記者会見に臨むＪリーグの大東チェアマンの姿に、このところテレビを賑わせているホテルやレストランの関係者が重なった。
　
　Ｊリーグが15年からの実施を決めている２ステージ制に、構造的欠陥が見つかった。２ステージへの変更を「過去への回帰ではなく未来への前進」と説明したチェアマンは、「後戻りではなく修正」と話した。２ステージ制をベースに考えつつも、１シーズン制の継続も視野に入れていることを説明したものだ。言葉のすり替えで後退感を隠そうとするところが、「偽装」ではなく「誤表示」と言い張ったホテルの元社長を思い起こさせる。

　まだ実施前である。制度のミスが発覚したのは、恥ずかしいことではない。

　ただ、Ｊリーグ側が練ったポストシーズンの構想には、やはり無理がある。こればかりは、取り繕うことはできない。

　２ステージ制とポストシーズンの導入は、スポンサー収入の確保を最大の理由とする。各クラブの台所事情は、自助努力だけで埋めきれないほど厳しいと聞く。Ｊリーグからの分配金が減額されたら、経営的ダメージを大きく被るクラブがある。
　
　それだけに、１シーズン制を維持するにしても、ポストシーズンは導入することになるだろう。

　では、１シーズン制でポストシーズンを生み出すには、どのような仕組みがいいのか。

　プロ野球は分かりやすい。セ、パ両リーグがクライマックスシリーズ（ＣＳ）を戦い、日本シリーズへ突入する。

　ＣＳではリーグ優勝球団に１勝のアドバンテージが与えられるので、不公平感も抑えられている。実際にレギュラーシーズンの優勝チームが、きわめて高い確率で日本シリーズへ進出している。

　Ｊリーグが最初に発表したポストシーズンの第一段階（スーパーステージ）は、第１、第２両ステージの１位、２位チームがトーナメントで争うものだった。これでは、レギュラーシーズン中にステージ優勝や２位の可能性を早くに失ったチームが、目標を持ちにくい。
　
　勝てばステージ２位になれるチームと、勝ったところで何も得られないチームが最終節で対戦したら──僕が後者のチームの監督なら、無理をする必要はないというスタンスを選ぶ。コンディションに不安のある主力は使わないし、累積警告も計算するだろう。対外的に見れば、消化試合の要素が高まる。
　
　順位ではなく年間勝点を出場権獲得の基準にすれば、消化試合を減らす抑止効果になる。１試合ずつの積み重ねが順位を決めるリーグ戦本来の姿を、２ステージ制でも獲得できる。

　スーパーステージの私案は、年間勝点２、３、４位の３チームが、１回戦総当たりのリーグ戦を行なうというものだ。２位チームは２試合ともホームで、３位チームは４位チームとの対戦をホームで行なう。
　
　年間勝点最多チームがスーパーステージの勝利チームを迎え撃つチャンピオンシップにも、アドバンテージを設定する。一発勝負で年間王者を決めるなら、試合は最多勝点チームのホームゲームとする。

　チャンピオンシップに付きまとう嫌悪感は、リーグ戦の優勝チームがカップ戦的な方式によって決められるところにある。チャンピオンシップがホーム＆アウェイで争われたら、これはもう完全にカップ戦のファイナルだ。
　
　チャンピオンシップに、リーグ戦的要素を組み入れたい。そのために、90分で引き分けなら年間最多勝点チームの優勝とする。たとえ2ステージ制になっても、これだけは導入してほしい。
　
　スーパーステージやチャンピオンシップは、ファン・サポーターに新たな盛り上がりを提供するものだ。だからといって、番狂わせを求めるものではない。年間勝点の上位チームは、それなりに有利な立場で臨むべきである。