SurfaceやiPhoneなどモバイル全盛時代の源流 モバイルのカンブリア記「PDA」時代を探る【Turning Point】
現在のモバイルシーンは、スマートフォンを主流に普及が進んでいます。
しかし、モバイル=スマートフォンと言うほど認識が定着した以前には、様々なモバイル機器が登場して利用されていました。
今回は、その歴史を振り返ります。
モバイルという概念が一般の人に生まれてきたのは、電子手帳の登場と言ってもよいかもしれません。
電子手帳は、辞書機能、電卓機能に加えて、PIM機能(予定表、連絡先、メモ)が保存できるようになり、紙の手帳代わりの活用がされ始めました。
この時代は、まだ電子辞書の本体にデータを保存するだけのローカルな活用方法でした。
その後、ネット接続が可能なPDA(パーソナルデジタルアシスタント)が1990年代に登場することで、データをインターネット上でやりとりすることが可能になり、今のスマートフォンの原型となります。
さて、そのPDAも登場した初期は、本体に通信機能を持っていませんでした。
PDA本体に通信カードを内蔵させることでインターネット通信をする方式がほとんどでした。
当時は、携帯電話も登場し始めで、十分には普及していない時代です。
したがってモデムカードを内蔵させることにより、一般電話回線を使った通信が行われていました。
一般電話回線は、時間毎の課金となるため、長時間の接続料金は高額となる時代でもありました。
一部のユーザーは、携帯電話の接続カードとケーブルを利用して、携帯電話の回線を利用して通信も行っていました。
しかし、こうした方法は、通信速度も遅く、料金もパケット単位の課金となり高額でした。
ところが、
そんなPDA時代を一気に変えるエポックメイキングなネット接続方法が登場しました。
PHS(パーソナルハンディフォン)のネット接続を利用した定額通信プランが導入されたのです。
今では当たり前のように利用されている定額通信ですが、当時としては画期的なプランでした。
最初の定額制としては、2004年にウィルコムが通称「京ぽん」と呼ばれる音声通話用モデルでのフルブラウザ定額制としての登場でした。
その後、「AIR-EDGE(エアーエッジ)」と呼ばれるサービスが登場。
さらに、AIR-EDGE対応カードがリリースされ、NTTドコモ(旧NTTパーソナル)によるPHSの通信定額カードもリリースされるなど、選択肢が広がっていきます。
こうして定額制の通信はPDAで大きく活用されるようになり、PDAユーザーのインターネット利用は大きく前進します。
当時のPHSの定額通信は、32kbpsから256kbps程度の速度でした。
現在のLTE通信に比べると、はるかに低速です。
それでも、当時のネット事情を考えると、使い放題で使えるメリットは大きく、PDAがモバイルでのネット接続機器として利用されるようになったのです。
PDAモデル例をいくつか紹介します。
シグマリオン3
NTTドコモから発売されたNEC製のシグマリオン3。
NECからはモバイルギアというブランドのPDAが発売されていましたが、NTTドコモの携帯・PHSと接続して使用する製品としてリリースされたのが、シグマリオンシリーズです。その3代目となるシグマリオン3は、ブラインドタッチの入力可能なミニキーボード、TFT65536色で解像度800×480のワイドVGAディスプレイ、OSはWindowsCE.NET 4.1と、当時のノートパソコン並みに活用できるPDAでした。
ハイブリッド型の通信カード
当時、NTTドコモから、PHS通信と無線LANの両者が使えるハイブリッド型のコンパクトフラッシュ通信カードが発売されて、使い勝手もあがりました。
MobileGear for DoCoMo
MobileGear for DoCoMoの携帯電話通信用のケーブル
シグマリオン登場以前のMobileGear for DoCoMoは、携帯電話通信用のケーブルが同梱されており、携帯電話での通信も可能でした。モノクロディスプレイながらも、乾電池駆動のため、予備電池を持ち歩けば、バッテリー切れの心配がなく、活用できました。
Lunux Zurus
