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●大型アップデートが終了したWindows 8.1○大型アップデートが終了したWindows 8.1

2014年8月12日(以下、すべて現地時間)、「August Updates」が公開された。同年4月2日にリリースした「Windows 8.1 Update」に続く第2弾アップデートと目されたため、公式発表以前は「Windows 8.1 Update 2」と呼ばれていたものである。だが、「Windows 8.1 Update 2 = August updates」ではない。加えてドラスティックな変更は見送られ、バグフィックスを含む包括的なアップデートにとどまっている。

そもそもAugust updatesに関する発表は、公式ブログの1つ「Blogging Windows」で同年8月5日に公開した記事が始まりだ。執筆したBrandon LeBlanc氏は「我々は多くのフィードバックに素早く対応するため、定期的な更新でWindowsに改善を提供し続けてきた。そのため(Windows 8.1 Updateに続いて)今回も既存の月例アップデートプロセスを使用する。改めて『Windows 8.1 Update 2』を提供する予定はない」と述べている。冒頭で"イコールではない"と述べたとおり、Windows 8.1 Update 2は事実上キャンセルされたのだ。

この背景には、以前から噂されていたスタートメニューの復活が、現在開発中の「Windows 9(仮称。開発コードは"Threshold")」へ先送りしたことが大きい。2014年4月に開催した開発者向けカンファレンス「Build 2014」で公開した開発途中のWindows 9には、Windows 7以前のスタートメニューがデスクトップに復活し、ライブタイルのピン留めが可能になっていた。さらにWindowsストアアプリがウィンドウ化し、Windows 8から強固にプッシュしていたモダンUIを押し退けた形となる。

Steve Ballmer氏がMicrosoftのCEO(最高経営責任者)だった時代、彼は「Rapid Release」というキーワードを掲げ、OSのリリース頻度を高める方針を明らかにした。確かBuild 2013で発言したと記憶しているが、具体的には更新プログラムを集めたService Packではなく、Windows 8.1 Updateのようにマイナーアップデートを増やすという方向性を示したものである。LeBlanc氏が記事で述べているとおり、2014年5月にはWindowsストアのデザインを一新し、翌6月にはOneDriveの同期機能を改善した。

このようにWindows 8.1 Update以降、以前のWindowsでは希だったマイナーアップデートが繰り返されてきたのである。つまり、August Updatesは単なる"8月の定例アップデート"。Service Packなどの大規模アップデートではないと述べるのが正しいだろう。

この方針転換は前述したRapid Releaseもさることながら、サポートが終了したWindows XPからの移行先としてWindows 7を選択する個人ユーザーや企業が多いことを踏まえて、次のWindows 9に開発リソースを大きく割いているのではないだろうか。

噂レベルだが、Windows 9は2015年春のリリースを目指しており、2014年の秋頃にはパブリックプレビュー版をリリースも考慮しているという。そもそもMicrosoftはWindows/Windows RT/Windows Phoneという3つのクライアント向けOSを1つに統合することを明らかにしている。そのため、Windows 8.1 Update 3と呼ばれるアップデートもキャンセルし、August Updatesによる改善は最小限に抑えたのだろう。

現時点で今後の方向性は予見できないが、少なくともWindows 8.1に関しては定例アップデートにとどまり、Service Packのようにリリースタイミングを予測することは難しくなった。モダンUIに関する改善やデスクトップの強化も、Windows 9まで待たなければならないのは確実である。

なお、日本マイクロソフトに確認したところ正式名称は存在せず、強いていえば、冒頭で紹介した記事のタイトル「August updates for Windows 8.1 and Windows Server 2012 R2」だと回答した。

●August Updatesは何が違う?○August Updatesは何が違う?

簡単ながらもAugust Updatesに加わった変更点を確認するが、その前に適用方法を簡単に紹介する。August Updatesに割り当てられたナレッジベース番号は「KB2975719」。こちらをWindows Updates/Microsoft Update/WSUS(Windows Server Update Services)やMicrosoftダウンロードセンターから入手し、適用する仕組みだ。

Microsoftダウンロードセンターの説明によれば、August Updatesは2つの更新プログラムに分かれている。64ビット向けの「Windows8.1-KB2975719-x64.msu」「Windows8.1-KB2990532-x64.msu」は前者が169.3MB、後者が1.7MB。32ビット版の「Windows8.1-KB2975719-x86.msu」「Windows8.1-KB2990532-x86.msu」は前者が100.2MB、後者が1.1MBだ。

注意しなければならないのは、Windows Update経由で適用する場合、オプションに属している点だ。重要以外は自動的に選択(インストール)されないため、August Updateのインストールを望む場合、Windows Updateの手動操作が必要となる。

前もって通知されていたように、August Updateをインストールしても外観的に大きな変化は見られない。そもそも2014年4月のWindows 8.1 Updateを適用しても、バージョン番号(およびビルド番号)は変化せず、Service Packの形状ではないため、CSDVersionやServicePackMajorVersionといった情報も参考にできないのである。

さて、August Updateは前述の公式ブログで3つの改善点が加わることが明らかにされていた。1つめの「高精度タッチパッドの改善」は、3つの新しいエンドユーザー向け設定を追加し、タッチパッドから手を離した状態でマウスが接続されている場合でも、タッチパッドによる右クリックやダブルタップ、ドラッグの操作を可能にするというもの。タッチパッドを備えるPCを筆者が所有していないが、August Updateをインストールした初代Surface Proの場合、「マウスのプロパティ」に新たな設定項目は確認できなかった。

2つめの「Miracast(ミラキャスト)レシーバー」は、IHV(独立系ハードウェアベンダー)のデバイスドライバーや、OEMのデバイスドライバー用にWi-FiダイレクトAPIを公開することで、32&64ビット版Windows 8.1をインストールしたPCが、Miracastレシーバーとして動作する。

そして3つめの「SharePoint Onlineサイトの連携改善」は、"常にサインインする"というチェックボックスを選択した際に、サインインプロンプトを最小化して素早くアクセス可能にするというもの。なお、Windows 8.1とは関係ないが、Windows Server 2012 R2向けには「パフォーマンスの信頼性と改善」が加わった。

以上2つの変更点はいずれもデバイスや環境が必要なため変化を確認できないが、ナレッジベースの解説によれば、さらにMP4形式ファイルからGPSデータを参照するためのランタイムとAPI追加や、ルーブル通貨の入力と表示のサポート。モダンUIのWindows Updateに、更新プログラムの最終チェック/インストール日時が加わった。ちなみに「保守と管理」の原文は「Update and Recovery」である。

そして、Internet Explorer 11は古いActiveXコントロールを無効化する設定が加わっている。こちらは設定はダイアログなどに変化を加えるものではなく、HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Policies\ExtキーにDWORD値「VersionCheckEnabled」を作成して、ブロックの有無を制御する仕組みだ。たとえばブロックが有効な状態で古いActiveXコントロールの読み込みを試みると、通知バーによる警告が現れる。

ただし同機能は当初、8月12日から有効になる予定だったが、9月9日まで猶予を設けている。この点に関して日本マイクロソフトに取材したところ、米国本社内で猶予期間を設けた方が分かりやすい、という判断で変更したと回答した。

以上、August Updateは7つの改善が加わった小規模なアップデートである。今後もこのスタイルを続けるのか、Windows 9にService Packが提供されないのか不明だが、少なくとも今後は毎月Windows 8.1に何らかの更新が加わることになりそうだ。

阿久津良和(Cactus)

(阿久津良和)