思考が停滞している時間」=「ムダに悩む時間」を減らすためのさまざまな方法や工夫を説明します(写真:Fast&Slow/PIXTA)

「一生懸命頑張っているつもりなのに、なかなか成果が出ない」「目の前の仕事が片付かないまま、次の仕事がどんどん山積みになっていく」「同じ失敗やミスを繰り返してしまう」――。

社会人であれば、このような悩みに一度はぶつかったことがあるのではないでしょうか。

真面目で一生懸命な人ほど、こうした不安や焦りを抱えがちです。ムダな時間・手間・ストレス取り除き、効率良く成果を最大化するためにできる仕事術をトヨタグループで体得した森琢也著『トヨタで学んだハイブリッド仕事術』より、一部抜粋・編集してお伝えします。

メンタルを乱されない仕組みづくり

仕事のなかで、無理難題に思える依頼や指示が舞い込んでくることがあります。ときには、予期せぬミスや不具合、トラブルが起こり、周囲にも迷惑をかけ、八方塞がりに思える状況で、どうにか挽回を図らなければいけない場面もあります。

トヨタグループ勤務時代、私はそんな場面で、「そんなこと絶対にできない」「解決策なんてあるわけない」と、憤りにも似た気持ちになったりしました。感情にまかせて「できない理由」を延々と思い浮かべ、頭はパニック状態です。

感情的になったり、パニック状態になったりしてしまうと、メンタルがひどく乱されます。

メンタルが乱された状態は、「思考が停滞」しているのと同じことです。

そんなとき、ある先輩から「最高時速300キロ超えのスポーツカーだって、信号待ちや渋滞にはまれば、電車や自転車のほうが早く目的地に着けることもあるだろう。とにかく立ち止まるな。悩んでいないで考え続けろ」と励まされました。

持って生まれた資質や学歴に自信がなくても、立ち止まらなければ逆転できる。だから、「思考の停滞」を避けろというアドバイスでした。

本稿では、この「思考が停滞している時間」=「ムダに悩む時間」を減らすためのさまざまな方法や工夫を説明します。見方を変えれば、多少の困難には動じず、メンタルを維持したままで「思考のスピードをアップする」工夫です。

ミスや失敗を引きずらない「問いの力」

例えば仕事でミスをするたびに、日々、報告書という名の「反省文」を書かされているが、いっこうにミスが減らない、反省文を書くムダな時間が業務効率化の妨げになっている、そんなことをうすうす感じている人は多いのではないでしょうか。

反省の繰り返しは、失敗した業務に対する苦手意識を増幅させ、「次こそは何がなんでも失敗しないぞ」という気合の空回りにつながり、逆にミスが増えてしまうことも多いものです。

こうなってしまうと、これもダメあれもダメ、どうせ今度もダメだろうと思考がネガティブループに陥り、悩み続けるだけで時間がどんどんムダになります。

このネガティブループを抜け出すには、「思考の向き」を変えて、「明日を変える問いを立てる」の2ステップが有効です。

・STEP 1 「思考の向き」を変える

例えば、「売上20%アップ」を目標にさまざまな施策に取り組んでいるなかで、お客様への対応でミスや失敗が続き、このままでは目標達成がおぼつかない事態となっていると想定します。

ここで反省文を何十枚書いたとしても、現状打破につながらないことは誰もが感じることだと思います。反省文をいくら書いても、過去の出来事に執着し、自分の非(原因)と責任追及を繰り返して落ち込むだけです。

それに対し、「どんなやり方をすればミスをしなくなるのか?」と語尾に「?」が付いた問いを立ててみてください。視点が「過去」→「未来」に変わり、気持ちも「ネガティブ」→「ポジティブ」に変わる気がしませんか。


大切なことは、「(今後は)どんなやり方をすればミスをしなくなるのか?」と「明日を変える問い」を立てることです。こうすることで、ネガティブループで停止していた思考のスイッチがオンになります。

そのうえで、さらに「売上を20%アップするためには?」と、いまの仕事において本当は何をしようとしていたのかに立ち返り、もともとの目標の達成に向けた問いを立てていくと、思考はどんどんポジティブに加速していくでしょう。

思考の向きを変えるためのポイントは、「明日を変える」という視点で「問いを立てる」ことです。

【思考の向きを変える】
×反省=過去・原因・責任追及(→ネガティブ)から
〇明日を変える問い=未来・対策・可能性追求(→ポジティブ)へ

ミスにつながりやすい作業をなくす

・STEP 2 「問いの3段話法」で「明日を変える問い」を立てる

それでは具体的にどのような方法で明日を変える問いを立てればいいのでしょうか。おススメは「問いの3段話法」の活用です。

トヨタでは、特に「選ぶ・探す・判断する・注意する」といった作業がミスにつながりやすい場面だとされています。

そこで、そうしたミスにつながりやすい作業を「なくせないか?」「減らせないか?」「簡素化できないか?」の3段話法で考えて、対策を追求しましょう。そして、最終的には、「ミスをしようにもミスが起こらない未来」をつくり出すことを目指して思考を働かせていきましょう。


(画像:『トヨタで学んだハイブリッド仕事術』より)

(森 琢也 : 株式会社クック・ビジネスラボ代表取締役、中小企業診断士)