東アジア諸国よりも低い、働く日本人の「やる気」…世界からどんどん置いていかれる根本原因
ギャラップ社の最新レポートによると、日本の従業員のエンゲージメントは世界でも低いレベルであることが明らかになっています。このような深刻な事態となってしまった原因はどこにあるのでしょうか? 本記事では、野口雄志氏の著書『最大の成果をあげる心理的安全性マネジメント 信頼関係で創り上げる絶対法則』(ごきげんビジネス出版)より一部抜粋・再編集し、日本のエンゲージメント率の低さについて解説します。
やる気が恐ろしく低い日本人労働者
日本企業の仕事における充実度ややる気(エンゲージメント力)は、世界に比べると低いといわれています。ギャラップ社が公開した最新の「世界の職場状況」レポートによると、日本の労働者は世界で最もエンゲージメント力の低い国のひとつという結果が出ました。2022年の調査では、日本の労働者で仕事に従事している人のなかで、仕事に積極的に参加し、熱心に取り組んでいる人はわずか5%であり、世界平均の23%とは大きく異なる結果が出ました。
ギャラップ社は従業員の「エンゲージメント」の定義を、従業員の仕事や職場への関与と熱意と定義し調査を行っていますが、従業員が仕事に積極的に取り組んでいるのか、チーム構築活動や人事慣行がビジネスのプラスの成果に影響を与えているのか、成長の余地があるかどうかを知ることができる指標としています。
日本のエンゲージメント率は、データが入手可能になった2009年以来、世界基準から見て一貫して低く、4%から8%のあいだで変動しています。ほかの高所得経済諸国や、地理的・文化的に同調した近隣諸国と比べると著しく劣っています。2022年の日本のエンゲージメント率は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の労働者の平均18%の3分の1にも満たない結果でした。この差は過去10年間で拡大しており、2009年の8%から2022年までに13%差に広がっています。また、日本のエンゲージメントレベルは、2022年時点で17%を記録していた東アジア諸国よりも低い結果となりました。
[図表1]2022年の日本のエンゲージメント率 出典:2022年ギャラップ社調査より抜粋 著者作成
この調査は、仕事におけるエンゲージ指数を職場での関与と仕事への熱意で調べています。日本では一般的に働く人とその環境に課題があると、調査であらわれていることがわかります。
30年前と同じ課題を抱える日本人
自分自身の「働き方」を思い起こしてみると、90年代頃まではとにかく長時間会社にいて、長時間仕事をしていることで満足していた時期がありました。
その頃は、「仕事に対する熱意」「職場環境の影響」にはまったく関心がなく、ひたすら指示された自分の仕事を必死にこなしていた経験があります。しかしながら、この調査は最近の調査であり、私が経験した30年前と同じ課題が出ていることに驚きを覚えます。
職場に「指示待ち人間」がいる理由
[図表2]仕事や職業生活に関する強いストレスを感じている人の割合 出典:厚生労働省 平成30年 労働安全衛生調査(実態調査)2018 著者作成
日本は個人間の競争が激しく、それが評価につながる労働環境もあるため、個人は高い成果を求められるのです。その競争が過度に高まると、ストレスや不安が増加し、エンゲージメントを低下させる可能性があります。
大きな原因は、コミュニケーション力の低下によるものです。日本では上司や先輩に対する敬意や強い上下関係の文化が強調されることがあり、自由で平等なコミュニケーションが難しい場合があります。これが社員に発言を少なくさせ、指示待ちで仕事をする「指示待ち人間」をつくり上げてしまうのです。2020年から3年間コロナ感染症の影響で、会社で顔を合わせない、懇親会や食事会も制限されてしまったことも会話不足につながってしまいました。これもエンゲージメントを妨げる可能性があります。
野口 雄志
グリットコンサルティング合同会社
代表
※本記事は『最大の成果をあげる心理的安全性マネジメント 信頼関係で創り上げる絶対法則』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。