7日から開幕した明治安田生命J1リーグでは、熱戦に水を差すかのような「誤審と思しき判定」が続出しました。

ガンバ大阪対FC東京の一戦では、宇佐美選手がドリブルで持ち込んだ場面において、ゴールラインを割ったかのように見えたもののプレーが続行され、ガンバの先制点につながりました。試合映像では主審が一旦はコーナーキックであるかのような手振りをしており、その紛らわしさを考えると、FC東京の選手がプレーを中断してしまったのも致し方ないプレーでした。

＜参考：ガンバ大阪対FC東京戦、ガンバの先制点＞


また清水エスパルス対鹿島アントラーズの試合においては、ゴールに絡む複数の「誤審と思しき判定」がありました。後半14分の鹿島・遠藤選手の得点シーンでは、ボールがゴールラインを越えたかどうか微妙なものをゴールと判定しました。しかし、一方で後半36分には、鹿島・金崎選手のシュートを清水の選手が腕でブロックしたように見える場面がありながら、コチラは得点機会阻止とはみなさず、レッドカードを出すことも、鹿島にPKを与えることもありませんでした。

＜参考：清水エスパルス対鹿島アントラーズ戦、ハイライト動画＞


こうした「誤審と思しき判定」が下されるたび、選手は抗議し、サポーターは怒ります。そして審判員のミスを断罪します。確かに審判員のミスは少ないにこしたことはありません。ゼロなら理想的です。しかし、仮に審判員の判断にミスがあったとしても、判定は受け入れなければいけないものです。「間違った判定は受け入れられない」ではなく「間違った判定でも受け入れる」という姿勢こそが、あるべき姿です。

そもそも審判員の判断を仰ぐまでもなく、そのプレーの事実については関与した選手たちが一番よくわかっているはずです。ゴールラインを割ったと思えば「ラインを割った」と宣言すればよく、手でブロックしたと思えば「意図的に手で防ぎました」と言えばよい。「わからない」なら意見を持ち寄り、話し合いで結論を出せばよい。それで円滑に事が運ぶなら審判員が判定を下す必要はありません。数は少ないながらも、ゴルフのように競技規則をプレーヤー自らで施行する競技もあるわけですから。

ところが実際には判定によって得をした側はダンマリを決め込みます。損をした側と一緒になって、口角泡を飛ばして審判員に抗議することはまずありません。「正しい判定」を望むのではなく、自分の利益を望むのです。あまつさえ、ワザと転んだりして審判員を欺こうとすることさえあります。そのようなオオカミ少年だらけの状況にあって、もし審判員がいなかったなら。あらゆる場面が「ゴールだ」「いやゴールじゃない」と水掛け論の応酬になることでしょう。そして、水掛け論になるからこそ、最終判断を下す第三者が必要なのです。最終判断に対してさらなる水掛け論を挑むのは不毛に過ぎます。

清水対鹿島戦の手によるブロックも、競技規則において反則とされるのは「ボールを意図的に手または腕で扱う」行為であり、手で触ったことのみで反則となるわけではありません。意図があったかなかったかが問題です。もし清水側から「意図的に手でブロックしました」という主張があれば判定は覆ったでしょう。競技規則にも「プレーを再開する前、または試合を終結する前であれば、主審は、その直前の決定が正しくないことに気づいたとき、または主審の裁量によって副審または第4の審判員の助言を採用したときのみ、決定を変えることができる」とありますから。

結局は、ゴネ得・ダンマリ得を狙う精神が、事実と異なる「誤審と思しき判定」を生み出すのです。ゴネ得・ダンマリ得を狙うオオカミ少年たちに「最終決定」を下すために審判員がいるのだということを、すべてのプレーヤーには忘れないでいただきたいもの。そして、自分たちが損をした判定だけでなく、得をした判定についても、事実と異なる点があるなら異議を申し立ててもらいたいものです。両チームの認定する「事実」が同じものであり、それが判定と異なっているなら、審判員も「直前の決定が正しくなかった」ことに気づくでしょうから。

（文＝フモフモ編集長　http://blog.livedoor.jp/vitaminw/）