電子手帳のブランドとして人気だったザウルス(シャープ)も、PDA機能を搭載したLunux Zurusをリリースしていました。OSとしてリナックスを搭載したことでエンジニアにも注目され人気を集めました。こちらもPCのように活用できるモデルでした。
写真では、PHSカードの代わりに、無線LANカードを挿している例です。
jornada 680
HP(当時、ヒューレットパッカード)からは、jornada(ジョルナダ)シリーズがリリースされました。NECのモバイルギアより小型ながらユーザーからの評価も高い実用的なキーボードを搭載したモデルでした。Windows CE H/PC Pro 3.0を搭載していました。
iPAQ H3630
iPAQ h2210
パームサイズ型のPDAもリリースされました。コンパックよりリリースされたiPAQシリーズは、スタイラスペンによる入力するスタイルで、手軽なPDAとして人気でした。
iPAQ H3630は、Pocket PCを搭載した初代iPAQ。iPAQ H3630は、通信カード用のスロットを搭載していませんでしたが、オプションの「ジャケット」を装着することで、通信カードの利用が可能とするなど工夫をこらした高機能さが人気を集めました。iPAQ h2210は、Pocket PC 2003を搭載。
このように1990年代から2000年初頭にかけて、PDAと通信カードによるネット接続は、多くのモバイルユーザーにより盛んに行われました。各モデル対応のアプリケーションも開発、公開されて、通信、マルチメディアと幅広く利用されていました。
このときの活用スタイルが、現在のスマートフォンのベースとなっていることは間違いないと思われます。
PDAは、その後、ネットサービス展開が時期尚早だったこともあり、終息を迎えます。
当時のPDAモデルは、タッチ操作モデル、キーボードモデルなど、多様なモデルが登場し、さながらモバイルのカンブリア記を思わせるほどでした。
当時のPDAモデルが、現在のSurfaceやYogaBookなど、先進のノートPCや、iPhoneに影響を与えたこと、進化源流になったことは間違いないでしょう。
こうしたチャレンジと時代を変えるエポックな活動が、その後のSNSやクラウドなどのネットサービスと、高速通信と音声通話に対応したスマートフォンという現在の隆盛に繋がっているのです。
伊藤浩一
しかし、モバイル=スマートフォンと言うほど認識が定着した以前には、様々なモバイル機器が登場して利用されていました。
今回は、その歴史を振り返ります。
モバイルという概念が一般の人に生まれてきたのは、電子手帳の登場と言ってもよいかもしれません。
電子手帳は、辞書機能、電卓機能に加えて、PIM機能(予定表、連絡先、メモ)が保存できるようになり、紙の手帳代わりの活用がされ始めました。
この時代は、まだ電子辞書の本体にデータを保存するだけのローカルな活用方法でした。
その後、ネット接続が可能なPDA(パーソナルデジタルアシスタント)が1990年代に登場することで、データをインターネット上でやりとりすることが可能になり、今のスマートフォンの原型となります。
さて、そのPDAも登場した初期は、本体に通信機能を持っていませんでした。
PDA本体に通信カードを内蔵させることでインターネット通信をする方式がほとんどでした。
当時は、携帯電話も登場し始めで、十分には普及していない時代です。
したがってモデムカードを内蔵させることにより、一般電話回線を使った通信が行われていました。
一般電話回線は、時間毎の課金となるため、長時間の接続料金は高額となる時代でもありました。
一部のユーザーは、携帯電話の接続カードとケーブルを利用して、携帯電話の回線を利用して通信も行っていました。
しかし、こうした方法は、通信速度も遅く、料金もパケット単位の課金となり高額でした。
ところが、
そんなPDA時代を一気に変えるエポックメイキングなネット接続方法が登場しました。
PHS(パーソナルハンディフォン)のネット接続を利用した定額通信プランが導入されたのです。
今では当たり前のように利用されている定額通信ですが、当時としては画期的なプランでした。
最初の定額制としては、2004年にウィルコムが通称「京ぽん」と呼ばれる音声通話用モデルでのフルブラウザ定額制としての登場でした。
その後、「AIR-EDGE(エアーエッジ)」と呼ばれるサービスが登場。
