Screenshot: Polymarket

これ、何かわかります?

予測市場「Polymarket」の米大統領選激戦州当確予想チャートです。ご覧のように投票日(11/5)当日朝、ドナルド・トランプ候補の当選確率は62%にも達しています。対するカマラ・ハリス候補は38%。

各種世論調査ではどれも五分五分の接戦という話だったので半信半疑で眺めていましたが、蓋を開けてみればトランプの圧勝で、確実に結果を当てたのは予測市場だけでした。

同様の値は予測市場「Kalshi」などでも確認されています。

Kalshiの当確予想はNYの一等地、タイムズスクエアにリアルタイムで表示されていた
@mansourtarek_ via NBC News

まあ、予測市場では掛け金が暗号通貨(仮想通貨)で支払われますからね…。

大統領任期中は暗号通貨に否定的だったトランプも、今は暗号通貨の規制緩和を約束するほどの暗号通貨推し。「アメリカを暗号通貨の首都にする」とぶち上げて、DeFi (分散型金融)業界から大量の選挙資金が暗号通貨で集まっていました。

暗号通貨を持ってる人たちが、手持ちのコインを紙くずにしたくなくて暗号通貨推しのトランプに賭けたくなる心理も多少はあったのかも。

予測市場を動かした“トランプくじら”

あと、大きかったのが、大統領レース序盤でPolymarketに現れた、トランプに5000万ドル(約77億円)近く賭ける正体不明のフランス人の存在です。

ユーザーネームはTheo。さっそく業界関係者の間では「トランプくじら」という異名がついたわけですけど、その正体は金融に精通した元バンカーです。ビディングでは、資産を4つの匿名アカウントに分散して運用していました。

最初はすごい大金が動いてる!って印象でしたが、よくよく調べてみたら、4人とも同一人物だったってなわけです。

決め手は独自の「隣人調査」

そこまで注ぎ込むからには単なる希望的観測では全然足りなくて、かなりの確証が必要ですよね。いったい何をベースに…と不思議に思ったら、Times of Indiaに具体的な分析手法が紹介されていました。

なんでも「世論調査はどれもハリス寄りでアテにならない」と感じて、「トランプに投票する人は、自分がトランプ支持だと思われたくないから調査でもそう回答しないのではないか」という仮説を立てて(「shy Trump voter effect(隠れトランプ支持者)」と呼ばれる現象)、独自に調べたんだそう。

「あなたはだれに投票しますか?」と聞いても埒が明かないので、「隣の人はだれに投票すると思いますか?」と聞いてみたら、勝敗分け目の激戦州において、圧倒的にトランプと答える人が多かった。だからトランプ当選に賭けた、ってなことらしいのです。あったまいいわ…。

儲かりすぎて予測市場BANの動きも

大博打が功を奏し、Theoさんのポートフォリオは倍に増えて1億ドルの大台に乗って、Polymarket史上最大の大口ビダーになり、さっそくフランス当局の目に留まって、Polymarketを仏国内で利用禁止にすることまで検討されてるってな次第。

いま確認したら、Polymarketの競合まで調べたら10個目のアカウントが特定されて「実際の儲けはもっとデカい! 8400万ドル(129億円) だった!」って続報も出てました。10個って、いつのまに5個増えてんねん…。

暗号通貨×VPNでビディングする人をどう取り締まるのかも気になるところだし、もっと気になるのは、ひと握りの大口ビダーが選挙の行方を印象操作できてしまうのではないかということ。興味は尽きません。

Sources: Times of India, The Big Whale, Bookmakers Review