国連のAIに関するハイレベル諮問機関(High-level Advisory Body on AI:HLAB-AI)が2024年9月19日に、「人類のためのAI統治(Governing AI for Humanity)」と題した最終報告書を発表し、地域ごとのAI格差を埋める基金の創設などを盛り込んだ7つの勧告を提言しました。

AI Advisory Body | United Nations

https://www.un.org/ai-advisory-body

UN advisory body makes seven recommendations for governing AI | Reuters

https://www.reuters.com/technology/artificial-intelligence/un-advisory-body-makes-seven-recommendations-governing-ai-2024-09-19/

国連のHLAB-AIは今回の報告にあたり、世界各地で50回以上の相談会を開き、150以上の組織と100人以上の個人から文書の提出を受け、トップ専門家による18回の徹底討論を重ねるなどして、のべ2000人以上の関係者の協議をまとめました。

そして、2023年12月の(PDFファイル)中間報告を踏まえた最終報告を英語とフランス語で発表しました。



最終報告には、次の7つの提言が含まれています。

◆提言1:AIに関する国際科学パネル

多様なAI分野の専門家で構成される独立した国際科学パネルを設置し、AIの能力、機会、リスク、不確実性などについてまとめた年次報告書を発行すること。また、AIが国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献する可能性についてのテーマ別研究ダイジェストも四半期ごとに作成すること。

◆提言2:AIガバナンスに関する政策対話

政府間および関係者間で、AIガバナンスに関する政策対話を年2回開催し、AIガバナンスのベストプラクティスや国際的な相互運用性、重大なAI事件、AIに関する国際科学委員会の報告などについて共有したり協議したりすること。

◆提言3:AI標準についての交流

AIに関する標準開発組織、テクノロジー企業、市民社会、国際科学委員会の代表を集めたAI標準の意見交換組織を設立すること。

◆提言4:能力開発(キャパシティ・ディベロップメント)ネットワーク

主要な関係者が専門知識、計算能力、AI訓練データを利用できるようにするため、国連傘下の能力開発センターが連携するAI能力開発ネットワークを創設すること。

◆提言5:AIのためのグローバル・ファンド

公的および私的な寄付を受け、独立したガバナンス機構によって管理される基金を設立すること。その目的は、十分にAIリソースにアクセスできない国のAI開発者がモデルのトレーニングを行えるようにするなどしてAI格差を是正することにあります。

◆提言6:グローバルAIデータフレームワーク

国際連合国際商取引法委員会などの関連機関が主導し、他の国際機関の活動も参考にしながら、AIデータのグローバルなフレームワークを構築すること。

◆提言7:AI事務局

この報告書の提言の実現を支援し、AIに関連する諸問題について国連事務総長に助言するAI事務局を国連事務局内に設置すること。



これらの提言は、2024年9月に開催される予定の国連サミットで議論される予定です。