「”極右”高市早苗よりはマシ」「石破も期待できない」…対日屈辱外交に不信感抱く韓国国民と韓国メディアの石破新政権への「警戒と本音」

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高市よりはよいけれど

岸田文雄首相に続いて、日本を率いる新しい首相が事実上決まる自民党の第28代総裁選挙は、隣国の韓国でも関心を持って見守られた。終盤に支持率が急騰した高市早苗氏に対して「極右」という表現を躊躇しなかった韓国メディアは、決選投票で高市氏を抜いて石破茂氏が勝利するとひとまずは安堵する雰囲気となった。ただ、石破氏の安保公約は自衛隊の強化につながり、日韓間の新たな摩擦要素になり得るという批判的な見解もある。

28日、韓国の主要中央紙は石破茂氏の自民党総裁選出を1面の主要記事で流す一方、国際面では韓国の読者には全く知られていない石破氏の人物像を紹介するのに多くの紙面を割いた。特に石破氏が過去の日韓間の歴史懸案に対して自民党の主流政治家たちとは違って柔軟な立場を示してきた点や、韓国人が嫌がる靖国神社を参拝しなかった点などを取り上げ、日韓間の関係改善の流れが持続することに対する期待を示した。

「石破氏は韓日関係を重視する政治家と評価される。高市氏に比べて韓日関係の面で安定的な関係を維持する首相になる見通しだ。第二次世界大戦の「A級戦犯」を合祀した靖国神社にも参拝しない。2019年、安倍首相(当時)が韓国をホワイトリスト(輸出審査優待国)から除外するなど、対韓国経済制裁を行った際、彼は“地域の平和と安定に資する措置ではない”と批判した。過去の日本軍慰安婦問題については“韓国が納得するまで謝罪しなければならない”と言及し、2019年の『日韓GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)破棄事態』の際は、ブログに“我が国(日本)が敗戦後、戦争責任に正面から向き合わなかったために発生した問題”と書いた」(『朝鮮日報』 非主流·12選のハト派··· 石破氏、岸田外交を継承へ)。

「“歴代首相が謝罪の意を明らかにしたにもかかわらず、韓国で受け入れられないことに対しては挫折感が大きい。それでも納得を得るまで謝罪し続けるしかない” 日本の次期首相になる自民党総裁として27日に選出された石破茂新総裁は2017年5月、本紙とのインタビューで韓日関係についてこのように言及した。一部では、1998年の『金大中-小渕宣言』で植民地支配について公式謝罪した小渕恵三元首相以来、韓日関係の改善に最も積極的だという評価もある」 (『東亜日報』 新首相に「非主流・穏健派」の石破氏)

「(石破新総理の誕生で)韓日関係においては、尹錫悦大統領と岸田文雄総理が回復させた友好雰囲気が維持される中で、素材・部品・装備などサプライチェーン協力に弾みがつくものと観測される。石破氏は2019年、安倍晋三元総理が対韓国輸出規制を強化する経済報復に乗り出した当時、「地域の平和と安定に決して寄与しない」と批判した」(『ソウル経済』 日本の「ハト派」首相···韓日経済·安保協力に弾みがつく)。

石破の安全保障観でもなお

ただ、石破氏の安保公約は日韓間の新たな摩擦要素になりかねないという見方も出ている。過去、日本帝国による植民支配の経験がある韓国国民には、平和憲法改正や米国との核共有、アジア版NATO創設などといった石破氏の主張が、「日本の軍事大国化につながりかねない」という警戒心を刺激するためだ。

「安保のために軍備拡充に積極的に乗り出す意思を示す点は、今後の韓国との摩擦要素になりうる。 石破総裁は当選直後の記者会見で “自衛隊は国内で最大能力を発揮する訓練ができない”とし、米国に自衛隊訓練基地を建てようというアイディアを出した。自衛隊を憲法に明記する改憲案を推進すると明らかにしてきた点も、韓国との衝突要素になり得る。アジア版NATO設立については“(日米、韓米同盟などを)有機的に結合することを考える”という立場を表明した。アジア版NATO設立の場合、韓国でも対北朝鮮抑止の次元で取り上げられるアイデアだ。しかし日中衝突、台湾問題にややもすれば韓国の意志と関係なく巻き込まれる恐れがあり、簡単に同意しにくい問題だという意見が多い」 (『東亜日報』 石破氏、韓日歴史問題には前向きな立場··· 軍備拡充は葛藤の火種)。

