実はトランプ大統領は、朝鮮半島の未曾有の危機を前にして駐韓大使をまだ決めていない。国務省と国防総省の下で実務を担当する次官補、次官補代理も決まっていない。
 「議会から『早く決めろ!』とせっつかれるのを待って、意中の人物を滑り込ませるつもりでしょう。恐らくそれは、政権発足直後なら絶対に反対されたであろう超タカ派の人物です。駐韓大使や次官補、次官補代理には、韓国に核を持ち込ませる役割を担わせるのではないでしょうか」(前出・軍事アナリスト)

 今のところ韓国の文在寅大統領は、米軍の核持ち込みを南北間の平和構築を不可能にするとして拒否している。この障害をどうやって取り除くつもりなのか。
 「文大統領は北朝鮮への人道支援を決めるなど、北朝鮮包囲網を堂々と破り始めました。中ロよりよほど北朝鮮寄りなのです。これにはトランプ大統領は相当頭に来たようで、米韓FTAの破棄を命じています。北朝鮮に続き、韓国に対しても経済制裁に乗り出したわけです。こうしてジワジワと攻め立て、韓国への核持ち込みを認めさせるハラなのです。韓国内に核を持ち込めば、南北間には“相互確証破壊”が出来上がります。つまり北朝鮮の核を“使えない核”にしてしまうのです。しかし核不拡散条約がある以上、米国議会は許しません。そこで代わりに米国が提案すると思われるのが『核シェアリング』です」(同)

 核シェアリングとは、米国の開発した核兵器を韓国国内に置いて米国が管理するというもので、旧ソ連を封じ込めるためにNATOで行われた方式だ。韓国に核シェアリングが提案されれば、トランプ大統領は日本にも同様の問題を突き付ける可能性が出てくる。
 「先般、石破茂元防衛相がテレビ番組の中で『非核三原則』の問題に言及しています。石破氏は『米国の核の傘で守ってもらうと言いながら日本国内に置かないという議論は正しいのか』とまで言っている。恐らく日米間の水面下では“日本への核持ち込み”が机上に乗っているのではないかと思われるような発言です。安倍首相も10月8日に出演したネットテレビの番組で『あらゆる手段で圧力を高めていくから、状況は緊迫していく』と発言しました」(政治ジャーナリスト)

 北朝鮮の朝鮮中央通信が9月21日、在日朝鮮人のグループが金正恩委員長に建国69周年を祝う手紙を送ったことを『在日本朝鮮人祝賀団メンバーによる手紙』として報じた。「列島を核で沈めるぞ!」と脅している日本から“お祝い”が寄せられたわけだ。こうした勢力が国内にある以上、日本にも「相互確証破壊」は必要なのではないかと思えてくる。

 とはいえ「非核三原則」とは「日本は核を持たず、作らず、そして持ち込ませず」というものだ。この三原則を一時凍結し「持ち込み」は認めるとなれば、安保法制の見直し以上に国論を二分した大激論になる。
 「本来、核を持たずに“核保有国北朝鮮”との交渉などできるはずないのです。日本は北朝鮮への経済制裁において、もうやるべきことは何もありません。そこで『核シェアリング』を持ち出せば『相互確証破壊』の効力が生じるだけでなく、日本の核武装論者(核を作り持つ)を抑制するにもベストです。ただし、これも簡単な話ではない。米軍の核が日本本土に置かれるとなると、何よりも中国が黙っていないでしょうからね」(同)

 11月上旬に予定されているトランプ大統領の日中韓を含むアジア歴訪。ここが重要な“決断の場”になるのは間違いない。