歴代の日本代表監督にとって、東アジアカップは苦い記憶を呼び覚ますに違いない。

　２００３年の第１回大会は、ホームで開催しながら韓国に優勝を譲った。国内組による編成とはいえ優勝を逃したことで、ジーコへの風当たりは強まった。

　南アフリカＷ杯の４か月前に開かれた２０１０年大会は、岡田武史監督の更迭を求める引き金となった。韓国に完敗しての３位では、言い訳の余地がなかった。

　コンフェデレーションズカップ後の７月下旬に行なわれた大会に、ザックことアルベルト・ザッケローニ監督は国内組だけで臨んだ。

「23人にリストを絞るのは困難だった」とザックは説明し、「すでに力を把握している選手よりも、手元で見てみたい選手を中心に選んだ」と続けた。コンフェデ杯に出場した遠藤保仁、今野泰幸、中村憲、前田遼一らの実績ある国内組は、選出を見送られた。

　指揮官の言葉を噛み砕くと、「手薄なポジションに新しい人材を見つけたい」との思惑が透けて見える。具体的にはセンターバック、ボランチ、１トップだ。

　果たしてザックは、今後につながる人材を見つけることになる。栗原勇蔵、千葉和彦、鈴木大輔、森重真人の４人がテストされたＣＢでは、森重が確かなインパクトを残した。吉田麻也と今野に次ぐ３番手の有力候補として、ＦＣ東京所属の北京世代は代表に定着していく。

　ボランチでは二人の選手が、ザックの関心を惹きつけた。青山敏弘と山口螢だ。23人をふたつに分割したチームでコンビを組み、東アジアカップ後も揃って代表へ招集されることとなる。

　最大の懸案となっている１トップでは、柿谷曜一朗が２試合３ゴールと結果を残した。大迫勇也、工藤壮人、斎藤学も得点を記録し、ブラジルへの“第一次選考”を通過した。柿谷、森重、青山、山口、工藤、豊田陽平らがコンフェデ杯のチームに合流し、８月にウルグアイとのテストマッチが行なわれた。

　宮城スタジアムを舞台とした一戦は、コンフェデ杯と同じ過ちが繰り返された。チャンスを生かしきれず、先制点を許す。反撃の機会を逃し、追加点を奪われる。

　失点の時間帯も相変わらずだ。27分、29分とたたみかけられ、後半開始間もない52分に追加点を与えてしまう。

　この時点で０対３である。アウェイのウルグアイからすれば、すでに大勢は決した。ここからゴールを奪っても、価値は半減する。２点を取ったものの、内容的には完敗である。

　９月にはホームでグアテマラを３対０で下した。東アジアカップを除けば、６月11日のイラク戦以来の白星である。

　続くガーナ戦にも３対１で勝利すると、ＧＫ川島永嗣は「守備でも攻めでも、自分たちの形を取り戻すことが大事だった」と話す。だが、コンフェデ杯以降の〈負の連鎖〉を断ち切ったわけではないのだ。10月に中欧で集合したチームは、セルビアに０対２、ベラルーシに０対１で敗れるのである。

　所属クラブで出場機会の少ない香川真司は、「コンディションだったり、試合の雰囲気だったりとか、やはりどこか入りきれなかったのは事実だと思う」と話した。香川だけでなく吉田も、クラブで出場機会を得ていない。

　１トップに定着しつつある柿谷は、東アジアカップ以降は５戦連続不発だ。彼を含めた連携の向上をザックははかっているが、目に見える変化は乏しい。

　セルビアもベラルーシも、断じて格下ではない。どちらも難しい相手である。ただ、勝利をつかめないばかりかバックアップ層の充実もはかれないとなると、閉塞感はいよいよ高まる。どんよりとした空気が、チーム内には漂っていた。