電気自動車は以前よりも普及しているが…

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 2010年11月、トヨタがEVやハイブリッド自動車など次世代環境対応車を2015年までに11車種を投入することを発表した。それから5年。トヨタが目標年に定めた現在、ハイブリッド車・プラグインハイブリッド車を含めて電気自動車はかなり普及した。それでも世間で走っている大半の自動車はガソリン車が大半を占める。

 電気自動車の価格はいまだガソリン車に比べれば高い。ガソリン代が割安になるというメリットを差し引いても、庶民にとって電気自動車は高嶺の花だ。特に地方都市では、いまだガソリン車が主力を占めている。

 その理由は、電気自動車の航続距離にある。車種にもよるが、ガソリン車が一回の給油で走行できる距離は300キロメートルを超える。ガソリンを使用しない電気自動車は、一回の充電で100キロメートル走るのがやっと。東京や大阪といった都心部なら、ちょい乗りといった使い方もあるが、自動車社会といわれる地方都市では、役に立たない。

ガソリンスタンドがない市町村も…

 他方で、地方都市ではガソリンスタンドの数は激減している。その理由は、なによりも地方都市の人口減少が大きい。地方都市では一人一台が当たり前になっているとはいえ、そもそも人口が激減している。人口減はすなわち自動車台数減に直結する。もうひとつの理由は、ガソリンスタンドの後継者難だ。

 地方都市のガソリンスタンドは個人事業主が多くを占める。跡を継ぐ家族・親族がおらず、店をたたむケースが後を絶たない。経産省の調査では、平成26年3月末時点でガソリンスタンドが3か所以下の市町村は283あり、そのうち10市町村は存在すらしない。

 ガソリンスタンドの廃業に追い打ちをかけたのは、2010年に施行された改正消防法だ。ガソリンスタンドは地下に貯蓄タンクが埋設されているが、改正消防法では埋設してから40年以上経過したタンクには漏洩対策を施さなければならない義務を課した。漏洩対策工事には、2000万円近い費用が伴う。地方都市では、「2000万円出して対策工事をしても引き合わない」という諦観していた経営者が多く、自主廃業を選択した。

 地方都市は自動車が生活必需品。それだけに自動車の燃料補給基地でもあるガソリンスタンドは、水道や電気といった生活インフラになっている。また、ガソリンスタンドは自動車の燃料を補給するだけの場でもない。業界紙関係者はこう話す。

「寒冷地では暖房器具やお湯を沸かす燃料もガソリンスタンドが供給しています。また、農業が盛んな地では、トラクターなどの燃料も必要になります。普段はそれほど意識しないが、地方都市にとってガソリンスタンドはなくてはならないものなのです」

 地域のガソリンスタンドを死守するため、自治体が税金を投じて経営するスタンドも出てきた。しかし、地方都市は財政が苦しく、そう長く公営スタンドを維持できないだろう。

 経済産業省幹部は「地方のガソリンスタンドは生活基盤。電気自動車の普及を進めても、ガソリンスタンド過疎地が増やさないようにしなければならないし、地方都市の生活に支障が出ないような議論をする」と言うが、地方の過疎化は進む一方で“ガソリンスタンド過疎地”解決の糸口は見えない。

(取材・文/小川裕夫)