言葉は単なる“道具”じゃない!「言葉の乱れ」の本質
日常生活ではあまり意識することはありませんが、日本語は本来とても情緒的で美しい日本語です。しかし、私たちの会話や文章からその美しさを感じることは、今やほとんどなくなってしまっています。
多くの日本人が忘れて日本語だけが持つ言葉の響きや輝き、やさしさ。『日本語の練習問題』(サンマーク出版/刊)を読むとそれらを思い出すことができるかもしれません。
この本では、日本文学の傑作・名作が練習問題の題材として自在に引用され、その問題を考え、解説を読むことで、日本語本来の美しさに触れることができます。
この本はなぜ企画され、どんな狙いで書き上げられたのか。
著者の出口汪さんにお話をうかがいました。今回は後編をお送りします。
―「言葉の乱れ」についてなのですが、個人的には使う語彙がどんどん減っている気がします。
出口:新しい言葉が生まれたり、外来語が入ったりしてきますから、必ずしも語彙が減っているとは言えないのですが、そういった言葉は一時的に使われては消えていくものがほとんどなんですよね。
それと、僕は必ずしも「言葉の乱れ」に否定的なわけではありません。現代の日本語はどんどん口語に近づいていますし、消えていく言葉もある。つまり、時代が進むにつれて言葉は変わるものなんです。
問題はそこではなくて、言葉を使う側の人間がそれを大切に扱っているかどうかだと思っています。その気持ちがなくなると、言葉は情報伝達や感情を表現するだけの道具になってしまいます。
―では、我々日本人が言葉を大切に思わなくなってしまった原因はどんなところにあるとお考えですか?
出口:やはり、一番大きいのは「名作」に触れなくなってしまったことではないでしょうか。
これは、単に本を読まなくなったということではありません。
今の子どもたちにしても、マンガやゲーム、アニメなどで文章にはたくさん触れているのですが、どれも文字だけでなく絵や音の刺激もあるものです。
普通の子どもなら、本と映像を比べたら、映像の方を選ぶというのは当然のことでしょう。でも、そういうものばかりを観ていると、だんだん日本語を深く扱うことができなくなってしまう。
もちろん、マンガにもゲームにもいいものはあります。ただ、それとは別に名作と言われる文学作品を読んで、美しい日本語に触れる時間も持ってほしいと思います。
―「名作」の中で、特におすすめというものがありましたらご紹介いただけませんか?
出口:それぞれの作家にいいところがありますが、夏目漱石は日本人全員が読むべきだと思っています。言葉に深さと重さがあって、すごい日本語です。
―本書には、日本の名作文学が引用され、その穴埋めをするという「練習問題」の形式になっています。この狙いはどんなところにあるのでしょうか?
出口:こちらから一方的に説明するのではなく、読んでくださった方に自分で日本語の美しさやすばらしさを発見していただきたいという狙いがまずあります。そのうえで美しい日本語の使い方を身につけてもらえたらなおさらいいのですが、それには一定のトレーニングが必要です。それもあってあえて「練習問題」としました。
また、「練習問題」にはそれぞれ解説がついているのですが、僕はその解説こそこの本の命だと思っています。というのも文章の良さというのはある程度訓練を受けた人じゃないとわかりにくい。だから、「練習問題」で引用した名作文学について、その文章の何がよくて、どこが感動を与えるのか、そこにはどんな深い精神世界があるのかを、誰にでもわかるように解説したつもりです。美しい日本語とはひとことで説明できるものではないのですが、問題と解説をセットで読んでいただくことで、その世界にどっぷりと浸かることができるのではないかと思います。
―本書をどのような人に読んでほしいとお考えですか?