さらに、AIR-EDGE対応カードがリリースされ、NTTドコモ(旧NTTパーソナル)によるPHSの通信定額カードもリリースされるなど、選択肢が広がっていきます。
こうして定額制の通信はPDAで大きく活用されるようになり、PDAユーザーのインターネット利用は大きく前進します。
当時のPHSの定額通信は、32kbpsから256kbps程度の速度でした。
現在のLTE通信に比べると、はるかに低速です。
それでも、当時のネット事情を考えると、使い放題で使えるメリットは大きく、PDAがモバイルでのネット接続機器として利用されるようになったのです。
PDAモデル例をいくつか紹介します。
シグマリオン3
NTTドコモから発売されたNEC製のシグマリオン3。
NECからはモバイルギアというブランドのPDAが発売されていましたが、NTTドコモの携帯・PHSと接続して使用する製品としてリリースされたのが、シグマリオンシリーズです。その3代目となるシグマリオン3は、ブラインドタッチの入力可能なミニキーボード、TFT65536色で解像度800×480のワイドVGAディスプレイ、OSはWindowsCE.NET 4.1と、当時のノートパソコン並みに活用できるPDAでした。
ハイブリッド型の通信カード
当時、NTTドコモから、PHS通信と無線LANの両者が使えるハイブリッド型のコンパクトフラッシュ通信カードが発売されて、使い勝手もあがりました。
MobileGear for DoCoMo
MobileGear for DoCoMoの携帯電話通信用のケーブル
シグマリオン登場以前のMobileGear for DoCoMoは、携帯電話通信用のケーブルが同梱されており、携帯電話での通信も可能でした。モノクロディスプレイながらも、乾電池駆動のため、予備電池を持ち歩けば、バッテリー切れの心配がなく、活用できました。
Lunux Zurus
電子手帳のブランドとして人気だったザウルス(シャープ)も、PDA機能を搭載したLunux Zurusをリリースしていました。OSとしてリナックスを搭載したことでエンジニアにも注目され人気を集めました。こちらもPCのように活用できるモデルでした。
写真では、PHSカードの代わりに、無線LANカードを挿している例です。
jornada 680
HP(当時、ヒューレットパッカード)からは、jornada(ジョルナダ)シリーズがリリースされました。NECのモバイルギアより小型ながらユーザーからの評価も高い実用的なキーボードを搭載したモデルでした。Windows CE H/PC Pro 3.0を搭載していました。
iPAQ H3630
iPAQ h2210
パームサイズ型のPDAもリリースされました。コンパックよりリリースされたiPAQシリーズは、スタイラスペンによる入力するスタイルで、手軽なPDAとして人気でした。
iPAQ H3630は、Pocket PCを搭載した初代iPAQ。iPAQ H3630は、通信カード用のスロットを搭載していませんでしたが、オプションの「ジャケット」を装着することで、通信カードの利用が可能とするなど工夫をこらした高機能さが人気を集めました。iPAQ h2210は、Pocket PC 2003を搭載。
このように1990年代から2000年初頭にかけて、PDAと通信カードによるネット接続は、多くのモバイルユーザーにより盛んに行われました。各モデル対応のアプリケーションも開発、公開されて、通信、マルチメディアと幅広く利用されていました。
このときの活用スタイルが、現在のスマートフォンのベースとなっていることは間違いないと思われます。
PDAは、その後、ネットサービス展開が時期尚早だったこともあり、終息を迎えます。
当時のPDAモデルは、タッチ操作モデル、キーボードモデルなど、多様なモデルが登場し、さながらモバイルのカンブリア記を思わせるほどでした。
当時のPDAモデルが、現在のSurfaceやYogaBookなど、先進のノートPCや、iPhoneに影響を与えたこと、進化源流になったことは間違いないでしょう。
こうしたチャレンジと時代を変えるエポックな活動が、その後のSNSやクラウドなどのネットサービスと、高速通信と音声通話に対応したスマートフォンという現在の隆盛に繋がっているのです。
伊藤浩一