サッカー日本代表、ベルギー戦の先発イレブン　（撮影：岸本勉／PICSPORTS）

写真拡大

　W杯で上位進出を目ざすのであれば、内容のある試合を続けていかなければならない。そのうえで〈勝ち切る〉強さを見せつける──11月19日のベルギー戦に課せられたふたつのテーマを、日本は見事にクリアした。３対２の逆転勝利は、周囲を納得させられる結果と言っていい。
　
　自分たちのミスから先制点を許し、長く引きずっている課題のリスタートから２点目を奪われたのは、勝利とは別次元で受け止めなければいけない。W杯では先制点が重みを持ち、強豪国はポゼッション、カウンター、リスタートの３つを使い分ける。リードを奪った瞬間に、カウンター狙いへ軸足を移すチームもある。自分たちからゴールを差し出すような行為は致命的だ。失点のきっかけを作ってしまったＧＫ川島だけでなく、チーム全体の反省材料とするべきである。

　ベルギーの試合に臨む温度にも、触れておかなければならない。「内容と結果が伴ったのは自信になります」と話した長谷部は、「オランダもそうでしたけど、ベルギーが本調子だったかというと、正直そうではないかなと思いました」と続けている。試合に臨む熱が冷めていたとは言わないまでも、フレンドリーマッチのスタンスが滲んでいたのは確かだ。

　そういったものを差し引いても、日本の勝利は評価できる。

　戦術的なキーワードは、原点回帰と柔軟性だ。高い位置からプレスをかけてボール奪取を試み、攻撃につなげていく姿勢を取り戻した。球際での激しさも追及されている。

　同時に、10月までショートレンジのパス交換に集中していた攻撃は、サイドチェンジやタテパスを織り交ぜたものに姿を変えた。ＤＦラインの背後を狙うから、足元でのつなぎに余裕が生まれる。足元でテンポ良くつないでいるから、相手守備陣はサイドを突く動きに惑わされる。10月の中欧遠征では「ボールを持たされて」いたが、オランダ戦とベルギー戦は実効性のあるボール支配だった。

　ザックの采配にも触れるべきだろう。

　この日は内田、長友、今野、遠藤、岡崎の５人がスタメンから外れた。個々のコンディションや中２日の日程が考慮されたところはあるが、先発出場の少なかった酒井宏、酒井高、森重らにチャンスを与えたのは、彼ら自身が経験を得るとともに、チーム全体への刺激剤の意味を持つ。先発がほとんど変わらずに結果も出ないという二重苦が引き起こした停滞感は、今回の２試合で払拭できたはずだ。
　
　時間は短かったものの、香川を下げて遠藤をトップ下に、本田を右サイドに置くオプションを試した。今野の左サイドバック起用も見られた。なかばパターン化していた選手交代に幅を持たせたことも、今後につながる好材料にあげられる。
　
　何よりも、アウェイで勝ち切ったという事実が価値を持つ。スコアだけなら接戦でも勝機を見出せなかったゲームの連続に、ようやく終止符を打つことができた。

　2013年の成績は8勝４分8敗の五分となったが、白星はW杯予選、東アジアカップ、国内のテストマッチで稼いできた。アウェイや中立地で強豪国から勝利を奪ったのは、ザック指揮下で初めてのことである。昨年10月にパリでフランスを退けているが、選手交代などで相手が自滅的にバランスを崩したところは否めない。2013年のラストマッチでようやく、チームの方向性の裏付けとなる勝利をつかんだのだ。