現役オーストラリア代表のキャプテンでもある、ルーカス・ニール　（写真提供：フォート・キシモト）

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　本田圭佑の去就が、連日にわたってメディアを賑わせている。夏と冬に移籍市場が多くの話題を提供するのは、ヨーロッパサッカーの大切な一部だ。

　ひるがえって、Ｊリーグの今夏の移籍市場はどうだろう。

　外国人選手に限れば、話題性のある移籍はほぼ見当たらない。経営を圧迫するような補強はリスクを伴うし、不要な戦力を抱え込むこともないだろう。ただ、観戦者のひとりとしては、「スタジアムへ行ってみたい」と思わせる補強があると嬉しい。

　大宮アルディージャが獲得したルーカス・ニールは、今夏の移籍市場で数少ない大物と言っていい。ヨーロッパや南米の選手ではないものの、現役オーストラリア代表のキャプテンである。

　Ｊ１リーグにおいて、外国人センターバックが少数派となって久しい。今シーズンのＪ１で、誰もがすぐに思い浮かべられるセンターバックが、果たして何人いるだろうか。

　過去のベストイレブンを調べると、２００５年のストヤノフ（千葉）を最後に外国人のセンターバックが選ばれていない。日本人センターバックのレベルアップは理由のひとつにあげられるだろうが、外国人センターバックの絶対数が減ってきたのと無関係でない気がする。

　Ｊリーグ開幕当初は、ペレイラ、ブッフバルト、トーレスらがいた。彼らとともにプレーすることは、Ｖ川崎、浦和、名古屋の日本人センターバックにとって学びの機会となった。ボランチの選手にとっても、価値ある経験となったに違いない。

　おりしも日本代表では、センターバックのレベルアップが問われている。現場レベルでは10年以上前から議論されてきたことだが、状況は変わっていない。ここにきて代表復帰を望む声が高まっている中澤と闘莉王は、２００４年に揃ってベストイレブンに選出されている。闘莉王は昨年まで９年連続だ。

　現代サッカーのセンターバックは、守備と攻撃の両立が必須だ。１対１や空中戦の強さはもちろん、ビルドアップの能力も標準装備しなければならない。どちらか一方だけでは、世界の最前線で戦うことはできない。

　ルーカス・ニールは屈強なセンターバックだ。上半身の厚みは、大宮のチームメイトがもれなく細身に見えるほどだ。一方で、ビルドアップに長けるイメージは薄い。我々が何度も観てきたオーストラリア代表が、前線へのロングフィードを主武器にしてきたからだろう。

　ビルドアップについては現時点で未知数ではあるものの、イングランドでの経験が豊富な35歳は、大宮の守備陣に刺激を与えるはずだ。同じセンターバックで21歳の高橋はもちろん、27歳の菊地にも恰好の教材となる。

　７連敗中のチームを建て直すための補強だが、日本人選手のレベルアップを手助けする存在として期待される。同時に、ここ最近はボランチから前へ偏りがちな外国人選手の補強を、見直すきっかけになるかもしれない。日本サッカーの強化という観点からも、ニールのＪリーグ入りに注目していきたいのである。