選手権東京A決勝で国士舘が1-0で大成を下した【写真:平野貴也】

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選手権東京A決勝で大成を1-0完封、後半22分のPKを守護神GK小松がビッグセーブ

 やってしまったと思わずにはいられなかった。押され気味の展開からセットプレーで先制点を取って後半を迎えたにもかかわらず、不用意なファウルでPKを献上してしまったのだ。しかし、守護神は、偶然に動画投稿サイトの「YouTube」で見た映像を思い出して、窮地をしのいだ。

「相手チームのPK戦の映像を見たんですけど、全部右だったんです」

 右に飛んで相手のシュートを止め、こぼれ球を押し込もうとしたシュートも足で弾いた。勝利を手繰り寄せるビッグセーブだった。

 第97回全国高校サッカー選手権の東京都大会は、17日に駒沢陸上競技場で決勝を行い、Aブロックは、国士舘が1-0で大成を下して15年ぶり4度目の全国大会出場を決めた。

 試合の立ち上がりは、大成に押し込まれていた。それでも前半37分、左CKをニアサイドに飛ばすと、MF濱部響乃介(3年)が右アウトサイドで合わせて先制点を奪うことに成功した。2011年に女子ワールドカップの決勝戦で澤穂希が決めた形に似た一撃。濱部は「相手GKが前に出てくるタイプだったので、ニアを狙ったら良いボールが来た」とゴールの感触を振り返った。

 得点で勢い付いた国士舘は、後半の立ち上がりに決定機を迎えたが、決め切れなかった。そして後半22分に大きなミスが生まれた。右サイドからの突破を仕掛けた大成のFW原田晃希(3年)に対し、ペナルティーエリア内で慌ててチャージを仕掛けてPKを与えてしまったのだ。

学校の自由時間に…本来なら見ないはずの映像で大発見

 しかし、前述のとおり、GK小松直登(3年)のビッグセーブで難を逃れた。小松は、1回戦のPK戦で3本中2本をセーブ。準々決勝でも試合中に1本、PKを止めている。ただ「PKが得意という意識はない。運なので」と話すほどで、自信があるわけではない。右に飛んだ理由は、動画がきっかけだった。

「YouTubeに大成と東京実業の試合のPK戦の映像があったんです。(選手毎に蹴った方向を)チェックしようと思ったんですけど、全部同じ方向だった。今日蹴った選手は別の選手だったけど、今回もこっちかなと思って」(小松)

 選手権では、次戦の対戦相手をスカウティングで撮影しているため、チェックができる。しかし、大成と東京実業の試合は、準々決勝。本来ならば見ないはずの映像だ。学校で自由時間に、自分たちの試合を見ようとしたとき、関連動画に出てきて、偶然見ることになったという。大発見となった。

 1回戦では、接触プレーで脳しんとうに見舞われ、2回戦は仲間にゴールマウスを任せた。代わって出場した山田大晴(3年)が大活躍。小松は「仲間から『お前、もう要らないんじゃない?』と言われたし、自分でもそう思った」と笑うが、偶然の動画チェックを起因とするPKストップなどでライバルに負けない活躍でチームを全国に導いた。国士舘は、4度目の全国大会挑戦で初勝利を目指す。(平野 貴也 / Takaya Hirano)