手を組んでツーショット写真に納まる忠願寺姉妹。左が姉でキャプテンの風來、右が妹でエースの莉桜

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 高校バレーボール界に将来を期待される姉妹がいる。東九州龍谷(大分)のミドルブロッカーで姉の忠願寺風來(かえら)とエースアタッカーで妹の莉桜(りおん)は、今夏の全国高校総体(インターハイ)で3位に食い込む原動力となった。キャプテンを務める風來が3年生、莉桜が1年生で、そろって「東龍(とうりゅう)」のユニホームでコートに立てる最初で最後の年を過ごしている。10月の国民スポーツ大会(国スポ)、年明けの全日本高校選手権(春高バレー)で「日本一の景色を見たい」と声をそろえる2人が本音トークを繰り広げた。(聞き手・構成=西口憲一)

 【Q】姉の風來選手から見た莉桜選手の性格は?

 【風來】リオンはコート以外のところでもバレーについてめっちゃ考えています。たぶん…エースとしてのプレッシャーもあると思うんですけど、練習だけじゃなくて、寮生活でもバレーのことを考えて行動していることが結果に表れているのではないでしょうか。

 【Q】逆に妹の莉桜選手から見た風來選手の性格は?

 【莉桜】お姉ちゃんは、自分にもみんなにも厳しくできる。今まで見たことがないタイプのキャプテンなので、尊敬しています。意識が高くて、他の人だったら気が付かないような細かいところまで気にしています。メリハリもあって、バレーのときは厳しく、寮生活になったらしっかりと切り替えて、楽しく過ごしているところは、私にはないところです。

 【Q】お互いにとって忘れられない思い出は?

 【風來】沖縄への家族旅行です。ちっちゃい時から3、4回ぐらい行きました。楽しかったなあ。

 【莉桜】小学生の時に、私がセッターでトスを上げていて、エースのお姉ちゃんがスパイクを打っていたことです。懐かしい思い出です。

 【風來】あの頃は弱かったよね(笑)。

 【Q】本当に仲がいいですね。けんかをしたことはあるんですか?

 【風來】したことはあるけど、しょうもないことばかりです(笑)。お菓子をどっちが食べるかとか、テレビで何を見るかとか。そうそう、(大分市の)実家で犬を飼っていて、トイレのシートを取り換える時…もう一人の(中学2年生の)妹(陽茉さん)も一緒になって、もめています(笑)。じゃんけんで負けた人がやらないといけないんですが、負けても、もう一回じゃんけんしようとか。

 【Q】高校の寮生活はどうですか?

 【莉桜】はい。マンダラチャート(米大リーグドジャースの大谷翔平選手も使った目標達成シート)といって、自分で立てた目標を達成するためにどうするかを書いています。朝は6時40分からご飯なんですけど、5時半に起きて、ゆっくり準備することを心がけています。

 【風來】私は寝る前にストレッチとか体幹トレーニングを欠かさずやるようにしています。ストレッチとかちょっと長くやった日とかは「何か、自分ちゃんとやっているなあ」という満足感で良く眠れます(笑)。

 【Q】寮生活は1人部屋。お互いの部屋の行き来は?

 【風來】それはないです。寮生活は楽しいですよ。自由にさせてもらっている分、掃除、洗濯、ご飯の準備とかは自分たちでやらないといけません。

 【Q】食事は?

 【風來】朝は自分たちで作っています。お昼はお弁当で、夜は相原(昇)先生の奥さんと、もう一人寮母さんが作ってくれるのですが、(部員も)何人か手伝っています。

 【Q】バレー選手以外で小さい頃の夢は?

 【風來】犬が好きだったので、警察犬の訓練士になりたかったです。絵とかを描くのも好きなので、デザイン関係の仕事がしたいなと思った時期もありました。

 【Q】お父さん(貴博さん)が指導している中学生女子のクラブチーム「Vigare(ヴィガーレ)大分」のロゴマークも風來選手が手がけたそうですね。あのマスコットキャラクター…かわいい犬ですね。

 【風來】いえ、あれはオオカミです(笑)。

 【Q】かわいいオオカミですね。

 【風來&莉桜】……(笑)。

 【莉桜】小学校の時は黒板に字を書くのが好きで、学校の先生になりたかったですね。中学ではバレーの指導者になるのが夢だったんですけど、途中から(バレー選手として)いけるところまでいきたいなと思うようになりました。

 【Q】バレーでの目標や夢は?

 【風來】高校で「日本一」になりたい気持ちがずっとあります。入学してからは、この前(インターハイ)の3位が最高だったので、それよりも上を目指しています。高校を卒業したら、本当の意味でバレーボール選手としての人生が始まる。自分がどこまでいけるか分からないけど、いけるところまでいきたいです。

 【莉桜】来年とか自分の代でというよりも、今年に懸けて、日本一を取りたい。左利きで守れて、何でもできるプレーヤーとして、私が新しい歴史をつくりたいです。

 【Q】最大の目標でもある春高で勝つためには?

