【ラーメン】サイドメニューは、だし巻き卵!? “元・寿司職人”が店長の個性派ラーメン店実食レポ

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あの「小僧寿し」が新業態としてラーメン店をオープン――昨年11月29日に発表されたニュースを知り、驚いた人も多いことだろう。「小僧寿し」といえば持ち帰り寿司の代表的な存在である。しかし近年は回転寿司やスーパーで販売されるパック寿司の人気などに押され苦戦。店舗数の減少 と赤字決算を余儀なくされていた。

[写真]元・寿司職人が作る! ラーメン&料理画像(21点)

そんな中、新たに打った次の一手がラーメン店「麺や小僧」の展開だ。しかも、なんと“寿司職人”がラーメンを作るという。一体どんな味なのか? 職人ならではのメリットはあるのだろうか? 実際に店舗へお邪魔し、ラーメンを食べながら店長のお話も聞いてみた。

■寿司職人歴20年(!)の店長が作るラーメン

今回取材に訪れたのは東京都練馬区にある光ヶ丘店。昨年12月12日にオープンしたばかりで、「麺や小僧」としては2号店になる。

以前は「小僧寿し」の店舗だったのを改装したといい、座席数はカウンターが8席、テーブルが14席。全体的に白を基調とした清潔感あふれる店内だ。

カウンター席の向こう側で調理を仕切るのは、店長の前川康雄さん。寿司職人としてのキャリアは20年近くになるという。昨年秋にラーメン事業の開始を告げられた際、「おもしろそうだからやってみよう」と真っ先に手を挙げた職人のひとりだ。調理の手際の良さと、よく使い込まれた柳刃包丁から職人らしさが伝わってくる。

■いよいよ実食、気になる味は?

さて、いよいよラーメンの実食にかかろう。まず一番オーソドックスな看板メニューの「らーめん」(574円+税)。

ぱっと見た感じから分かるように、スープは日本人におなじみのトンコツベース。そこに近年のトレンドとなっている鶏白湯(パイタン)スープを50:50の割合でブレンドした、「麺や小僧」オリジナルのものだ。麺はスープが程よく絡む細麺。“トンコツ+細麺+替え玉アリ”という基本スタイルは、相当数におよぶ博多ラーメンを研究した結果だという。

スープは見た目ほど匂いがキツくなく、味もトンコツベースとは思えないような上品さ。トンコツの臭みを徹底的に抜いてコクと旨味だけ取り出し、それを鶏白湯がさらに洗練させている。

正直、チェーン店で食べられる600円クラスのラーメンとしては標準以上の味だと感じた。細麺のノド越しの良さも手伝ってスルスルとお腹に入っていく。具材は平均的なチョイスで、あくまで「スープと麺で勝負!」といった一品だ。

■さらに実食!

「麺や小僧」のメニューにある各種ラーメンは、すべてそのトンコツ+鶏白湯スープがベースになっている。加えるタレと具材の変更によりバリエーション豊かなメニューを実現しているわけだ。

「特製魚介らーめん」(944円+税)もベースとなるスープに濃厚な魚介タレが加わったことで味の奥行きを格段に増している。これまた魚介特有の臭みがないのも特徴で、女性客や小さいお子さんのいるファミリー層にも好まれる味と言えそうだ。

■元・職人を擁するメリットとは?

ここまで読んできて「結局チェーン本部のメニュー作りがうまいのであって、わざわざ店舗に職人を置く意味がないじゃないか」と感じた人もおられることだろう。しかし実は職人ならではのメリットもあるのだ。

まず大きなメリットは純粋な“料理人としての技量”。ラーメン事業を展開するにあたって寿司職人たちが講習を受けた際 、彼らは想像以上のスピードでラーメン作りを習得してしまったという。

また、職人として鍛えてきた味覚も一般人よりはるかに鋭い。

ラーメン業界に限らず、飲食店は同じチェーンでも支店ごとに、同じ支店でも日ごとに味がブレることは珍しくない。記者はこれを「マニュアルも万能じゃないから仕方ない」「今日は不慣れなアルバイトが調理担当か…」と半ば諦めて受け入れてきたが、「麺や小僧」に関しては他チェーンよりも高いレベルで“味の安定感”が期待できるかもしれない。

次に、同じく料理人としてのキャリアが関係することだが、サイドメニュー の充実も見逃せない。「麺や小僧」の店長はドリンク類やサイドメニューについて一定の裁量権を与えられており、職人としての技を振るうチャンスが多いからだ。

■ここ、本当にラーメン屋? 驚きのサイドメニュー

今回取材した光ヶ丘店の場合、公式サイトには記載されていない「だし巻き卵」(194円 +税)がメニューとして存在する。実際に食べさせてもらったが、ふわっとした食感と絶妙な甘さはまさしく“寿司職人の作っただし巻き卵”だった。

前川店長は他にもアルコール類を充実させ、自家製のいかの塩辛など、ちょっとした居酒屋のような突き出しも用意している。「この店は立地的に土日こそファミリー層でにぎわいますが、それ以外の客入りがまだ充分とは言えません。そこで“飲みたい人”も取り込むための工夫をしたいのです」と語る(※注:サイドメニューの有無は店舗ごとに異なります)。

店長のアイディアが本部に認められれば正式メニューに昇格する場合もあるとのことで、元・寿司職人たちもやりがいがあるだろう。これはアルバイトとパートだけで構成された他チェーンでは真似できないことだ。

小僧寿し」がラーメン事業に乗り出し、1号店の出店からおよそ2ヶ月。現時点で7店舗ある「麺や小僧」は今年6月までに50店舗の出店を目指しており、本当の意味で真価が問われるのはそこからだろう。参入障壁は比較的低いものの、最激戦区のひとつと言えるラーメン業界。持ち帰り寿司の老舗は、“職人の腕”を武器にどこまで戦えるか。大いに期待させてもらいたい。