国においてしっかり担保する」とも話している。
原発事故の被害者の補償に向けて、政府は原子力損害賠償法(原賠法)を適用する検討に入った。原賠法では大規模な天変地異やテロなどの社会的動乱の際に、国が原子力事業者(今回の場合は東電)に課せられた補償を肩代わりする例外措置を設けている。
その内容は、政府の判断によって損害賠償の全額を免責する場合と、国と原子力事業者の双方が分担して補償する場合があって、今回は後者の適用されるもよう。ただし、適用の判断は政府に権限があるものの、「予算手当てが必要になれば、国会の審議が必要」(資源エネルギー庁)という。
国有化なら、上場廃止に
過去、原賠法が適用されたのは1999年に起きた茨城県東海村の臨界事故で、半径350メートル以内に避難指示が出たとき。このときの損害賠償額は約150億円だった。今回の福島原発の事故では、現時点でも半径20キロ圏内で避難指示が出ている。農作物への被害状況や、避難の拡大や長期化が見込まれるだけでなく、風評被害の拡大も懸念されていて、国の補償額はさらに膨らむ可能性が高い。
また東電は、計画停電では企業や一般家庭にも重大な負担をかけていることもある。電気という「社会資本」をまかなっているだけに、復興に向けて福島原発に代わる新たな発電所の必要性もあるから、相当な投資が必要になる。補償を含め、もはや一企業がまかなえる金額ではなくなるため、国が「支援」しようというわけだが、そうであれば、「東電は民間企業である必要がない」との声もある。
さらに、福島原発はいまも予断を許さない状況にあるが、住民の避難指示が遅れる要因にもなった、不十分な説明や情報開示の遅れなどで政府との連携の悪さも露呈。政府内では「東電にはもう任せておけない」という空気もある。
国有化となれば、当然、東電の経営陣への責任追及を厳しく行う必要がある。さらには日本航空の例も引くまでもなく、株式の上場廃止も免れまい。
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