逆に、短所となるのは、「雑なプレーが多いこと」と「好不調の波が激しいこと」である。たぐいまれなテクニックを誇る選手であるが、イージーなミスが多く、結局、ミスの多さは改善されなかった。

アタッカーなので、ある程度、ミスをするのは仕方がないが、凡ミスが多いのは好ましくない。クルピ監督は、どんなにミスが多くても、スタメンを外すことはなかったし、早い時間にベンチに下げることもほとんどなかったが、イージーミスを極端に嫌い監督は多い。

また、波が激しいのも、ウイークポイントである。いいときは、MF香川をも上回る圧巻のパフォーマンスを見せたるが、その一方で、ダメなときは、とことんダメなタイプで、イライラしてきて自滅してしまう。一度、パフォーマンスが落ちると、回復するまでに時間がかかるのも問題で、ダメな試合が何試合も続くことが多かった。

それでも、試合に出場し始めた頃と比べると、ずいぶんm改善されたが、まだまだ、波は激しい。こちらも、我慢強いクルピ監督だからこそ、という部分もあったので、波が激しいままであると、レギュラーポジションを獲得するのは難しくなる。

「スピード」、「運動量」、「テクニック」といった部分に関しては、どのリーグでも通用するレベルにあるが、軽いプレーも多く、このようなプレースタイルの選手を嫌う監督は少なくない。どのリーグの、どのチームでも活躍できそうな選手とは違って、どういう監督にめぐり合うかというのが、非常に大事である。慎重に移籍先を決めてもらいたいところである。

■ 選手の海外流出について

まだ、正式に決まっている選手はいないが、今夏も、何人かの選手が海外リーグに移籍することになりそうで、Jリーグの空洞化という問題もクローズアップされてくる。ただ、これは仕方がないことである。

イングランド、イタリア、ドイツ、スペインといった欧州のトップリーグを除くと、世界中のほとんどのリーグが「スターの流出」という問題を抱えており、ボスマン訴訟以後は、世界的な流れなので、Jリーグだけでどうにかなる問題でもない。

海外に選手が流出することは、Jリーグにとってマイナスな部分もあるが、海外リーグ所属の選手に憧れてサッカーを始める子供も多いと聞く。Jリーグと、海外リーグは、別物のようにとらえている人は少なくないが、サッカー界全体で見ると、選手が海外に移籍することは決してマイナスとも言えない。

乾貴士 (いぬい・たかし)

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