有能だが「毒」があるエースをどう扱うか? チームを崩壊させずに成果を出す方法

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私が実施している管理職研修では、困った部下の育成に関して相談を受けることがよくあります。中でも、特に難しいのが以下のような相談です。

「組織の稼ぎ頭である有能なエースが他の社員や組織の体制に『毒』を吐き、チームメンバーのモチベーションや一体感が損なわれて困っているのですが、どうしたらいいのでしょうか?」

「数字を出すから何をしてもいい」という空気を許すと、長期的には他の優秀な社員が去り、組織が腐敗してしまいます。一方で、単に押さえつければエース社員のパフォーマンスは落ち、競合他社へ流出するリスクもあります。今回は、そのような毒を吐くエース社員の心理を読み解きながら活躍させ、一体感あるチームを作っていく方法についてご紹介してまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)

毒を吐くエースの心理にある“歪んだ承認欲求”

有能な社員が吐く「毒」は、単なる悪口や愚痴とは異なり、「正論」と「優越感」が混ざり合っているのが特徴になります。そのため、周囲は反論しにくく、じわじわとチームの士気が削られていってしまいます。

例えば、次のようなものです。

「これ、まだ終わってないの?僕なら30分で終わるけど。座っているだけで給料もらえるなんて羨ましいよ」「こんな簡単なことも説明しないとわからないなら、このプロジェクトにいる意味ないよね」「彼に任せるのは時間の無駄です。結局僕がやり直すことになるのだから、最初から僕一人でやらせてください」「日報?会議?そんなことしている暇があったら外に出て数字を作ってきたほうがいいよ。僕は結果で示しているから、そんな遊びに付き合う気はないよ」「また本社が思いつきで新しい方針出したね。どうせ3ヶ月でポシャるのに。みんなも真面目にやるだけ損だよ」

こうした言葉の背景には、“歪んだ承認欲求”があります。「自身の優秀性をもっと認めさせたい」とか、「こんな組織で燻っていたのでは自分の価値が活かされない」といったものになります。

しかし、このような言動を、上司が見て見ぬふりをしたならば、チームメンバーの士気は下がりチームが崩壊していってしまいます。

毒を吐くエースを「チームの資産」に変える5つのポイント

では、どのような対応をしていったらいいのでしょうか? 5つのポイントに分けて考えていきます。

1. 歪んだ承認欲求に安心感を付与する対話の土台を作る彼らが毒を吐く根本には、「自分の有能さをもっと評価してほしい」「組織で自分の価値が活かされていることを実感したい」という焦燥感や承認欲求が隠れています。数字という結果だけでなく、彼が持つ視点の鋭さやスキルの高さを、暴言そのものは戒めつつも正当に、かつ頻繁に認めることで、対話の土台を作っていきましょう。

2. 上司が据えているエースの定義を伝える「売上さえ上げれば何をしてもいい」という誤解を解くために、上司としての評価の基準を伝えていきます。「君の力が100でも、周囲のやる気を削いで−50にしたら、君の貢献は50にしかならない。今の状態はとても勿体ない。」と、個人業績に加え、「周囲への好影響」「ナレッジの共有」「チームの育成貢献」等、組織全体への波及効果も評価に関わってくると伝えましょう。具体的に評価項目に加えてしまってもいいでしょう。

3. 組織の課題を他人事から自分ごとに変換させる批判を外から投げかける「評論家」の状態から、当事者として改善を担う「責任者」の状態へ移行させます。「今のやり方に課題を感じるなら、君が理想とする最強のプロセスを作ってみてくれないか」と、その高い能力を「破壊」ではなく「創造」に向けさせましょう。

4. 自身が昇格するための後継者育成の必要性に気付かせる自身のスキルを言語化し、「自分がいなくても回る仕組みを作るのが真のプロフェッショナルである」という価値観を育みます。そして、次の自分を作ることが、更なる高みのステージに自分自身を上げていくことを理解させましょう。

5. 上司が「翻訳者」となり、チームの負の連鎖を断つエースの言葉が直接メンバーに刺さり、毒が回るのを防ぐためのクッション役を務めます。メンバーに対し、「彼の言葉はキツいが、指摘している『ミスの本質』は正しい。感情は横に置いて、その視点を学んでほしい」と、有益な情報だけを抽出して伝えます。そして、エースをチームから疎外するのではなく、あえて「頼りにしている」というメッセージを出し続け、彼がチームの一員として貢献することでしか得られない「真の喜び」があることを実感させましょう。

以上、今回は毒を吐くエース社員の育成方法について紹介してまいりました。毒を吐くエースの更生は一朝一夕にはいきませんが、彼らの「正論」を組織の改善エネルギーに変換できれば、チームは爆発的な成果を生み出す集団へと進化していきます。本日の内容を参考に、一体感のある高い成果を出すチームづくりに向かっていってください。