ロシア派兵から生還し家族と再会した北朝鮮兵士(2025年10月24日付朝鮮中央通信)

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北朝鮮当局が、軍人家族による市場での商売や密造酒づくりを厳しく取り締まり始めた。軍人家族は一定の配給を受ける比較的恵まれた立場とされてきたが、実際には配給だけでは生活が成り立たず、市場での副業が家計を支えているのが実情だ。こうした「最後の収入源」にまで規制が及び、家族からは「飢えて死ねと言うのか」と悲痛な声が漏れていると、デイリーNKの内部消息筋が伝えている。

消息筋によると、朝鮮労働党の平安南道委員会は、軍人家族による無許可の露天商や密造酒の製造・販売が地域の秩序を乱し、「特権意識」を助長していると判断。軍部隊に対し、将校の妻や家族が市場で商売をすることを全面的に禁止し、軍の家族管理組織の統制下に置くよう指示したという。

特に、将校の妻が生活費を得るために密かに続けてきた酒の密造や市場での商売が発覚した場合は、党組織や政治保衛部に報告し、「政治問題」として扱う方針まで示されたとされる。違反した本人だけでなく、夫である軍人も責任を問われ、役職を解かれる可能性があるという。

実際、5月には将校の妻らが密造していた酒や、国営商店から横流しされた配給用石けんが摘発され、家宅捜索で見つかった現金も全額没収されたという。当局はこの家族を官舎から追放し、「最高指導者の配慮による戦略物資を市場で売る者は革命の敵だ」と厳しく批判したと伝えられている。

しかし、現場では当局の論理とは異なる現実が広がっている。

軍人家族には一般住民より優先的な配給制度があるものの、それだけで一家の食生活を維持できるわけではない。食料そのものが不足するうえ、野菜や調味料などの副食、冬を越すための薪や燃料、子どもの養育費、さらには前線勤務が多い夫を支えるための費用まで、自力で工面しなければならないケースが少なくないという。

(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

そのため、市場での露天商や自家製酒の販売は、ぜいたくのためではなく生活をつなぐための収入源になっていた。軍人の妻たちにとっては、配給だけでは埋められない生活費を補う数少ない手段だったとされる。

消息筋は「商売は生計と直結している。軍人だからといって必要なものが全て国家から支給されるわけではない」と説明。軍内部でも今回の措置に対する不満は小さくないという。

さらに軍人家族の間では、「国家が十分に食べさせてもくれないのに、商売まで禁じるのなら、飢えて死ねと言うのか」という不満が密かに語られているとされる。

北朝鮮では近年、市場経済への依存が社会全体に広がる一方、当局は統制を強化している。今回の措置も、軍人家族を市場から切り離し、軍と党組織の管理下により強く組み込もうとする狙いがあるのかもしれない。