１対２で終了したＵ−17ワールドカップのスウェーデン戦をテレビで観ながら、僕は数年後の日本サッカーを思い描いていた。

　日本はいいチームだったと思う。あくまでもテレビで観た印象だが、日本人の特徴を生かしたサッカーを追求しつつ、勝利の可能性をしっかりと高めていた。どちらか一方に偏ってしまうチームも過去にあったなかで、吉武博文監督は将来につながるチームを作り上げたと感じる。

　古い記憶が思いだされる。

　28年ぶりの五輪出場を決めた１９９６年のアトランタ五輪代表は、92年のＵ−19日本代表を原型とする。同年10月のアジアユースで３位に終わり──当時はアジアの出場枠が「２」だった──ワールドユース出場をあと一歩で逃した事実が、西野朗監督と選手たちが五輪を目ざす動機付けとなった。川口能活、服部年宏、伊東輝悦、城彰二らアジアユース組の胸中では、92年の悔しさが持続力を持っていたのである。監督と選手が共有する思いは、チーム全体の推進力にもなっていった。

　２００７年を最後に、日本はＵ−20ワールドカップ出場を４大会連続で逃している。Ｕ−17ワールドカップには２００７年、09年、11年と３大会連続で出場しているから、タレント不足を理由にはできない。だとしたら、何が世界への壁となっているのか。

　理由は複合的なものだろうが、個人的には継続性をあげたい。Ｕ−17を率いた監督にＵ−20ワールドカップを狙うチームを託していたら、監督と選手たちは同じ思いを共有できる。Ｕ−17年代で果たせなかった思いを、Ｕ−20ワールドカップ出場へぶつけることができる。世界大会に出たい、このチームで世界にアピールしたいといった野心が、強く、太く、ブレのないものになっていく。かつてのアトランタ五輪代表のように、である。
　
　２０１５年のＵ−20ワールドカップを目ざすチームは、鈴木政一監督のもとですでに立ち上げられている。その一方で、今回のＵ−17日本代表を率いた吉武監督は、２０１５年のＵ−17ワールドカップを目ざすＵ−15日本代表の監督も兼任している。今後はこちらの仕事がメインになる。
　
　鈴木監督と彼の右腕の内山篤コーチには、アジアの舞台を戦った経験がない。10月に戦ったＵ−19選手権の予選と、来年の本選──Ｕ−20ワールドカップ出場をかけた戦いは、対戦相手のレベルもプレッシャーもまったく別物である。鈴木監督自身の経験が、必ずしも当てはめられないシーンが出てくるはずだ。

　今年１月に強化スタッフを発表した際、原博実サッカー協会技術委員長は「各年代の代表チームで情報共有と指導者の意見交換の機会を増やしていく」と説明している。ならば、アジアを勝ち抜くための情報共有として、来年度のＵ−19選手権に総力を注ぐべきだろう。吉武監督の持つ経験を、Ｕ−19日本代表にも生かすのだ。

　ふたつの代表チームに関わるのは、吉武監督に負担を強いるかもしれない。それでも、Ｕ−16選手権は来年９月、Ｕ−19選手権は同10月と、日程は重なっていない。

　大局的な視点に立つと、Ｕ−20ワールドカップ出場は別の意味で重みを増す。
Ｊリーグが２部制へ踏み切ったのは、リーグスポンサーを確保してクラブへの分配金を確保することが大きな目的となっている。今回は大会方式にメスを入れることで企業の投資を喚起したが、リーグそのものの魅力を高めなければ企業の関心は離れてしまう。

　20代前半でのヨーロッパ移籍が当たり前となっている現状では、将来性豊かな若手を絶えず輩出していくことがリーグの繁栄に欠かせない。その意味でも、Ｕ−20ワールドカップ出場を逃したくない。逃してはいけない、と思うのである。