わずか3年で約100店を新規出店。23区内「どこへでも」配達を実現するためにカクヤスが採った拡大戦略だ。しかし、結果はぼろぼろ。全店の半数以上が赤字となった。崖から転げ落ちかけた同社を救ったのが、Amazon、アスクルに並ぶ『カクヤス・モデル』である。



第2回
「運命の年1998」


■宅配料300円からのスタート


「これまで世の中になかった、家まで届けてくれるディスカウントショップ。これは意外に当たりました」

そもそもディスカウントショップが成立するのは、セルフサービスによりコスト削減を徹底できるから。その対極ともいえるのがまともにコストのかかる配達である。本来なら『配達するディスカウントショップ』というのは形容矛盾な存在なのだ。

「そんなこと誰もやらないわけですよ。だから、賭けたんだよね。といっても最初はちゃっかり配達料をもらってました。1回あたり300円です。なんで300円なのかっていうと、時給1000円でバイトを雇えば1時間に3軒ぐらいは配達できるだろうと計算したわけです。アバウトっちゃそうなんですけれどね」

ところが、この配達型ディスカウントショップが予期せぬヒットとなった。その背景として考えられるのは居住環境と居住形態の変化だ。店までクルマで乗り付けビールを箱買いしたとしても、最後は自分の手で運ばなければならない。マンション住まいなどで部屋まで持って上がるのはかなりつらいだろう。ましてやお年寄り世帯ならなおさらだ。

「だからバカ売れ。でもお客様からすると、なんで配達料を取るんだって文句が出るんですよ。結果的に安いのはわかるけれど、なんか納得できないんでしょうね。そのうち団地の奥さん達なんかは向こう三軒両隣まとめて注文してくるようになりました。これだと配達料は1軒あたり100円でしょう。配達料って、お客様にとってはそれぐらいうっとおしいものなんだって改めて考えさせられました」


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