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オーラNISMO初となる4WDモデル

日産の純正コンプリートカーであるNISMOロードカー。そのエントリーモデル『ノート・オーラNISMO』が、2024年7月18日にマイナーチェンジを受けた。

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最大の目玉は従来のFF(307万2300円)に加え、オーラNISMO初となる4WDモデル『NISMO tuned e-POWER 4WD』(347万3800円)の新設だ。オーラNISMOは、コンパクトハッチバック『オーラ』をベースとした純正コンプリートカーで、従来型ではFFのみであった。


オーラNISMO初となる4WDモデル、『NISMO tuned e-POWER 4WD』。    佐藤亮太

そのFF車は、日産の電動化技術とモータースポーツ活動のノウハウを活かし、”駿足の電動シティレーサー”をコンセプトに、レースで培った空力性能、感性に訴えるハンドリングを生むシャシーチューニング、電動車の強みを活かした専用ドライブモードの設定などを武器に、スポーツハッチへと磨き上げていた。

今回の改良では、標準シートの運転席側電動化、ベース車で好評のBOSEパーソナルプラスサウンドシステムのオプション化といった機能向上に加え、新デザインのフロントグリルやリアバンパーによるリデザインも行われている。但し、FF車の仕様は、”NISMOが極めたひとつの完成形”とし、走行性能には手を加えずに継続した。

後輪の駆動力が強くなるセッティング

今回の主役、4WDにおける最大の特徴は、”tuned”の名が示すように、駆動系まで手を加えたこと。NISMOコンプリートカーは価格上昇を抑えるべく、パワートレインに手を加えるのは、基本的には上位モデルに限定されてきた。

しかしオーラNISMOでは、前後輪を独立したモーターで駆動する強みを活かし、リアモーターをベース車比で最高出力+10kWの60kW、最大トルクを+50Nmの150Nmに引き上げてきた。


アリアなどの電動4WDの技術を投入することで、よりコントローラブルに。    佐藤亮太

一方フロントモーターは、ベース車とNISMO FF車同様の最高出力100kW、最大トルク300Nmのままだ。その狙いは、第2世代GT-Rの開発から手掛けてきた曲がる4WD技術と、アリアなどの電動4WDの技術を投入することで、よりコントローラブルなオーラNISMOに仕上げることにあった。

その味にも幅を持たせるべく、工夫されたのが、新ドライブモードだ。モード切替で、加速力、レスポンス、減速力(Dレンジ)調整に加え、4WD専用チューニングとして後輪の駆動力も変化するようになった。

モードは、ベース車のSPORTモードに相当する”ECO”、オールマイティな”NORMAL”、そして”NISMO”の3つがあり、後者ほど後輪の駆動力が強くなるセッティング。つまり、走りにおいて、後輪の存在感を強めることができるのだ。

この他にも4WD化による専用チューニングとして、エアロが見直された。後輪モーターが追加されたことで、リア下回りの空気抵抗が増加するため、それを抑制する新デザインのリアバンパーに変更。FFと4WDのいずれでも最適な効果が得られるものとしている。

そして驚くべきは、アルミホイールを4WD専用開発としたことだ。エンケイのMAT製法による鋳造アルミホイールは、鍛造並みの強度を確保しながら、FF車用のアルミホイールよりも12%の軽量化を実現。これにより4WD化の重量増を抑制し、ベース車の+10kg増に留めている。これらが新投入の4WDのアウトラインである。

ドライブモードを切り替えると走りが"キャラ変"

試乗車は、オーラNISMO 4WDのレカロ・シート装着仕様。エクステリアは、新フロントグリルとなったことで顔付きにも精悍さが増した印象だ。NISMO専用色である新色『NISMOステルスグレー×ブラックルーフ』の組み合わせもクール。NISMOのアクセントとなるレッドも、ホットハッチ感を高めてくれる。

インテリアは形状こそオーラと共通だが、メーターパネルを始め、シートベルトやスタートボタン等もNISMO専用仕様。ホットハッチ感を盛り上げるなら、オプションのレカロ・シートを選びたくなる。


室内はメーターパネル、シートベルトやスタートボタン等もNISMO専用仕様。
    佐藤亮太

シリーズハイブッドのe-POWER車なので、走行音は静かだ。ちょっと好戦的なビジュアルに対して足まわりはしなやかで、普段乗りでの快適性も高い。特に標準シートを選べば、より普段使いの利便性は高まる。

しかし、それは表向きの顔に過ぎない。ドライブモードを切り替えると、まさに走りが”キャラ変”するのだ。ここでのポイントは、アクセルレスポンスの向上だけでなく後輪の駆動力配分にあるのだが、それはドライバーの運転操作にも大きく影響する。

最も分かりやすいのがコーナリング。ECO、NORMAL、NISMOと切り替えていくうちに、コーナリング時のステアリング切れ角がより小さくなり、コーナー脱出時のアクセルオンもより早くなるのだ。

これは後輪の駆動力を増やすことで、前輪の余裕を確保し、旋回性能を高めることが出来るため。ここに歴代GT-Rで培ったアテーサET-Sの思想が盛り込まれている。

第2世代GT-Rの走りを彷彿させる

さらにNISMOモードでは、刺激的なコーナリングマシンへと変貌する。そのセッティングにより、FFベースの4WD車でありながら、後輪でクルマの動きを作り出すことができる。その感覚は、まさに第2世代のGT-Rの走りを彷彿させるのだ。

そんな俊敏な走りを見せるため、シートのホールド性を求めたくなる。ちょっと値段は張るが、このクルマにはレカロ・シートをおススメしたい。そうすればこいつは、毎日乗れるホットハッチとして完成される。


走りの感覚は、まさに第2世代のGT-Rの走りを彷彿させる。    佐藤亮太

かつては、高い技術力が生む走りの良さから多くのファンに愛された日産だが、近年は、その力がエコに注がれてきたイメージが強いのも事実。

しかしオーラNISMO 4WDには、あの日産の香りがする。だからこそ、熱心な日産ファンにこそ試してみて欲しい。”チューンドバイNISMO”、十分検討の価値有りだと思う。