アメリカ相続税の支払額として過去最高額を7倍も上回る70億ドル(約1兆円)の支払いが発生していたことがわかりました。ただ、この相続税を生み出すもとになった富豪が何者なのかは不明で、ニュースサイトのSherwood Newsは匿名の情報源をもとに推測をまとめています。

Who died and left the US $7 billion? - Sherwood News

https://sherwood.news/power/who-died-and-left-the-us-7-billion-fayez-sarofim/



アメリカ合衆国財務省は毎日の現金および債務運用データを公表しています。イェール大学予算研究所のジョン・リッコ氏が、「高齢者の新型コロナによる死亡が政府の歳入にどのような影響を与えたか」という研究のために財務省のデータを分析していたところ、2023年2月28日に70億ドル(約1兆円)の相続税と贈与税の支払いが発生していたことを発見しました。

近年、アメリカ合衆国では借金を活用して相続税をほとんど免れる「買って借りて死ぬ」というテクニックが発達しており、「相続税の支払いはほとんど任意状態」とのこと。

大金持ちが税金を払わずに資産を増やすテクニック「買って借りて死ぬ」とは? - GIGAZINE



実際、2019年に422億ドル(約6兆3000億円)の資産を持つと推定されるデビット・コッホ氏が死亡した際には納税データに特異な値は現れませんでした。また、2005年からの約20年間において今回70億ドル(約1兆円)の相続税が発生するまでの歴代1位は2017年に納税された約10億ドル(約1500億円)だったとのこと。

相続税の回避テクニックを使用しなかった場合、相続税の平均税率に基づくと、70億ドル(約1兆円)の相続税が発生するには175億ドル(約2兆6000億円)から400億ドル(約5兆9000億円)の財産が相続される必要があるとのこと。また、相続税は対象者が死亡してから9カ月以内に支払う必要があるものの、場合によっては期限が延びる場合があり、Sherwood Newsは2022年に死亡した億万長者の相続ではないかと推定しました。

しかし、広く財産が知られている億万長者の中に2022年に死亡した人物はおらず、誰が亡くなって巨額の相続が発生したのかは不明な状態でした。

この謎について2023年3月に記者が報じたしたところ、数カ月たってから匿名で情報提供がありました。匿名の人物によると、遺産の主は2022年5月に死亡したファイェズ・サロフィム氏で、巨額の相続税が発生した理由については「サロフィム氏は移民で、自身を成功させてくれたアメリカに感謝しているため税金を気にしなかった」とのこと。

サロフィム氏に関して、2022年5月に死亡した際にTexas Monthly誌が訃報を出しています。サロフィム氏は北アフリカに大規模な綿花農園を所有する裕福なエジプト人の息子で、ハーバード大学でMBAを取得して1950年代にヒューストンに移住。1958年、30歳の時に投資会社を設立し、ヒューストンの上流階級のお金を運用して財を成しました。



会社を設立してから93歳でなくなるまでの60年以上にわたり、サロフィム氏の投資会社は非上場のままだったため億万長者として広く知られることはなかったとのこと。アメリカの億万長者をまとめているフォーブス400のリストでは2022年時点でサロフィム氏の純資産は15億ドル(約2200億円)と見積もられており、ランキング外でした。

しかし、Sherwood Newsに匿名で情報を提供した人物によると、サロフィム氏の純資産は少なくとも200億ドル(約3兆円)を超えていたとのこと。こうした資産の推測が実際の値からかけ離れてしまう原因について、Sherwood Newsは「サロフィム氏が父親から海外の資産を相続した可能性がある」としつつ、「非上場企業は株式公開企業と異なり資産が追跡されないこと」が大きな要因と分析しています。