「石破総裁の安保観については憂慮の声が出ている。彼は憲法上、自衛隊の明記など防衛力の拡充を主張してきたからだ。彼は『アジア版NATO』の創設を主張し、韓日間、韓日米間の安保協力を強調する立場だが、これば軍備拡張と映る部分でもある」(『世界日報』 知韓派の石破自民党新総裁、韓日の歴史をめぐる対立を乗り越えるか)。

「防衛長官を務めた石破総裁は、防衛力の拡充も核心公約として提示したが、これは韓日間の対立の素地になりうる。彼は選挙過程で、日本の自衛隊憲法の明記、米国の核兵器を日本で共同運営する『核共有』を公約として提示した」 (『韓国日報』 極右の代わりに「穏健保守」の石破氏を選んだ自民党··· 総選挙に有利な首相を選択)。

これでもなおの「屈辱外交」を乗り越えられるか

石破新首相時代の日韓関係については、専門家を中心に日本の保守的な社会雰囲気と自民党内の石破氏の立場を考えると、劇的な進展は期待できないという見方が多い。以下は韓国のメディアに紹介された日本専門家たちの展望だ。

「石破内閣は岸田文雄元首相の路線を忠実に踏襲し継承するだろう。日本では言い難い『慰安婦被害者謝罪』発言をしたこともあり、韓日間の歴史摩擦の頻度は減るだろう。が、だからといって期待をあまり大きくしてはならない。石破総裁も結局は自民党総裁であり、党の路線を逸脱した形で韓国に謝罪したり、補償したりするという前向きな発言はできないだろう」(イ・ウォンドク国民大学日本語科教授)。

「(石破氏は)韓国に対する悪感情や批判がないため、現在の関係改善、協力の雰囲気は続くだろう。 ただ、韓国は過去の歴史に対する謝罪や談話を望んでいるが、その部分についてはあまり大きな期待をしてはならない」 (キム·スクヒョン国家安保戦略研究院責任研究委員)。

「従来(の総理)と違う姿勢を見せるためには、自分の政治的基盤が強くなければならないが、石破総裁はそうではない。最後まで競争した3強候補のうち、韓国にとってはまだましだったが、それ以上の行動を見せるかは疑問だ」(チェ·ウンミ牙山政策研究院研究委員)。

「1965年の国交正常化以来最悪」と評価される文在寅-安倍時代の日韓関係は尹錫悦-岸田時代に入って劇的に改善された。昨年3月、尹大統領が日韓間の最大懸案の元徴用工賠償裁判の問題解決のために「第3者返済案」(日韓の企業が作った財団で元徴用工裁判の賠償金を代わりに支払う方式)を出したことが契機になった。その後、日韓はシャトル外交を復元させ、尹大統領と岸田首相は12回も首脳会談を行った。

ただ、外交的成果にもかかわらず、世論調査では韓国人の約6割が尹錫悦政権の対日外交を「屈辱外交」と評価している。歴史懸案で韓国が一方的に譲歩したと考えているためだ。特に、第3者返済案の発表当時、韓国の朴振(パク·ジン)外交部長官は「コップの半分を(韓国が)満たしたので、残りの半分は日本が満たしてほしい」と要請したが、日本側の反応がまったくなかったのが決定的だった。

最近の著書『保守政治家、石破茂』で「日韓関係は尹錫悦大統領の明確なリーダーシップで劇的に改善した」と評価し、「尹政権が韓国内で少しでも有利な立場になるように可能な努力をしなければならない」と明らかにした石破新首相は、果たしてカップの半分を満たすことができるのだろうか。「石破新総理にあまり期待はしないが、一度見守ってみたい」というのが、韓国メディアと国民の正直な気持ちなのだ。

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