 【風來】一生懸命プレーするのはバレーボーラーとして当然です。他のチームの選手と「差」をつけるには、バレー以外での日常生活でバレーに費やす時間を増やすことが大事。コートに入っている6人だけじゃなくて、部員人全員です。人として当たり前のことができていないと日本一にはなれない。日本一の人間じゃないと、そこにはたどり着けません。だからこそ「人間力」を磨いていきたいです。

 【莉桜】ここ(東龍)に入ってから周りの目というか、見ている人に「こんなもんか」と思われたくなくて…。そんな勝手なプライドがマイナスになって、試合で思うようなプレーがまだ一回もできていません。メンタル面を鍛えないといけないのはもちろんですが、最後は自分次第。自分にもっと厳しくできるように、日頃の生活からしっかりしていきます。

 【Q】莉桜選手は、中学生の時に大分県選抜として出場した全国都道府県対抗中学大会で最優秀選手に輝き、今夏のインターハイでもベスト6に1年生で唯一選ばれました。高い期待の一方で重圧もあるのでは?

 【風來】インターハイでは「私に持ってきて!」と(セッターを)呼んでも、リオンにしかトスが上がりませんでした(笑)。リオンに全部ブロックが付いていたから、私は(相手のブロックが)0枚か1枚なので。それでもリオンに上がるから、大変だろうなと。でも、リオンはインターハイ後から速いトスへの対応にも取り組んでいます。(身長181センチの)高さを生かしつつ、幅を広げているので武器になるはずです。

 【莉桜】ブロックが何枚来ようが、関係なく打ち抜くのがエースの役割だと思っています。人としてみんなから応援されるプレーができるように頑張ります。

◆忠願寺風來(ちゅうがんじ・かえら)
2006年11月13日生まれ。大分市出身。ポジションはミドルブロッカー。舞鶴小3年から「東大分ジュニア」でバレーボールを始める。稙田南中では3年時に大分県選抜で「全国都道府県対抗中学大会」に出場。大分・東九州龍谷高に進学し、2年時の24年2月に開催された「全日本ジュニアオールスタードリームマッチ」に出場。3月には同学年の秋本美空(東京・共栄学園高)らとともに「全国高校バレーボール男女選抜強化合宿(3次)」に招集され、今夏は全国高校選抜女子チームのタイ遠征にも参加。身長178センチ。最高到達点は293センチ。

◆忠願寺莉桜(ちゅうがんじ・りおん)
2008年8月24日生まれ。大分市出身。ポジションはオポジット。舞鶴小1年から「東大分ジュニア」でバレーボールを始める。稙田南中では、3年時の23年に中国で開催された「第1回アジアU16女子選手権大会」で年代別日本代表のエースとして優勝に貢献。大分県選抜を準優勝に導いた「全国都道府県対抗中学大会」では女子の最優秀選手に選出された。全国中学生選抜メンバーで臨み、優勝した24年2月の国際大会(イタリア)ではキャプテンを務め、MVP。大分・東九州龍谷高に進学し、入学直後から得点源として活躍。6月にタイで行われた「女子U18アジア選手権大会」では日本の準優勝に貢献し、ベストオポジット賞を受賞。憧れの選手は高校の先輩で、女子日本代表として16年リオデジャネイロ五輪に出場した長岡望悠(SAGA久光スプリングス)。身長181センチ。最高到達点は297センチ。

【次ページ】忠願寺姉妹だけじゃない 全国V狙う東龍の2024年戦力

 今夏の全国高校総体(インターハイ)で3位に入った東九州龍谷(通称東龍)は、パリ五輪代表の荒木彩花(23)=SAGA久光スプリングス=を擁して頂点に立った2019年度の全日本高校選手権(春高バレー)以来の全国制覇を視野に入れている。

 東龍の単独チーム(大分県)で臨む10月の国民スポーツ大会(国スポ=旧国体)ではシードされており、愛媛県と茨城県の勝者と相まみえる2回戦から登場。「夏の3位で決して満足はしていない。もっと上を目指せるという手ごたえが、彼女たちの成長につながっている」。相原昇監督(56)はうなずいた。

 

 インターハイ、国スポ、春高バレーの「高校3冠大会」を計12度制した名将が「今夏、最も伸びた選手」と太鼓判を押すのがミドルブロッカーの大石はるか(2年)だ。身長180センチのレフティーで高さを生かしたアタックとブロックが光り、器用さも持ち合わせている。レフト対角を組む梶山葵(3年)と藤粼愛梨(2年)の両アタッカーがともにインターハイで優秀選手に輝いた自信から攻守に安定感を増し、鎌倉詩織(1年)も強打で台頭。伝統の高速コンビバレーを操るセッターの吉村はぐみ(1年)は卓越したトスワークに加え、サーブ力やブロック力も備えている。源田真央(2年)は不動のリベロとして守備を統率する。

 キャプテンでミドルブロッカーの忠願寺風來(3年)が唱える「25人全員バレー」を体現するように、経験値の高い楢粼杏菜(2年)や山浦槙(3年)の両セッター、150センチ台の身長ながら攻守にオールラウンダーぶりを発揮する梅木南(2年)が脇を固めるなどバランスの取れた戦力が整いつつある。