話題になっている書籍『日本が売られる』

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単行本や新書、小説などで「水道」が盛んに取り上げられている。ベストセラーのトップになっている本もある。国会では、「水道水」を巡る議論が佳境を迎え、水道法の改正案は、2018年12月4日には参院厚生労働委員会で可決、今国会で成立する見込みだ。

水道水の民営化問題は、主に地方都市で問題になっていたことだったので、全国紙での取り上げが遅れていたが、さすがに最近は目立つようになっている。

「民営化の必要性は依然はっきりしない」

この法案は、自治体が持つ水道の運営権を民間企業に売却することに道を開く内容。2日の毎日新聞社説は「水道事業の運営権売却 不安の声に答えていない」という見出しで懸念を表明している。

水道事業は市町村による経営が原則だが、人口減少に伴い需要が減り続け、事業を取り巻く環境は厳しさを増している。民間企業に運営権を売却する手法が浮上している背景には、そうした状況がある、と同紙は認めつつ、「水道は生命や生活に直結するライフライン」「民間に経営を委ねるこの方式には不安な面が多い」。実際、海外では水メジャーと呼ばれる巨大資本による民営化が失敗し、公営に戻すケースが目立つことも紹介して、「結論を急いではならない」と慎重だ。

朝日新聞も4日の記事で「この民営化の必要性は依然はっきりしない」「水道関係者の間で導入を求める声は小さい」と疑問を投げかけている。

現実が小説を追いかけている

水道事業の民営化については、出版物を通じて、問題を指摘する声が早くから出ていた。世界の水道事業に詳しいジャーナリスト、橋本淳司さんは、『67億人の水 争奪から持続可能へ』(2010年、日本経済新聞出版社) 、『日本の「水」がなくなる日――誰も知らなかった水利権の謎』(2010年、主婦の友社)など毎年のように関連本を出版。今年4月にも『水がなくなる日』(産業編集センター)を出している。

人気作家の吉田修一さんも今年5月、その名もずばり『ウォーターゲーム』(幻冬舎)を刊行した。水道事業利権を巡る国際的な陰謀をテーマとするミステリー。現実が小説を追いかけている格好だ。

『(株)貧困大国アメリカ』 (岩波新書)の大ヒットで知られるジャーナリスト、堤未果さんの近著『日本が売られる』(幻冬舎)も「水問題」を扱っている。冒頭部分は「水道」の話が延々と続く。日本の水道が「売られる」ことへのリスクをたっぷり書き込んでいる。10月刊行ですでに8刷13万5千部、トーハンのベストセラーで新書ノンフィクション部門のトップを爆走している。