『おむすび』写真提供=NHK

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 『おむすび』(NHK総合)第3話で、結(橋本環奈)は書道部の先輩・風見(松本怜生)の言動に心惹かれる。恵美(中村守里)はそんな結を書道部へ誘った。結は書道というより風見先輩に惹かれているのだが、想像していた以上に恵美の書道への思いは熱い。書道の魅力を語るうちに熱が入る恵美に結は気圧されるが、福岡・天神で行われる書道展に「先輩も来るって」と言われるや否や「行く」と即答する結が面白い。

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 第3話では、結を演じる橋本の“抑え込む”ような演技が印象的な回だった。風見が「自分の中で何か抑え込んどうことない?」と言い当てたように、結は何か迷いや不安を抱え込んでいるような描写がある。

 畑での場面では、大雨に備える聖人(北村有起哉)、愛子(麻生久美子)、祖母・佳代(宮崎美子)の姿をじっと見つめる憂いに満ちた表情が印象的だった。結は「うちも手伝う」と作業に励む。愛子らは決して手伝うことを強制していないし、結も嫌々手伝っている様子はない。だが、後述する場面で見せた面持ちも含めると、自分がやりたいと思うことや楽しいと思うことを避けるために畑に向き合っているようにも見える。

 愛子に書道部の話をする場面ではこんなことを言っていた。

「うち、畑の手伝いもあるけん、部活やりよう暇ないし、それに……」「いくら楽しくてもなくなっちゃうかもしれんし……」

 結の台詞の後、セーラームーンを彷彿とさせる格好で明るく笑う少女の姿と、「結!」と呼ぶ愛子の声、そして崩壊した家屋が映し出される。結は阪神淡路大震災をきっかけに、祖父母がいる糸島に移住してきたと思われる。明るい笑顔が印象的な主人公ではあるが、ふと沈んだ顔を見せる橋本の演技を見ていると、心に傷を負い、これまでも自分のやりたいことに一歩踏み出すのをためらってきた結の心情が感じられる。

 心強いのは母・愛子の言葉だ。「そんなことない。大丈夫だから」と声をかけると、「畑、手伝ってくれるのは助かるけど、それで結がやりたいこと諦めるのは、お母さん、寂しいよ」 と伝えた。愛子は結の表情を見て、何を思い出し、不安を覚えたのかをすぐに察したようだった。愛子を演じる麻生のおおらかな佇まいに安心感を覚える。今後、結が一大決心をする際、強い味方になってくれる、そんな気がした。

 日曜日、結は恵美とともに書道の展覧会へ行くが、そこに風見の姿はない。風見先輩がおらず、落胆したうえ、展覧会では書道の魅力を掴むことができなかった。そんな中、「うち、こんなんで書道部やっていけるんかな」と気弱になる結の前に現れたのは、理沙(田村芽実)たちハギャレンのメンバーだった。

 恵美から「うち、ギャルって苦手なんよね」と言われた時、「あ……う、うちも」と答えていた結だが、結の姉・歩(仲里依紗)に影響を受けてギャルになったと話す瑠梨(みりちゃむ)に思わず「……しょうもな」と口にしてしまったのを見ると、結は“ギャル”というより“姉”に苦手意識がありそうだ。とはいえ、結の過去と思しき場面を思うと、元々は結もギャルたちのような明るさを持ち、流行を楽しむ人物のような気がしてならない。

 物語はまだまだ始まったばかりだが、結を取り巻く環境が結のやりたいことにどのようにつながっていくのか、気になるところだ。(文=片山香帆)