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地球の地磁気を観測している欧州宇宙機関(ESA)の人工衛星SWARMが、地球の電離層で発生している超音速のプラズマジェット流の存在を裏付ける内容の観測に成功しています。このプラズマジェット流は地球の大気圏の上部に存在し、大気の温度を最大で約1万度にまで加熱する働きがあります。

Supersonic plasma jets discovered / Swarm / Observing the Earth / Our Activities / ESA

http://www.esa.int/Our_Activities/Observing_the_Earth/Swarm/Supersonic_plasma_jets_discovered

この研究結果はカナダで開催された「Swarm Science Meeting」において、カルガリー大学の研究チームによって発表されたもの。研究チームは3機の人工衛星からなるSWARMを用いて、大気圏上層で発生するとされていた巨大な膜状の電流層の観測に成功しました。この電流は最大で1テラワットの電力を上部層に移動させる働きがあるとのことで、これは熱波に襲われて電力消費量が増大したニューヨーク一帯で消費される電力の30倍にもおよぶ規模だそうです。



この領域に、太陽風と地球の地磁気を原因とする大きな電流が存在していることは100年以上前にノルウェーの物理学者であるクリスチャン・ビルケランドによって予言されていました。ビルケランドは、1913年に宇宙空間が高速の電子やイオンで満ちていることを予測しており、1970年になって人工衛星を用いた直接観測により、この電流「ビルケランド電流」の存在が確認されていました。

そして今回のSWARMを用いた観測によると、このビルケランド電流は地球が持つ巨大な電界に関連していることが確実となっているとのこと。カルガリー大学のビル・アーチャー氏は「SWARMによる観測データを用いて、我々はこの強い電流が超音速のプラズマジェット流を生みだしていることを発見しました」と語っています。



アーチャー氏によると、このプラズマジェット流は電離層の温度を最高でセ氏1万度にまで上昇させ、化学組成を変化させる働きがあるとのこと。また、これにより電離層に上昇流が生まれ、宇宙からのエネルギーを受けることで大気圏物質が宇宙に放出されることにもつながっているとしています。



同じくカルガリー大学のデヴィッド・クヌードセン氏は、「この発見は『電位』に関する知識を私たちに与えてくれ、地磁気と電離層によって生みだされるビルケランド電流に関する理解を深めてくれます」と発見の意義について語っています。

SWARMは2013年に打ち上げられた3機の人工衛星からなる観測システムで、高度460kmと530kmの地球周回軌道に乗って観測を行っています。SWARMには地磁気を計測するセンサーの他に電界を計測する機器が搭載されており、プラズマの密度やドリフト、速度を計測することが可能です。



SWARMは地球内部から生まれる地磁気と、大気圏上層の磁気圏やプラズマの関連性を理解する観測を可能にする人工衛星。今後どのような発見がSWARMによって実現されるのか、興味深いところです。