マツダがCX-5を「フルスカイアクティブ」と表現しているのは、新エンジンにタコ足を採用したり、ディーゼルをデビューさせたからだけではありません。ボディやシャシー、トランスミッションまで含めたクルマの全てを、「常識破り」に一新しているからなのです。


まず、ボディやシャシーでは「エンジンルームの拡大」をはかりました。
従来のボディのまま「タコ足エンジン」を納めようとすれば、室内スペースを犠牲にするしかありません。そこでマツダは「エンジンルーム拡大」に向けて、エンジンとタイヤを前出しするために、ボディとシャシーを新規開発したのです。


普通なら、新規開発の枕詞に「室内空間の拡大」が入らないと重役会議は通らないと思うのですね。ところがマツダ経営陣は「室内空間は現状維持で良し!」と完全に割り切ったのです。アテンザなどの基幹車種で使う骨格に対してこの判断は、本当に凄いと思います。


もちろん最新鋭らしく、ボディでは「骨格のストレート化による剛性&衝突安全性の向上及び軽量化」をはかると共に、シャシーでも「クルマとの一体感や快適性の両立」を徹底して目指したのは言うまでもありません。



またトランスミッションでも、ATの主役たるトルコンの「脇役化」を敢行しました。
トルコンことトルクコンバーターは、少ないギア数でも力強い発進と滑らかな変速をもたらす画期的なメカでした。しかし伝達効率に優れるCVTやDCTが市場を賑わすようになり、最近ではATの影が薄くなっていました。


ブレークスルーのきっかけは「ATの多段化」でした。ギアが増えれば頻繁なロックアップ変速が可能になり、伝達効率が向上します。その上でトルコンの作動領域を発進と微速時に特化させれば、DCT並の伝達効率とATらしい使い勝手が両立できるのですね。
トルコンの主な役割を捨て去ることで、優れたミッションに生まれ換わるのですから、本当に素晴らしい!


トルクコンバーターは基本的に発進以外には使わず、走り出したら常時ロックアップ。変速時にもスリップロックアップを利用することにより、ダイレクトな加速感と、0.15秒という素早い変速レスポンスを両立。振動抑制にはエンジンの燃焼制御も協調させることで、快適性も並立させることに成功した。



昨年ディーラーで貰ったパンフに、マツダのスカイアクティブ技術は「教科書どおりの常識はずれ」と書いてあったことを思い出しました。テクノロジーには無限の可能性があると、あらためて実感している次第です。


(拓波幸としひろ)