ブラックホールから噴出する「宇宙ジェット」の高解像度画像

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Betsy Mason

チリのチャナントール天文台にあるアタカマ・パスファインダー実験機(APEX望遠鏡)が、超巨大なブラックホールから放出される宇宙ジェットやローブ[ジェットの先端部にある広がった部分]の様子をとらえた、素晴らしい高解像度画像の撮影に成功した。

[宇宙ジェットは、重力天体を中心として、細く絞られたプラズマガスなどが一方向又は双方向に噴出する現象。星間物質などがブラックホールに吸い込まれる際にはしばしば、ブラックホールの周りに降着円盤と呼ばれる円盤状の雲が作られる。これに伴って、円盤の軸方向に超高速で脱出していく星間物質がしばしば観測される]

このブラックホールは、『ケンタウルス座A』の中心部にある。{翻訳の最初のバージョンでは、ケンタウルス座Aの形容として「われわれの住む太陽系にもっとも近い銀河系」と付けていましたが、これは事実ではないため削除いたします。Auger観測所のサイトによると、「ケンタウルスAの中心には、我々の最も近くにある活動銀河中心核がある」}

ケンタウルス座Aは、地球から1300万光年の距離に位置し、実際には、融合しようとしている渦巻状(螺旋)銀河と楕円銀河の2つから構成されている。非常に活発に星が誕生している領域があり、ジェット流という形で放出されている強い放射線の発生源でもある。

これは、サブミリ波の帯域で初めて撮影されたブラックホールの映像で、素粒子からなる放射線ジェット流が、光速の約半分の速さで放出されている様子がわかる。

中央の円盤状の塵の塊から南北の方向に、ローブが広がっているのも見て取れる。銀河の右下の光っている部分は、ローブが周辺を取り巻くガスとぶつかって発生した衝撃波だ。

この画像は、波長帯域や使用機材の異なる複数の撮影画像を合成したものだ。『チャンドラX線観測衛星』がX線画像を撮影し、ラ・シヤ天文台の『MPG/ESO望遠鏡』が、背景の星と円盤状に集まった塵を映し出した。

WIRED NEWS 原文(English)

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