６月４日のオーストラリア戦でＷ杯出場を決めた日本は、11日にイラク戦との最終予選第８戦に臨む。コンフェデレーショズンカップの第１戦を、４日後に控えたタイミングでのゲームだ。

　日本にとっては消化試合だが、イラクには重要な一戦である。日本を除く４か国は混戦を演じており、彼らもＷ杯出場の可能性を残していた。

　ザックは「コンディションを考えて先発を決める」と話していた。海外組と国内組の違いだけでなく、海外組のなかでもコンディションはまちまちである。累積警告で出場停止の長谷部誠に加え、本田圭佑、吉田麻也らがスタメンから外れたのは、４日後のブラジル戦を見据えたものだった。

「暑さだけでなく強風にも悩まされ、勝たなければいけないイラクには勢いがあった」とザックは振り返る。前線からのプレスがハマらない。ボールに食いついたところで取りきれない。ミスが多い。

　そもそも、モチベーションをかきたてるのが難しい──こればかりはどうしようもないだろう。後半終了間際に岡崎慎司がゴールを奪い、日本はイラクを１対０で振り切る。だからといって、試合後の選手たちは喜びに包まれていない。控え目な笑みをこぼす程度だ。「どんな内容でも勝つことが大事。強豪国はそういう強さを持っている」という長友佑都の肌触りは、この試合の意味を的確に言い当てていた。

　ワールドカップの１年前に開催されるコンフェデレーションズカップ出場には、様々なメリットがある。ピッチ内においては、世界のトップクラスとの対戦を通じてチームの現在地を確認できる。とりわけアジア諸国との公式戦が続いていた日本には、ブラジル、イタリア、メキシコとの真剣勝負はＷ杯への試金石となる。

　ただし、世界との距離をはかるには前提条件がある。日本が正面からぶつかることだ。自分たちの強みを発揮しようとしなければ、本質は押し隠されてしまう。

　ブラジル戦は最悪のシナリオで幕を開ける。開始３分に先制されてしまうのだ。
それも、ネイマールに。サントスで７試合、代表でも２試合連続で無得点に終わっていた背番号10の先制弾は、彼自身はもちろんブラジルを重圧から解放した。

　開始早々に先制したブラジルは、緩急を織り交ぜてゲームを進める。最終的に０対３のスコアへ着地したのは、力関係を考えれば当然かもしれない。

　問題は失点の時間帯である。２点目は後半開始早々の48分で、３点目は90＋３分に与えている。立ち上がりと終了間際は、日本でも“魔の時間帯”として知られている。小学生でも知っているセオリーだ。

　激しい撃ち合いが称賛を集めたイタリア戦も、試合運びはつたない。２点リードした41分に１点差に詰め寄られ、後半開始早々の50分に追いつかれてしまう。その２分後には逆転弾を浴びた。

　69分に一度は同点へ持ち込んだ。３対３とした反発力は認めよう。だが、それも試合を盛り上げたに過ぎない。86分に決勝点を喫した日本は、２連敗でグループステージ敗退が決まった。

　メキシコとの最終戦も、後半の立ち上がりに先制されている。３試合すべてで、日本は同じ過ちを繰り返した。

　イタリア戦、メキシコ戦の失点には、リスタートをきっかけとしたものが含まれている。守備面での課題は、解消される気配が見えない。

　決めきる、という意識も希薄だ。

　１対２で競り負けたメキシコ戦で、最初に決定機をつかんだのは日本である。開始４分の香川の一撃だ。ここで得点を決めていれば、ゲームの行方はまったく違っていた。

　香川だけではない。アジアの枠を飛び出すと、日本の選手は何となくプレーしているように見える。日本人は「切り替える」という表現が大好きだが、決定機を逃しても「次がある」と切り替える。ミスを引きずらないことを大切にするばかりに、「このシュートを決める」という決意がにじんでこないのだ。

　イタリアとの撃ち合いによって、「それなりにできる」といった雰囲気がチームの内外に立ち込めた。だが、リスタートからの失点は依然としてチームを追い詰め、それどころか根本的な問題──失点の時間帯があまりにも悪く、ゲーム運びが難しくなる現状が浮かび上がってきた。

　代表とクラブにかかわらず、強豪と呼ばれる国には共通点がある。勝つべき試合を勝ちきる強さである。

　技術では決して劣っていない。組織力も高い。それでも日本が勝てないとすれば、自分か背負うものへの責任感、一つひとつのプレーへ注がれる意思の強さなどで、対戦相手に劣っていると考えるしかない。つまり、ゲームに向かうための「覚悟」で劣っているのだ。

　Ｗ杯を勝ち抜く覚悟はあるのか──３連敗に終わったコンフェデレーションズカップは、チームだけでなくサポーターやメディアに対しても、そう問いかけていた。