出口:日本人であるか外国人であるかに関わらず、日本語を使う全ての人です。
この本一冊で美しい日本語を使いこなせるようになるとは僕自身思っていないのですが、読んでいただければその人なりの発見や気づきがあるはずですし、日本語について意識するきっかけになるのではないかと思います。
また、この本を通じて僕が一番言いたいのは、日本人の心に触れてほしいということです。本当に美しい日本語に浸かることで、自分の中に流れている日本人の精神性や文化、歴史に触れることになります。それはすごく価値のあることだと思っています。
―最後になりますが、読者の方々にメッセージをいただければと思います。
出口:美しい日本語を通して日本人の精神性に触れるためにも、ぜひ感性を研ぎ澄ませて読んでいただきたいです。そうすれば必ずどこかで自分の琴線に触れる瞬間があるはずです。そういう読み方をしていただくと、“読んでよかったな”と思っていただけるのではないかと思います。
日本人にとって日本語は生まれてから死ぬまで使う身近な言葉です。その日本語を見直すことは、人生をもっと豊かにしてくれるのではないでしょうか。
(新刊JP編集部)
多くの日本人が忘れて日本語だけが持つ言葉の響きや輝き、やさしさ。『日本語の練習問題』(サンマーク出版/刊)を読むとそれらを思い出すことができるかもしれません。
この本では、日本文学の傑作・名作が練習問題の題材として自在に引用され、その問題を考え、解説を読むことで、日本語本来の美しさに触れることができます。
この本はなぜ企画され、どんな狙いで書き上げられたのか。
著者の出口汪さんにお話をうかがいました。今回は後編をお送りします。
出口:新しい言葉が生まれたり、外来語が入ったりしてきますから、必ずしも語彙が減っているとは言えないのですが、そういった言葉は一時的に使われては消えていくものがほとんどなんですよね。
それと、僕は必ずしも「言葉の乱れ」に否定的なわけではありません。現代の日本語はどんどん口語に近づいていますし、消えていく言葉もある。つまり、時代が進むにつれて言葉は変わるものなんです。
問題はそこではなくて、言葉を使う側の人間がそれを大切に扱っているかどうかだと思っています。その気持ちがなくなると、言葉は情報伝達や感情を表現するだけの道具になってしまいます。
―では、我々日本人が言葉を大切に思わなくなってしまった原因はどんなところにあるとお考えですか?
出口:やはり、一番大きいのは「名作」に触れなくなってしまったことではないでしょうか。
これは、単に本を読まなくなったということではありません。
今の子どもたちにしても、マンガやゲーム、アニメなどで文章にはたくさん触れているのですが、どれも文字だけでなく絵や音の刺激もあるものです。
普通の子どもなら、本と映像を比べたら、映像の方を選ぶというのは当然のことでしょう。でも、そういうものばかりを観ていると、だんだん日本語を深く扱うことができなくなってしまう。
もちろん、マンガにもゲームにもいいものはあります。ただ、それとは別に名作と言われる文学作品を読んで、美しい日本語に触れる時間も持ってほしいと思います。
―「名作」の中で、特におすすめというものがありましたらご紹介いただけませんか?
出口:それぞれの作家にいいところがありますが、夏目漱石は日本人全員が読むべきだと思っています。言葉に深さと重さがあって、すごい日本語です。
―本書には、日本の名作文学が引用され、その穴埋めをするという「練習問題」の形式になっています。この狙いはどんなところにあるのでしょうか?
出口:こちらから一方的に説明するのではなく、読んでくださった方に自分で日本語の美しさやすばらしさを発見していただきたいという狙いがまずあります。そのうえで美しい日本語の使い方を身につけてもらえたらなおさらいいのですが、それには一定のトレーニングが必要です。それもあってあえて「練習問題」としました。
また、「練習問題」にはそれぞれ解説がついているのですが、僕はその解説こそこの本の命だと思っています。というのも文章の良さというのはある程度訓練を受けた人じゃないとわかりにくい。だから、「練習問題」で引用した名作文学について、その文章の何がよくて、どこが感動を与えるのか、そこにはどんな深い精神世界があるのかを、誰にでもわかるように解説したつもりです。美しい日本語とはひとことで説明できるものではないのですが、問題と解説をセットで読んでいただくことで、その世界にどっぷりと浸かることができるのではないかと思います。
―本書をどのような人に読んでほしいとお考えですか?
出口:日本人であるか外国人であるかに関わらず、日本語を使う全ての人です。
この本一冊で美しい日本語を使いこなせるようになるとは僕自身思っていないのですが、読んでいただければその人なりの発見や気づきがあるはずですし、日本語について意識するきっかけになるのではないかと思います。
また、この本を通じて僕が一番言いたいのは、日本人の心に触れてほしいということです。本当に美しい日本語に浸かることで、自分の中に流れている日本人の精神性や文化、歴史に触れることになります。それはすごく価値のあることだと思っています。
―最後になりますが、読者の方々にメッセージをいただければと思います。
出口:美しい日本語を通して日本人の精神性に触れるためにも、ぜひ感性を研ぎ澄ませて読んでいただきたいです。そうすれば必ずどこかで自分の琴線に触れる瞬間があるはずです。そういう読み方をしていただくと、“読んでよかったな”と思っていただけるのではないかと思います。
日本人にとって日本語は生まれてから死ぬまで使う身近な言葉です。その日本語を見直すことは、人生をもっと豊かにしてくれるのではないでしょうか。
(新刊JP編集部)