――滴草さんはよくご自身のブログなどで自作の絵を発表していますが、絵を書く人から見て印象的なシーンはありましたか？

滴草：海のシーンですね。マテオとレナが2人で逃亡した海のシーンは、全てを捨てたんだけど、2人とも何も恐れていなくて。海ってどこまでも続くじゃないですか、それが"先の見えない2人"の心境と上手く重なっている気がして。あのシーンは絵にしたい。

――私も滴草さんの絵を、とても見てみたいです。

滴草：ただの風景画じゃなくて、愛や、色んな気持ちが入り混じった物を海に加えて表現したいですね。映画は赤が印象的だから、海の青にあえて赤を加えたりして。

――確かに、「抱擁のかけら」のアルモドバル監督が撮る作品は、「アルモドバルレッド」とファンの間で形容されるほど"赤"の色彩が印象的ですよね。

滴草：私は写真展や美術館に行ったら、描きたい絵のイメージがぱっと浮かぶんですね。それを描いたりもするので、描いてみようかな。この映画は本当に良いイメージを与えてくれる作品でした。

――この映画は、ペネロペ・クルスの圧倒的な美しさが映画最大の魅力だと思うのですが、女性から見てどう感じましたか？

滴草：映画の撮影する前に、色々な髪型を試したり、ウィッグを被るシーンで「べっぴんさんやなー」って思って。女の私でも「あぁー」って興奮(笑)。とにかく美に惹きこまれましたね。メイクの研究とかしちゃいました。

――ファッションも色々と変わって、すごく素敵でしたね。滴草さんが特に好きな衣装ってありますか？

滴草：そうですね。映画の中の映画で着ていたレトロな白を基調にしたジャケット、すごく可愛かった。メイクもそれほど濃くなくて。後は、エルネストに階段から突き落とされた時に着ていた赤いスーツもすごく綺麗だった。

――あのシーンはかなり衝撃的ですよね。

滴草：「エッ?」ってなった。落とす瞬間のエルネストの無表情さが怖い…。レナは階段から落ちた後に、「きっと彼から逃げられない」って絶望したんだろうな。あの愛の形はちょっといただけないですね(笑)。