セルジオ越後氏「なでしこの選手たちの環境を整えるのは芸能的な報道じゃだめ」

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 7月23日、東京都内でチャリティーセミナー「日本サッカーの進歩と問題点」が行われた。サッカージャーナリスト養成講座が主催したもので、セルジオ越後氏と植田朝日氏が出演。司会進行は『Jリーグサッカーキング』の青山知雄編集長が務めた。

 日本サッカーの進歩について、セルジオ越後氏は次のように述べた。「僕が若い頃、Jリーグが開幕する前、子供たちを教えてた時は、カズ(三浦知良)なん かがそうだったみたいに、みんな『プロになるために海外に行きたい』だった。でも、Jリーグができてからは『Jリーガーになりたい』に変わった。国の中に 夢ができたのは良いことだね」

 一方で、セルジオ越後氏は「今の子供たちはまた『海外に行きたい』となっている」と発言。「『Jリーガーになりたい』という子供たちが減っている。それ だけJリーグの魅力が減っているってことかもしえない」と、日本サッカーの現状を指摘した。地域密着をうたいながら企業への依存が強いJリーグの体質にも 疑問を投げ掛けている。

 海外でプレーする選手に話題が及ぶと、「海外の選手を特別視するのは良くないよ。そのチームで一番なんて言っちゃだめ」と述べ、メディアの報道姿勢に苦 言を呈した。「例えば、宮市(亮)の報道もどうなのかな。持ち上げすぎじゃない? 小野伸二はどうしたのよ? 彼のほうがすごかったでしょ? 小野伸二は UEFAカップを優勝してるんだよ。みんな過去のことは忘れちゃうんだね」

 セルジオ越後氏は、ワールドカップで優勝を果たしたなでしこジャパンの快挙をたたえる一方で、その過熱報道もたしなめた。「なでしこの報道はワイド ショー的だよね。ワイドショーは情報を消費していくだけ。選手たちもみんな勘違いしてると思う。なでしこの選手たちの環境を整えるのは芸能的じゃだめ、そ れじゃ使い捨てになっちゃうから。今は、宝くじを当てたら急に知り合いが増えるのと同じで、バブルみたいなものだよ」

「男子の日本代表がW杯で上位進出を果たすために絶対に必要なものとは?」と質問されると、「リーグの結果、クラブの結果、強化の結果次第、だと思いま す」とコメント。「ACLでクラブが勝てなくなったのは大心配。代表でもクラブでもアジアで余裕をもって勝てるようになること、アジアでは敵なしというレ ベルに持っていくことが、世界に結びついていく。それから、海外に出るのも良いけど、日本でプレーしてもレベルアップできる環境を作っていかなきゃいけな いね」と、Jリーグの充実こそが日本代表の発展には不可欠であると語っている。最後に「他の国が積極的にやっているように帰化選手を増やしていけば、日本 代表のW杯優勝も夢じゃないよ」と述べ、チャリティーセミナーを締めくくった。

「日本サッカーの進歩と問題点」を含むサッカージャーナリスト養成講座主催のチャリティーセミナーはUSTREAM配信されており、サッカージャーナリスト養成講座の無料ライブ講義で視聴できる。24日は17時から「浦和レッズのこれまでと、これから」が配信される。

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