静岡県警高速隊が、渋滞最後尾におけるハザードランプ点灯を呼びかけています。そもそもこのようなハザードランプの使い方は、道路交通法などで規定されたものではありませんが、安全の効果が高いとのこと。その意義を改めて聞きました。

危険回避の「負の連鎖」を防ぐ

 2018年3月以降、静岡県内の高速道路で追突事故が相次いでいることを受けて、同県警高速道路交通警察隊(高速隊)が、渋滞最後尾におけるハザードランプの点灯を広く呼びかけるとしています。


渋滞のイメージ。最後尾でハザードランプを点灯させ、後続車に渋滞の存在を知らせるといった光景も見られる(画像:写真AC)。

 このようなハザードランプの使用方法は、そもそも職業ドライバーどうしのコミュニケーションから始まった「慣習」であり、道路交通法に規定はないといいます。その励行を呼びかける理由を静岡県警高速隊に聞きました。

--なぜ渋滞最後尾におけるハザードランプの使用を呼びかけているのでしょうか?

 3月に入り10日間のうちに2件、渋滞車列にトラックが追突したことを発端とする死亡事故が発生しており、由々しき事態と捉えています。3月13日(火)に県警高速隊とNEXCO中日本、県トラック協会で緊急の対策会議を開き、そのなかで渋滞最後尾におけるハザードランプの点灯を呼びかけていくことを確認しました。

--具体的にどのような効果が見込まれるのでしょうか?

「防衛運転」(編集部注:自分が原因となる交通事故を起こさないための運転方法)のひとつであるほか、後続車へ注意を喚起し「安全の輪」を広げていく効果があると考えています。ドライバーは長距離、長時間の運転で集中力が途切れてしまうと、前方に渋滞があっても気づかない場合があります。そのクルマが急ハンドルや急ブレーキで追突をぎりぎり回避できたとしても、後続車がよけられなかったり、「急」のつく運転動作がさらに後続のクルマへ連鎖したりすることもあるのです。高速道路では連なって走りますので、ハザードランプの点灯は、そのような「負の連鎖」を予防することにつながります。

ハザード点灯、正しいタイミングは?

--ハザードランプは本来、どのようなときに使うものなのでしょうか?

 ハザードランプは正式には「非常点滅表示灯」といい、幅5.5m以上の道路で夜間に緊急停車する場合などに点灯させるのが、道路交通法でいうところの用途です。渋滞最後尾で点灯させることについて義務規定はありませんが、これをしてはならないとする規定もありません。

--具体的にはどのようなタイミングでハザードランプを点灯させればよいのでしょうか?

 前方に渋滞車列があることを認めた段階で、早めに点灯しましょう。そして後続車両もハザードランプを点灯しているとわかったら消してください。

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 3月1日(木)には東名高速上り線の富士IC付近で、大型トラックが乗用車に追突し、6台が絡む玉突き死亡事故へと発展しています。また3月10日(土)には、掛川市内の新東名高速上り線で同じく大型トラックが乗用車に追突し、その乗用車が前方のトラックと後続のトラックのあいだに挟まれ炎上、乗用車のドライバーは逃げられず焼死しました。なお後者の事故は、2017年11月から試験的に普通車などの最高速度が100km/hから110km/hに引き上げられた区間で発生しており、高速道路における最高速度引き上げ区間で初めて起こった死亡事故です。いずれも、工事などで車線規制が敷かれ、前方で渋滞が発生していたところ、大型トラックドライバーが前方不注意で追突したものと見られています。

 静岡県警高速隊は今後、高速道路SAやPAでの啓発活動を行うほか、まず県トラック協会を通じてトラックドライバーへハザードランプの点灯について呼びかけるとしています。県トラック協会も、従来からウェブサイトやFAXを通じ、ハザードランプの点灯を含めた安全運転の励行について会員企業へ周知しているといい、今後も随時呼びかけをしていくそうです。

【地図】東名では工事のため長期1車線規制、渋滞も


東名高速ではリニューアル工事のため、2018年1月から4月にかけ裾野IC〜清水JCT間の一部で昼夜連続の片側1車線規制が敷かれている。3月1日の事故はこの規制区間の手前で発生していた渋滞に、大型トラックが追突して発生した(画像:NEXCO中日本)。