侍首脳陣の中でも、金子コーチ(右)の国際試合経験は特に豊富だ【写真:羽鳥慶太】

写真拡大 (全2枚)

国際大会の優勝歴豊富な金子コーチが鳴らす警鐘

 野球の国際大会「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」に出場する日本代表「侍ジャパン」は13日、名古屋市のバンテリンドームで豪州代表との初戦を迎える。現在世界ランキング1位の日本は、各国から優勝候補としてマークされる存在。ただ国際大会は何が起こるかわからないと、警鐘を鳴らす男がいる。金子誠ヘッドコーチは、優勝した前回大会や2021年の東京五輪でもスタッフ入りしていたV請負人。その経験をもとに「プレミア12が一番難しい」と言い切る。

 気の緩みは一切ない。12日夜にバンテリンドームで行われた前日練習を、日本代表はほどよい緊張感の中で終えた。その中で金子コーチは、2大会連続優勝のために頭を巡らせている。2019年の前回大会は、稲葉篤紀監督(現日本ハム2軍監督)のもとでヘッド兼打撃コーチとしてスタッフ入り。2021年の東京五輪でもチームを金メダルに導いた。その経験をもとに、言えることがある。

「プレミア12が一番難しい大会だと思うんだよね。間に新型コロナ禍もあって、世間にはあまり伝わっていないけれど」

 実際に2019年の大会では、スーパーラウンドの米国戦で3-4と接戦を落としている。これは今のところ、侍ジャパンが国際大会で喫した最後の黒星だ。金子コーチはこの大会の特殊性を「世界のトップの12か国が集まっている。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は米国に行っていきなり激しい試合になるイメージだけど、プレミア12は世界ランキングも近い国ばかりだから、それが最初から続くんです。あと短い日程で移動しながら試合するでしょう。本当に何が起こるかわからない」と説明する。

「源田に引っ張られて…」二遊間の成長に注目

 苦戦もあると踏む一方、侍ジャパンの未来には期待しかない。「バランスがいいチームになっているんじゃないですか。複数ポジションをできる選手も多いし」。事前に行われたチェコとの強化試合では、試合中にポジションを移動する選手が相次いだ。その時求めるものに対して、臨機応変に姿を変えていくのが今回の侍の戦い方だ。主砲不在と見られることも「じゃあ誰を呼ぶ? となったらいないでしょう」。チームの現状に合った戦い方を作っていくだけだ。

 特に期待するのが、自らの専門分野でもある二遊間の成長。「源田(壮亮=西武)に引っ張られて若い選手がどう伸びてくれるか。楽しみだよね」。紅林弘太郎(オリックス)や小園海斗(広島)、村林一輝(楽天)らに、次代の侍レギュラーとして期待をかける。

 昨春のWBCから大きく選手が入れ替わったのも「日本は選手が成長して、戦力になるまでのサイクルが速くなっているんだと思う」と前向きにとらえている。それでも、野球は相手あってのスポーツ。「豪州もディンゴ(ニルソン監督)が絶対にうまくやっていると思う。1点を防ぐためにどんどん投手を替えてくるだろうし。絶対にしのぎ合いになると思いますよ」。気が休まらない試合の連続を覚悟している。

 日本と豪州といえば、2004年のアテネ五輪の準決勝で対戦し、日本は0-1で惜敗。金メダルへの道が断たれるという事件があった。金子コーチはこのチームの一員だった。現役時代は「まず最悪の事態から考える」野球観で、北海道移転後の日本ハムが築いた堅実な野球を支えてきた。天国も地獄も知るチームの頭脳は、侍を勝たせるためにどんな手を打ってくるだろうか。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)